数年前から定額制の有料動画配信サービスが増えています。今後もますます増えていくことが予想されていますが、一体それぞれどんな違いがあってどれを選んだらよいのでしょうか? どれを選べば自分にぴったりくるかをITジャーナリストの西田宗千佳さんに教えてもらいました。

動画配信サービスには大きく分けて3つの種類があります。それが、【①無料タイプ ②番組1回ごと課金 ③有料定額課金】です。実際に多く利用されているのは無料タイプですが、オリジナルコンテンツで注目されているのは、有料定額課金タイプ。いわゆる動画のサブスクリプション型のサービスです。この元となっているのが、ケーブルテレビ。地上波の無料放送ではなく、観たい番組を有料で観るものです。これがインターネットに置き換わったのが、有料動画配信サービスなのです。
アメリカのNetflixがそれまでのDVDレンタル中心のビジネスから現在のようなビデオオンデマンドのビジネスに転換したのが2007年のこと。その後、2013年に初めてオリジナルコンテンツ「ハウス・オブ・カード」を製作。これが、ネット配信ドラマとして初となるエミー賞の作品賞にノミネートされ、監督賞などを受賞。ネット配信ドラマの評価をあげ、勢いを増します。
その後、2015年に日本に進出。ときを同じくして、2015年にはAmazonプライムビデオが日本でサービスを開始。アメリカHuluも2014年に日本向けサービスを日本テレビが継承したことでユーザーが増加。日本でも定額有料制の動画配信が活発化するようになりました。

日本で有料動画配信の加入者数が増えたのは、スマートフォンの普及がきっかけでした。それまで、テレビの前にいなければ、番組をリアルタイムに視聴できなかったのが、スマホやタブレットがあれば、番組を自分の部屋でも出張中でも観られるようになったからです。その便利さから、テレビの一部の視聴習慣が動画サービスへと移っていきました。2019年12月現在、会員数が最も多いAmazonプライムが600万人。次いでNetflixの契約者数が300万人、Huluが200万人となっています。そのほかのサービスが50万〜100万人くらいとなっています。
※各サービスの会員数は推定。
動画配信サービスのメリットは、大きく分けて【①いつでも観られる ②どこでも観られる ③まとめて観られる】ことにあります。それぞれ確認してみましょう。

それまで地上波や衛星放送の番組は、1週間に1回、決まった曜日と時間で観るのが普通でした。しかし、有料動画配信の場合は、ドラマが1シーズンに10本あったとして、まとめて一度に配信されることがほとんど。休日にまとめて観たり、移動時間に細切れで観たりすることが可能に。自分のスタイルに合わせて自由な時間で観ることができます。

地上波や衛星放送の番組をリアルタイムに視聴しようと思うと、テレビの前にいなくてはならないことがほとんどでした。有料動画配信は、スマホやタブレットで観ることができるため、ベッドでも移動中の電車でも観ることができます。また、ダウンロードすれば、オフライン環境で視聴することも可能。飛行機の中で観たり、外国で観たりすることもできます。

決まった曜日と時間で放送される地上波や衛星放送は、一度でも視聴習慣が切れると、途中で観るのをやめてしまうことがあります。前述の通り、有料動画配信はまとめて配信されるので、一気に観ることも可能に。また、細切れに観るときもVHSやDVDのように、それまで観たところに巻き戻したり早送りしたりする必要もなく、停止したところから続きが観られるのも便利なポイント。効率的に番組を視聴することができます。
アメリカで2019年11月から「Disney+」が始動しました。元々アメリカは、ケーブルテレビの加入率が高かったこともあって、動画配信サービスにも多くの世帯が加入し、日本よりも数段発達。アメリカは人口3億人・8,000万世帯のうち、契約世帯は7割を越すほど(日本の世帯普及率は1割)。これだけのビジネスをウォルト・ディズニー・カンパニーが放っておくはずもなく、「Disney +」としてサービスをスタート。ディズニーはこれまでサービス会社にコンテンツを提供してきましたが、今後は自らがサービスを提供します。ディズニーというとキャラクターアニメだけかと思われがちですが、実はスポーツ専門チャンネルESPNが傘下になっていたり、「スター・ウォーズ」「マーベル」「ピクサー」作品などコンテンツをたくさん抱えています。これまでアメリカではNetflixが躍進してきましたが、勢力図も変わるかもしれません。そして、日本やアジアへの進出がどうなるかも目が離せません。
Disney+の始動と同じ2019年11月には、「AppleTV+」もスタート。世界100以上の国でのサービスと同時に日本語でのサービスも始まりました。これにより、Appleオリジナルの番組や映画が公開されるようになります。このほか、アメリカでは他の映像配信サービスを束ねてAppleTV+で観られるサービスもあるようです。
AppleTV+が有利なのは、iPhoneユーザーのスマホにはAppleTV+のアプリがすでに入っていること。日本だと5割のスマホユーザーがAppleTV+のアプリを入手していることになります。また日本での利用料は月額600円ですが、Apple製品を新しく購入すると1年間無料に。今後、予算の投下も期待されることから、コンテンツやサービスに磨きがかかったときには、利用者の増加が見込まれます。

