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おとなの補習時間 キャッシュレス時代の電子マネー利用術

スムーズに支払いできて、財布に小銭がたまらない電子マネーは、便利な支払い方法として浸透中です。政府がキャッシュレスを推し進めている背景もあり、ますます利用範囲が広がるでしょう。今回は、電子マネーに詳しい、消費生活ジャーナリストの岩田昭男さんに現代の電子マネー利用術を教えてもらいました。

電子マネーの基礎知識

ますますキャッシュレス社会! その背景は?

電子マネーが拡大している背景には、世界的なキャッシュレスの波と日本政府の「キャッシュレスビジョン」があります。日本のキャッシュレス率は18.4%。これは国際的にみて低い数字で、アメリカが45.0%、中国が60.0%。韓国に至っては89.1%となっています。そのため、政府が掲げたのが、2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする「キャッシュレスビジョン」。その目的としては、次のようなものがあります。

出展:世界銀行「Household final consumption expenditure(2015年)」及びBIS「Redbook Statistics(2015年)」の非現金手段による年間決済金額から算出
※中国に関してはBetter Than Cash Allianceのレポートより参考値として記載

キャッシュレス支払いの色々と電子マネー

キャッシュレスにはさまざまな手段があります。現在はクレジットカードが最も利用されていますが、伸び代として期待されているのが電子マネー。クレジットカードとの大きな違いは、プリペイド(前払い)式であること。電子マネー付きのクレジットカードや、電子マネーのモバイル化といったことでも、利用の頻度があがり、相乗効果もあると予測されます。

電子マネーのメリット・デメリットをおさらい!

メリット
前払い
現金主義の人にうれしいのが、前払いという感覚。あとになって慌てるということがありません。
支払い処理が早い
電子マネーの支払い方法は、主にタッチ式。おつりを待つことなく、サインいらずで支払いが完結するため、サッとスマートに買い物できます。
小銭が財布にたまらない
おつりがいらないので、小銭で財布がじゃらじゃらということはナシ。おつりを受け取る手間もありません。
少額決済に力を発揮
元々、少額決済を見越してつくられているので、ドリンクの自動販売機や飲食店のカフェ支払いでも利用できることが多くなっています。
ポイントがたまるものもある
ポイントが付与される電子マネーもあります。毎日の買い物で利用することの多い電子マネーなので、いつのまにかポイントが貯まっているということも。
デメリット
残高がわかりにくい
カード型の電子マネーは残高が表示されないものが多くなっています。「見える化」したい、という人は、スマホに入れるのがおすすめです。
加盟店でないと使えない
現金はどこでも利用できますが、電子マネーは加盟店でないと利用できません。
種類が多く、カードが増える
電子マネーは種類が多く、ほとんどの店舗がすべてを網羅できません。どこでも使えるというわけにいかず、結果としてカードが増えてしまうことに。カードがかさばってイヤ、という人はスマホに入れてみましょう。
停電時に利用できない
電子マネーをタッチする端末は電気で作動しています。災害が起きたときなど、停電時は利用できません。

電子マネーの使い方

1.入金方法

現金をカードやスマホに入金(チャージ)して、利用します。チャージできる場所は、コンビニや駅など身近な場所。ポイントが貯まる電子マネーなら、ポイントも現金としてそのまま利用できます。

2.使い方

買い物したり、電車に乗ったりするためには、電子マネーやスマホを端末や改札にタッチするだけ。事前に入金しておいた金額が支払われます。おつりを受け取る必要も、サインする必要もありません。

3.ポイントの貯まり方

電子マネーにはポイントが貯まるものもあります。電子マネーを選ぶときには、ポイントの還元率をチェックして利用するのも1つの方法です。

電子マネーの賢い活用術

岩田さん厳選! おすすめ電子マネー

電子マネーには、携帯電話との連携で便利な「通信系」、電車や駅で便利な「交通系」、買い物に便利な「流通系」があります。そのなかでもおすすめを岩田さんが厳選。特徴とおすすめポイントを聞きました。

id
特長
クレジットカードとの紐付けで、使った分だけ後払いできる「ポストペイ型」、事前チャージの「プリペイド型」、口座残高の範囲内で使える「デビット型」が選べる。加盟店が多く、特にタクシーや空港、ガソリンスタンドで利用できる電子マネーとして知られ、支払いがスピーディー。特に急いでいる使用シーンでの乗車が多いタクシーと相性がいい。

iDリーダライタ設置数
約90万店(2018年12月末時点)

主な加盟店
全国のコンビニ、スーパー、レストラン、物販店のほか、タクシー、ガソリンスタンド、空港など

ポイント還元
なし

おすすめの人 タクシーや空港、ガソリンスタンドを頻繁に利用するビジネスパーソンなど

suika
特長
タッチすることで、首都圏はもちろん全国の交通系ICカードが使えるエリアなら、電車やバスに乗れる。さらに、オートチャージを利用すれば、改札にタッチするタイミングで不足分が入金されるため、エキナカで飲食したあとでも安心して改札をスピーディーに通過できる。駅構内や駅ビルを中心に多くの加盟店があって、買い物にも便利。変わったところでは、車内販売やスポーツジムのジェクサーでも使用できる。
NTTグループカードはモバイルSuicaにチャージができる!

