2016年4月に電力自由化がスタートして、3年近くが経過しました。選択肢が増えて、電気料金が安くなるとは聞くものの、面倒くさそうな雰囲気でそのままにしている人も多いのではないでしょうか。そこで、改めて電力自由化のメリットを電力業界40年のキャリアを持つENECHANGE顧問の巻口守男さんに伺いました。


ライフスタイルに合わせてリーズナブルな料金プランを契約したり、自分の思いに沿った電力会社を選択したりするようになりました。
日本では、2016年4月から電力自由化が始まりましたが、これは世界的な動き。欧米では日本より一足先に電力自由化がスタートしています。電気を選ぶことは私たちが地球のエネルギーを考えるいい機会。世界的にもこうした流れが普及しています。

この数値が欧米に比べてどうなのか、電力が自由化されて5年以上経過しているイギリスやフランスと比較したのが下のグラフです。日本の新規参入会社のシェアは、同時期のイギリスに比べると低いものの、フランスよりは高くなっていて、だいたい中間程度の位置。日本でも欧米でもいえることは、徐々にスイッチングが進んでいるということです。切り替えに便利なサービスもあるので、ぜひ利用していきましょう。
*2018年11月30日時点
出典:Domestic Retail Market Report2007、消費者委員会第13回公共料金等専門調査会「電力自由化における諸外国の現状と課題について」より作成。2018年11月時点の日本の切り替え率はエネチェンジで算出


電力自由化によって新規参入した会社は「新電力」、既存の電力会社は「旧電力(大手電力)」と呼ばれています。新電力は、全国で543事業者*1。このうち5分の1程度が、家庭用に電気を供給しています。業種でいえば、ガス会社や石油・エネルギー会社、通信会社、運輸・旅行会社、自治体などさまざまです。
新電力として参入した会社はたくさんありますが、実際には地域ごとに利用できる会社が異なります。例えば東京電力エリアでは63社。それぞれの会社が複数のプランを提案しているため、先の東京電力エリアだと250プランが用意されています*2。このプランの数だけ、自分に最適なプランが選べるのが電力自由化です。
*1…2018年12月7日時点
*2…電気ガス比較サイト エネチェンジの場合。2019年1月17日時点

新電力は、これまで電力を扱っていない事業者も多くあります。そのため、「新電力でも電気の品質は問題ないの?」「もし倒産したら、うちの電気はどうなっちゃうの?」という不安の声を聞きます。結論からいえば、生活に支障が出るような問題はありません。
品質でいえば、新電力も旧電力も同じ電線を使って送電しているため、電気に違いはありません。また、新電力に倒産やトラブルなどが起きても、契約中の家庭には送配電会社が電気を送る義務があります。何かトラブルがあっても大きな問題はありません。ただ、もし倒産や撤退となった場合には、当然ながらプランの選び直しは必要です。


住宅の種類は、一戸建てでもアパートやマンションでも構いません*。さらに大都市でも地方の農村部でも関係なく、住んでいる地域単位で自由化は進められています。もちろん、オール電化にしている人も電力会社を自由に選べます。
*建物全体が電力会社と一括契約している場合などは、電力会社を自由に選ぶことができません


生活スタイルに合わせて効率的に電気を使用できる、さまざまな料金プランが用意されています。自分にとって適切なプランを選ぶと、電気料金は約10%安く済ませることもできるようです。例えば、月額1万円の電気料金を支払っている家庭なら、年間で約1万2000円の生活コスト削減に。さらにキャンペーンやギフトカードなどの特典を合わせると、もっとお得にすることもできます。

さまざまなリスクのある原子力や、石油や石炭、天然ガスなど限りある資源である化石エネルギーをなるべく利用したくないと考える人もいるでしょう。電力自由化によって、環境に配慮した再生可能エネルギーを利用した会社も選べるようになりました。再生可能エネルギーとは、太陽光発電や水力発電、風力発電、地熱発電といった自然エネルギーや清掃工場などの廃棄物バイオマス発電を指します。そうした電力を選びたい場合は、電源構成などの公表情報を確認してみましょう。