見放題だからとスマホで視聴すると、パケット利用料が高くなる恐れがあります。たくさん利用したい人は、パケット定額サービスを利用するのがおすすめです。それでも携帯電話料金を抑えたい場合は、Wi-Fi接続にしたり、パソコンやインターネット回線をつないだテレビで視聴すると良いでしょう。高画質なテレビなら、その分映像にも迫力が出ます。
Amazonの通信販売を利用するにあたって、動画配信サービス「プライムビデオ」のほか、迅速で便利な配送特典、「プライムミュージック」などのデジタル特典が追加料金なしで利用できるサービス。アメリカ、イギリス、日本、ドイツで展開されている。
月額500円(税込)/年間プラン4,900円(税込)
ドコモの対象料金プラン「ギガホ」「ギガライト」をご契約、特典にエントリーいただくと、1年分の「Amazonプライム」がついてくる!はじめてご利用の方はもちろん、すでに「Amazonプライム」会員の方も、「Amazonプライム」が1年ついてくる。
詳しくはこちら
https://www.nttdocomo.co.jp/campaign_event/promotion/amazon_prime/
自社のDVD販売データを利用して、日本の顧客のためのマーケティングを展開。日本人に好まれる旧作ドラマや旧作映画を多く配信している。日本人のためにオリジナルで制作されたバラエティ番組にも強く、恋愛バラエティ「バチェラー・ジャパン」、吉本興業と組んだ「戦闘車」「相席食堂」などがある。ほかに、テレビ番組の見逃し配信も充実。
「バチェラー・ジャパン」「戦闘車」「仮面ライダーアマゾンズ」「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」
世界190カ国以上で展開され、アメリカ、オランダ、ブラジル、インド、日本、韓国に支社を持つ。世界規模のオリジナルコンテンツが大量にあり、予算規模が大きい分、作品のクオリティが高い。
ベーシック800円/スタンダード1,200円/プレミアム1,800円(税抜/月額)
画質や視聴可能端末によって3つのプランがある。
世界から調達されたコンテンツが大量にあり、オリジナルコンテンツのクオリティが高い。本来、映画館で上映されるようなコンテンツもあり、2019年11月には、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ主演の3時間半の超大作オリジナル映画「アイリッシュマン」が公開された。また、嵐の活動休止までのドキュメンタリーを配信することも話題になった。
「アイリッシュマン」「全裸監督」「テラスハウス」「火花」「バガボンド」
日本では、日本テレビの子会社が運営し、サービスを提供している。そのため、日本テレビ系列のコンテンツが多くある。
月額1,026円(税込)
日本テレビ系列のコンテンツが豊富。また、「日テレオンデマンド」と「プレミアムGYAO!」のサービスはHuluに移行されている。オリジナル番組は、日本テレビ主導の番組や地上波連続ドラマのスピンオフ作品が中心。ほかに、日本の旧作ドラマや旧作映画、読売ジャイアンツの試合が充実している。
「笑点」「今夜くらべてみました」「有吉反省会」「名探偵コナン」「宇宙兄弟」「ウォーキング・デッド」
130以上のスポーツコンテンツが年間1,000試合以上配信されるスポーツ専門サービス。ライブ中継、見逃し配信がチェックできる。Jリーグ、プロ野球、欧州サッカー、MLB(メジャーリーグ)、F1、テニス(WTA)、バスケットボールBリーグ、総合格闘技、NFLなどをカバーしている。
月額1,750円(税抜)
ドコモのケータイ回線をご利用の方は月額980円(税抜)
詳しくはこちら https://www.nttdocomo.co.jp/service/d4d/
ディズニー、ピクサー、スター・ウォーズ、マーベルの動画やデジタルコンテンツをまとめて観られるディズニー公式動画サービス。映画情報やインタビューのほか、ディズニーだけのコンテンツも用意されている。
月額700円(税抜)
月額960円(税込)

有料の動画配信サービスは、どれか1つに入るよりも、気に入ったサービスを2、3契約するのがおすすめです。1つだけに絞ろうとすると、不足しているものがあって、満足度が高くないからです。また、月額1000円程度のサービスが多いので、2〜3契約しても衛星放送やケーブルテレビの1つのチャンネルの契約料金とさほど変わりません。お財布もいたみませんので、気に入ったものを契約してみましょう。いずれも休止するときに違約金などありませんので、気に入らなければ、ひと月で休止しても構いません。
2019年末の12月31日から嵐の活動休止までの1年間のドキュメンタリーがNetflixで配信されています。これが発表されたとき、コンテンツ事業者の間で大きな話題になりました。というのも、配信されるのが、テレビではなく、インターネットだったからです。
現在、地上波の番組を視聴する人は高齢化しています。一方で、動画配信を視聴する人は10代から30代が多くなっています。こうした若年層に広告や番組でアピールしたければ、動画配信の方が有利なのです。さらに、嵐のようにアジア圏にもファンのいるアイドルであれば、海外へのアピールも欠かせません。そこで、世界的にコンテンツを配信するNetflixが選ばれたのでしょう。
今後もこうした流れは続き、若年層や海外を意識したコンテンツは動画配信に目が向けられる傾向は続くでしょう。また、日本はまだまだ伸びる余地がある国。インターネット動画配信はますます増えていくと予測されます。

監修:西田宗千佳さん
ITジャーナリスト/パソコン、デジタルAV、家電、ネットワーク関連などのデジタル全般を得意とする。取材・解説記事を中心にウェブ媒体に寄稿するほか、書籍も執筆。『ネットフリックスの時代』など著書多数。

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