加盟店舗数
約25万3410店/利用可能店舗数57万9940店(2019年1月末時点)

主な加盟店
全国のコンビニ、スーパー、レストラン、カフェ、居酒屋、電器店、ドラッグストア、レンタカー、ホテルなど

ポイント還元
なし(JREポイントの登録で、特定のお店で1%または0.5%還元)

おすすめの人 首都圏に住み、JRをよく利用する人など

nanaco
特長
なんといっても、ポイントの充実度がNo.1。還元率は1%で、電子マネーのなかで最大なのが特長。ポイントは、セブン&アイグループの共通ポイントになるため、さまざまな場所で使えるのもうれしい。イトーヨーカドーやイトーヨーカドー専門店街、アリオモール専門店街では、特定日にポイントがお得になるサービスもある。
NTTグループカードはnanacoにチャージができる!

加盟店舗数
約38万8000店(2018年12月末時点)

主な加盟店
セブンイレブン、イトーヨーカドー、レストラン、カフェ、居酒屋、電器店、ドラッグストア、ガソリンスタンド、カラオケ店など

ポイント還元
1%還元

おすすめの人 イトーヨーカドーやイトーヨーカドー専門店街、アリオモール専門店街をよく利用する人など

waon
特長
イオンの系列スーパーを中心に利用できるWAON。「近くにイオンがない」と思っていても、ピーコックやまいばすけっと、マルナカ、スポーツオーソリティといった店舗でも利用できる。そのほか、ローソンやファミリーマート、ドラッグストア、電器店、ホテル、変わったところでは高速道路でも利用が可能。また、Pontaと提携している店での支払いであれば、Pontaを提示した後にWAONで支払えば、両方で1.5%のポイント還元に。そのほか、JALマイルやOricoポイントをWAONに交換することもできる。

加盟店舗数
約42万2000店(2018年11月時点)

主な加盟店
イオン、ダイエー、まいばすけっと、ミニストップ、ファミリーマート、ローソン、ドラッグストア、電器店、空港、高速道路、飲食店など

ポイント還元
0.5%還元

おすすめの人 イオン系列のスーパーをよく利用する人、Ponta共通ポイントやJALマイルを貯めている人など

3枚でOK! 電子マネーの選び方と賢い使い方

1.自分の生活動線で選ぶ

例えば、「首都圏のJR沿線に通勤し、平日セブンイレブンに寄ってから帰り、休日はスポーツ用品を買いにスポーツオーソリティに行く」人の場合は、SuicaとnanacoとWAONの3枚がおすすめ。ほかに、Edyが利用できるカフェに行く、IDが使えるガソリンスタンドを利用するなど、立ち寄る頻度の高い場所で使えるものを選ぶとよいでしょう。

2.共通ポイントで選ぶ

共通ポイントとは、提携するたくさんのお店での買い物やサービスを利用するときに提示すればポイントがもらえるしくみ。T-POINTや楽天スーパーポイント、Pontaポイント、dポイントなどがそれに当たります。電子マネーを利用するときに、よく利用する共通ポイントで貯めるというのも方法の1つです。貯めている共通ポイントがあれば、利用してみましょう。

3.スマホに入れる

電子マネーをスマホに入れると、さまざまな利便性があります。スマホで決済できるようになるため、お財布にカードを何枚も持たなくて済むように。カードを作りたいけど、お財布がパンパンになるのは嫌という人におすすめ。スマホに入れると、残高が見えるようになるので、チャージ額が足りなくなるのが心配な人、計画的に使いたい人にもうってつけです。

4.クレジット一体型でポイントを倍に

電子マネーはそれだけでポイントがもらえる場合もありますが、クレジットカード一体型にすることで、ポイントの還元率が高くなります。さらにクレジットカードと一体化すると、本来プリペイド払いの電子マネーを後払いにすることもでき、おすすめです。

紛失したら、どうなっちゃうの?

電子マネーはサインレスで利用できるため、なくしてしまうと心配なもの。不正に使われないよう、利用停止をして残高も補償してもらいたいところです。その分かれ目は記名式かどうか。記名式とは、電子マネーに申し込むときに名前を記入するもの。記名式であれば、停止した後の残高は補償されます。また、クレジットカード一体型の後払いになっているものは、クレジットカードと同様の補償が受けられます。紛失が心配な人は、記名式の電子マネーを利用しましょう。

意外な場所で使える! こんなところで電子マネー

電子マネーは、さまざまな場所で利用シーンが広がっています。変わり種で知られるのが、お賽銭を電子マネーで支払える神社。東京都港区にある愛宕神社は、正月の特定日に限って楽天Edyで賽銭を払えます。このほか、セガのゲームセンター、タイムズの駐車場、国立西洋美術館などの美術館やテーマパークでも利用できるようになっています。

キャッシュレスを後押し! クレジットカード利用シーンが拡大中

電子マネーの拡大もさることながら、クレジットカードもますます便利に利用シーンが拡大しています。クレジットカードというと高額決済のイメージがありますが、コンビニやファストフード店などでは少額でも利用可能です。そのほか意外なところでは、病院や生命保険料、国民年金保険料、商品券、馬券の購入、toto・BIGなどの宝くじも決済することができます。もちろんポイントもたまりやすくなるので、ぜひクレジットカードもあわせて便利に使いこなしましょう。

監修:岩田昭男さん

消費生活ジャーナリスト/1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動。プレミアムカード、カード上級者情報サイト「上級 カード道場」を運営している。

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