新電力のなかには自治体が主導して運営する会社もあります。自治体が電力を事業化することで、地域工場や家庭の電気をつくれるだけでなく、雇用を生み出し、経済がまわることになります。つまり、エネルギーの地産地消による地域経済の活性化が期待できるというわけ。電力自由化で地域を応援するという選択肢もあるのです。

電力自由化を機に節電したいと考えている人もいると思います。そうした場合は、ぜひ電気料金の「見える化」サービスを提供している会社を選んでみてください。毎日の電気使用量や、時間単位の電気の使い方が確認できます。まずは、現状を確認することが節電の第一歩です。


新電力に申し込みをすれば、旧電力に解約届を送る必要もなく、当然ながら違約金などもかかりません。電気の切り替え工事については、スマートメーターがついていれば、必要ありません。もしスマートメーターがついていなくても、取り付け工事は新しい電力会社が手配してくれます。戸外での作業になるので、立ち会いの必要もありません。

電気使用量の多さに応じて割安な料金プランを設定している会社が多くなっています。そのため、家族が多かったり、電化製品を多く利用したりしている人ほど、安くなるメリットは大きくなっています。とはいえ、単身世帯で使用量が少なくても、料金が安くなるプランを選べば電気料金は安くできます。キャンペーンや特典、ポイント付与を利用すればさらにお得に利用できるでしょう。

再生可能エネルギーや自治体を応援したい人は、そうしたプランを選びましょう。それ以外であれば、料金の安さで選ぶのがよいでしょう。どんな会社でも電気の品質に変わりはないからです。ただ、やっぱりなじみのある会社が安心という人は、料金と知名度のバランスで選んでみましょう。いずれにせよ、すべての会社のプランをチェックするというのはむずかしい話です。おすすめなのは、電気料金比較サイトを利用すること。自分の条件に合ったプランを提案してくれるうえ、申し込みもそのままできます。

旅行に行くときに航空券代やホテル代を比較するサイト、電化製品を購入するときに機能や価格を比較するサイトを利用したことのある人は多いと思います。電力自由化にあたって、電気料金プランを比較できるサイトもあります。プランを絞り込むときには、自分の条件を入力すれば、料金プランが出てきます。このとき再生可能エネルギーや地域密着、ポイントなどの項目もチェック可能。比較から申し込みまでワンストップで完結します。さらに、電気料金比較サイトを利用した人だけの特典も用意されています。新電力への切り替えはこうしたサイトを利用すれば、決して面倒なものではありません。
- 電気料金比較サイト例
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■エネチェンジ https://enechange.jp/
■価格.com https://kakaku.com/energy/


電気料金比較サイトに条件を入力して一番安いメニューを選んでみてください。現在はさまざまな新電力が参入されるなかで、ガス会社や通信会社も参入しています。ガスの自由化も同時にやるとさらにお得になるでしょう。また、すでにケーブルテレビなどを契約していると、チャンネル料金が安くなることもありますし、楽天やTカードのポイントを貯めている人はそちらで得することもあります。時期によってはキャンペーン中の場合もありますので、こまめな見直しによって特典で得する方法もあります。
電気料金比較サイト「エネチェンジ」を使って、条件別にシミュレーションし、最も節約度の高いプランをご紹介します。
2016年から実施されている電力自由化は、まだ完全ではありません。完全自由化とは、発電、電力小売、送配電の3つが自由化されること。現在、送配電は旧電力が行っています。これが完全自由化されるのは2020年です。また、ガスも2022年に完全自由化となり、エネルギーはすべて自由化されることになります。こうなると、ますます電力を切り替えるべき時代になります。早いうちに電力もガスもスイッチングして、年に1度は見直しする習慣をつけるのがおすすめです。

監修:巻口守男さん
ENECHANGE株式会社顧問、消費生活アドバイザー/東京電力に入社し、電力業界40年のキャリアを持つ。2015年に電力比較サイト「エネチェンジ」の副社長に就任。2017年から顧問。電力自由化をテーマにしたテレビ出演、講演、連載など多数。

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