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おとなの補習時間 歯周病にならないための歯磨きケア

成人の80%がかかっているともいわれる歯周病。進行すると歯が抜け落ちる怖い病気ですが、実は全身への影響も危惧されているんです。今回は、歯周病にならないための歯磨きケアについて、明海大学歯学部教授の松田哲先生と歯科衛生士の石川栞さんに教わりました。

歯周病の基礎知識

No1 歯周病って、どんな病気?

歯周病は、歯茎や歯周組織に炎症が起き、進行すると歯が抜け落ちる病気。今や成人の80%がかかっているというデータもあります。歯周病の進行具合は、歯と歯茎の溝の深さによって測定。4ミリ以上だと歯周病の可能性があり、進行すると歯を支えている骨が溶け、歯がぐらついてきます。初期の頃は、目立った症状もないので、ほとんどの人が無自覚のまま。気付いたときには、抜歯目前ということもあるほど、怖い病気なのです。

歯周病の状況(平成17年歯科疾患実態調査より)4mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合

No2 歯周病で歯が抜け落ちるまで

  • 自覚症状なし または、軽い出血程度
  • たまに出血軽い腫れ
  • 出血と腫れとグラつき
  • 最終的には抜けてしまう

No3 歯周病の原因とは?

口のなかには、たくさんの細菌がいます。歯磨きが十分でなかったりすると、歯の表面にプラークといわれる白い垢のようなものがくっつきます。このプラークは、食べかすではなく生きた細菌の塊。このなかには虫歯や口臭を引き起こす菌もあれば、歯周病を引き起こす菌もあります。これが歯周病の原因です。プラークは、放っておくとやがて歯石となり、歯の表面にくっつきます。こうなるとブラッシングでは取ることができません。歯石の周りには細菌がさらに入り込み、どんどん歯周病が進行していきます。また、歯ぎしりやくいしばり、喫煙、糖尿病などの全身疾患も歯周病を進行させる因子となることがわかっています。

No4 口のなかだけじゃない!全身をむしばむ歯周病菌

歯周病の怖さは、口のなかでおさまらず全身に悪影響を及ぼすこと。現在、さまざまな病気と歯周病が関係していることがわかっています。心疾患や動脈硬化、脳卒中などの血管と関係する病気がその1つ。歯周病によってできた歯周ポケットの血管から歯周病菌が侵入し、血管内でぬめりとなって詰まってしまうのです。また、糖尿病の人は歯周病になりやすく、歯周病によって糖尿病が悪化することもわかっています。このほか、低体重児の出産や早産、がん、肺炎などの原因にも。歯周病は、口から始まる全身への負のスパイラルを生むのです。

歯周病にならないための毎日のケア

No1 ブラッシングの基本テクニック

歯と歯茎の境目を1歯1歯磨く
歯の隙間のプラークを取り除くのが最も大切なポイント。歯茎に対して45°の角度で歯ブラシを当てて、1歯1歯磨いていきます。

奥歯は口を閉じ気味に
奥歯は内側・外側ともに口を大きく開けるとブラシが入りません。指1本程度が入るくらいに口を閉じ気味にして、歯ブラシが周りこむようにしましょう。

前歯の裏はかかとを使う
前歯の裏は意外と磨き残しが多い部分。ブラシの柄に近いかかとを使って、プラークをかきだすように縦方向に動かします。

奥歯の裏側は先端を使う
奥歯の裏側は最もブラシが届きにくい部分。ブラシの先端を使って磨くとよいでしょう。

POINT

No2 歯ブラシの選び方

奥歯の裏側は先端を使う
歯周病対策におすすめなのは、①のようなテーパー毛の歯ブラシ。先端に向かって細く山型になっているので、歯間や歯周ポケットが磨きやすくなっています。奥歯を磨くときにおすすめなのが、②のブラシ。背中部分が細くなっているので、奥まで入りやすくなっています。いずれも、ヘッドの大きさは小指大くらいの小さめを選びましょう。③のような隙間ブラシも歯と歯の間や奥歯の裏側が磨きやすくなっています。

No3 フロスや歯間ブラシ、歯磨き粉の選び方と使い方

フロス
フロスは小さな隙間にも入り込んでくれる優秀アイテム。しかし、動かし方がむずかしいのが難点。最初のうちは、先端の角度が変えられるイラストのようなタイプがおすすめです。使うときは、1つの歯の隙間に対して、右を往復してから左を往復するというように、隙間の両側を丁寧に往復するようにしましょう。
歯間ブラシ

自分の歯の隙間に合ったサイズを選ぶことが大切です。奥歯と前歯の隙間は違う人がほとんどなので、2、3種類を使い分けるのがベスト。

歯磨き粉

プラークに色をつけられる機能をもった歯磨き粉だと、鏡を見て歯磨きすれば、磨き残しがありません。手の動かし方や歯ブラシの入れ方もだんだんとわかってきます。

No4 電動歯ブラシの場合は?

電動歯ブラシは、音波水流が発生するタイプだと歯の隙間汚れが取り除きやすくなっていて、おすすめ。ブラッシングと同じように当てればOKですが、電動歯ブラシの場合は動かさなくても大丈夫。つい強く当ててしまう人が多いので、気を付けましょう。

歯周病対策、まずは歯医者さんに行ってみよう!

歯周病対策を始めるなら、歯医者さんに行ってみましょう。歯科医院で歯周ポケットの測定や歯石除去、クリーニングができます。それらが終わったあとは、歯科衛生士が自分に合った歯磨きの仕方を指導。自己流になりがちな歯磨きの正しい方法を教えてもらえるほか、歯間ブラシやフロスも選んでもらえます。歯周病の治療が終了したあとは、歯周病安定期治療というメンテナンスを保険で行うことができます。歯科医や歯科衛生士の指導を受け1~3カ月に一度は歯科医院を訪れるようにしましょう。

監修:松田 哲さん

歯学博士、日本歯周病学会、歯周病専門医・指導医、日本口腔診断学会認定医・指導医、日本顎咬合学会認定医・指導医、日本臨床歯周病学会歯周病認定医・歯周病インプラント認定医、厚生労働省臨床研修指導医、明海大学歯学部教授、明海大学PDI東京歯科診療所所長/PDI東京歯科診療所で臨床をする一方、大学では機能保存回復学講座を担当。歯科医療の現場と研究の両方で精力的に活動している。

監修:石川栞さん

歯科衛生士/明海大学PDI東京歯科診療所に勤務。一人ひとりにあった歯磨きの指導やアイテムを教えてくれる。

明海大学歯学部PDI 東京歯科診療所 03-3370-0159

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