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腕時計のトリビア

このページでは、現代の腕時計に大きな影響を与えた世界の時計メーカーのエピソードを中心にご紹介します。が、その前に……腕時計の進化になくてはならなかった時計界の天才のお話から始めてみましょう。

あれもこれもこの人のおかげ?

 前ページでも名前を挙げたスイスの天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲ。自動巻き機構をはじめ、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)や、時計が受ける重力の影響を少なくして精度を維持できるトゥールビヨン機構など複雑機構の開発のみならず、デザイン面でも後世の腕時計に大きな影響を与えた彼は、多方面に才能を発揮したルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチにちなんで、時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチと評される人物です。
 例えば、先端の方に穴の開いた時計針。これは、時刻を読み取りやすいようにと1783年頃にブレゲが考案したもので、文字盤でよく見かける斜体がかったアラビア数字も、彼が考案した通称“ブレゲ数字”。各時計メーカーも使う定番となっています。
 ブレゲの人並み外れたエピソードといえば、フランスの王妃マリー・アントワネットとのある約束です。王妃のお気に入りの時計師だったブレゲは、1783年、金と時間に糸目は付けないからと、考えられるすべての機能を備えた世界一の時計を要望されました。とはいえ、開発に着手したもののその複雑さゆえに、完成したのは注文から44年後、王妃の死後34年後の1827年でした。ブレゲ自身もすでに他界していましたが、弟子たちがその遺志を引き継いだ時計には王妃の名が冠せられ、工賃は約1万7000フラン。売値は現在の貨幣価値で3億円はくだらないとか……。

友情が築いた最大のロングセラー

 王族や貴族も愛用する宝飾ブランドのカルティエは、20世紀初頭から時計の世界に進出した老舗でもあります。なかでも、航空界のパイオニアである飛行家のアルベルト・サントス・デュモンのために開発されたサントスは、デュモンが友人のルイ・カルティエに、飛行中に懐中時計を取り出して時刻を確認することがいかに不便かを相談したことから生まれたもの。二人の相談から3年後の1904年に完成したサントスは、腕に装着することを前提にしていたため、それまでの時計の定番だった丸形でなく角形フォルムを採用し、のちの腕時計のデザインに影響を与えたほか、現在でも発売されている腕時計界最大のロングセラーとなったのです。

その技術は門外不出!?

 ぶ厚い手袋をしていても腕時計の時間帯を変更しやすい玉ねぎ型の大型リューズを採用したオリス。海洋上で正確な時刻を知るため、揺れや温度、湿度に影響されずに精度を保てるマリンクロノメーターを搭載したジョン・ハリソンやハミルトンなど、二度の大戦の中で各社が開発した軍用時計の数々は、一般的な腕時計にもその機能が採用されることがしばしばです。
 一方で、長らく技術が門外不出とされていたのがイタリアのパネライ。国防省の要請で第一次世界大戦時から防水時計の開発に着手していた同社は、1938年、自社で開発した蛍光物質ラジオミールを使い、水圧にも耐えうる初のダイバーズウオッチを完成させます。これをきっかけに、イタリア海軍の特殊潜水部隊を支えるなど軍用時計専門の時計メーカーとして生産を続けてきたパネライが、ファンの要望に応えて一般発売を開始したのは創業から130年以上も経た1993年のことでした。

極限でも時を刻み続ける……

 高級腕時計の代名詞といえばロレックス。1905年に創業した同社は、ケース内に湿気やホコリが入らない防水性と防塵性を備えた世界初の腕時計オイスター(1926年)、現代の自動巻き腕時計の原点といえるパーペチュアル(1931年)、そして午前0時になると瞬時に日付が変わるデイトジャスト機構(1945年)を開発するなど、腕時計の実用性を大きく高めてきました。
 そんなロレックスの優秀さを証明してきたのが、数々の冒険家です。例えば、イギリスの速記記者だったメルセデス・グライツによるドーバー海峡横断の際に装着されて注目を集めたオイスターは、1953年、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが人類初のエベレスト登頂に成功した時にも装備されたほど。1960年にジャック・ピカールとドン・ウォルシュが搭乗するトリエステ号が地球最深部のマリアナ海溝1万916メートル(最新の計測では1万911メートル)に到達した際には、トリエステ号の外側に取り付けられた深海用の特製時計が探査を終えた後も変わることなく動いていたことが知られ、これをきっかけに多くのダイバーたちに支持されるようにもなったのです。

市販品が宇宙に飛び出した!?

 ダイバーといえば、1976年、人類初の素潜り100メートルの壁を超えたジャック・マイヨールが装着していたのはオメガのシーマスターでした。1秒を読み間違えると命取りになりかねないシビアな状況下で、精度の高さや視認性の良さから選ばれたオメガ。1848年から続く同社の時計の中では、アポロ11号の宇宙飛行士とともに月面に降り立ち、アポロ13号の爆発事故時にも正確に時を刻んで宇宙飛行士の帰還を支えたスピードマスターも代表的です。実はこの腕時計、宇宙開発のために特別につくられたものではなく、1957年に誕生した市販品だったといいますから、その信頼性はまさに折り紙付き!

偉人も愛した世界最高峰の技術

 ヴィクトリア英女王や昭和天皇など歴史上の人物から世界各国のセレブリティまで愛用者が多い時計界の大御所、パティク・フィリップ。1839年の創業当初から複雑機構の技術で高い評価を残してきた同社は、先に紹介したブレゲが開発したパーペチュアルカレンダーを腕時計に初めて搭載したことでも知られています。
 そんな同社の技術の巧みさを象徴するのが「ジュネーブ・シール」(ポワンソン・ド・ジュネーブ)にまつわる神話。ジュネーブ・シールは時計の精度、仕上げ、装飾などの品質基準において、時計が取得しうる世界最高峰の栄誉とされていますが、一時期、パティク・フィリップの時計がその認定の95%以上を占めていたとも……。現在は独自の社内基準が設けられていますが、このエピソードだけでもいかに高い技術、職人技を同社が有しているのかが伺い知れます。


2014年、パティク・フィリップが創業175周年を記念して製作したグランドマスター・チャイム5175モデルは、それまで同社が製造してきた中でもっとも複雑な腕時計とされています。全面に手彫金を施した18金ローズゴールド仕様で、6件の特許技術と20の複雑機構を搭載。世界で7個のみ製作され、お値段はなんと約3億円だったそう。さすがにこれには手が届かなくても、世界の時計メーカーそれぞれのこだわりを知ると、自分好みの一本をついつい探してみたくなってしまいますね。

参考文献(順不同)
織田一朗『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』(講談社)/角山栄『時計の社会史』(中央公論新社)/並木浩一『腕時計一生もの』(光文社)/同『腕時計のこだわり』(SBクリエイティブ)/レトロ商品研究所編『国産はじめて物語 世界に挑戦した日本製品の誕生秘話』(ナナコーポレートコミュニケーション)/WATCH NAVI編集部編『保存版 腕時計パーフェクト入門』(学研プラス)/花谷正登『腕時計の基本がわかる教科書』(玄光社)/セイコーミュージアム(ホームページ) 等

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