トップページ > 特集 vol.66 日本とジーンズの意外な関係

日本とジーンズの意外な関係

ここからは、日本とジーンズの関係についても迫っていきたいと思います。日本で一般的にジーンズが売られるようになったのは戦後のこと。日本ならではのジーンズの呼び方の秘密も、このあたりにあるようです。

ジーンズ、それともGパン?

 日本ではジーンズのほかに「Gパン(ジーパン)」という呼び方も一般的ですよね。もともと日本ではGパンのほうがポピュラーで、ジーンズという呼び方が一般的になったのは1970年代以降といわれています。
 Gパンという呼び方は、日本で初めてジーンズが売られた第二次世界大戦後の闇市にルーツがあるようです。戦後、東京・上野のアメ横では、アメリカ軍兵士が穿いた中古や横流しのジーンズが販売されていました。ジーンズは官給品(Government Issue)であり、GI(アメリカ兵の俗称)が穿いているパンツ、つまり「GIのパンツ」ということから、Gパンという呼び方が生まれたと考えられています。
 ただし、「看板屋が『ジーンズ・パンツ』と書こうとしたところを間違えてGパンと書いたことから定着した」などユニークな説もあるんです。いずれにしても、物資の少なかった日本でジーンズは豊かなアメリカ文化を象徴する憧れのアイテムとして認知されるようになります。

あの大災害時にもジーンズが……

 ジーンズが一般的に売られるようになるのは戦後のことですが、もちろんそれ以前にも、洋行帰りや移住者によって、一部の日本人にはジーンズの存在が知られていたことが想像できます。特に、1923年9月1日に発生した関東大震災時には、アメリカからの救援物資として、そして物資を安定させるためのクッション材としても穿き古しのジーンズが使われていたのだそう。もしかしたら、このタイミングが一般の日本人がジーンズを目にした最初といえるかもしれません。

ウォッシュド加工は日本発!?

 ジーンズはノンウォッシュ(未洗い)の状態だと糊がついたままでとても硬いもの。そこで、ワンウォッシュ(糊抜きのために一度洗われたもの)や、新品の状態で穿き込んだ感じを演出するウォッシュド加工のジーンズが各社からラインナップされていますが、実はこうした加工を始めたのは日本のジーンズメーカーといわれているんです。
 例えば、国産ジーンズの先駆けであるビッグジョンの前身、マルオ被服は1965年にアメリカのデニム(キャントンミルズ社)を使ったジーンズの販売を始めますが、新品で未洗濯のデニムは前述のとおりゴワゴワして穿きにくく、新しいジーンズの穿き方を知らない日本人には受け入れられませんでした。そこで、あらかじめ洗濯したジーンズを出したところ大ヒット。その後も漂白剤を使って色落ちさせたり、軽石と一緒に洗うことで穿き込んだ風合いを出したジーンズを発表し人気を集めました。それ以前の1962年にも、高畑縫製が軽量デニムを使ったワンウォッシュのジーンズを発売していたという話もあるんです。
 最近ではアーカイブデータをもとに、レーザーを照射することで色落ち加工やダメージ加工を施すことができる最新機器が海外で登場し、水や化学薬品の使用を減らすことができるクリーンな技術として期待されているのだそう。こうした技術の進歩も、ジーンズを根付かせようとした日本のブランドのアイデアなくして生まれなかったかも?

岡山や広島はなぜジーンズの産地?

 岡山の児島、井原、広島の福山にまたがる三備地域はジーンズの産地として世界的に知られ、国産ブランドはもちろん、海外の一流ブランドのOEMとしても輸出されるほど。この地がジーンズの産地となったのには、学生服が大きな影響を与えているといいます。
 もともと三備地域は綿花栽培や藍染め、厚地の織物の産地として江戸時代から栄え、大正時代以降は質実剛健さが求められる学生服の製造で全国のシェアを握っていました。ジーンズづくりに必要な綿花栽培や染色や縫製などを地域のネットワークで完結できることから、戦後、学生服と反比例するように、ジーンズの生産数が増加していくのです。

漁師や住職が穿いた一点モノのジーンズ

 1990年代、古着ブームに沸いた日本では、高価なものでは1本数百万円という値段でビンテージジーンズが取引されていました。この熱狂は海外に飛び火し、年代物のジーンズの生地の端にあしらわれている赤い糸(レッド・セルビッチ)を指す「赤耳」という言葉が、”Akamimi”として海外のバイヤーに使われるほどだったとか。
 今でもブームに前後して誕生した国内ジーンズブランドが世界トップクラスの技術とこだわりでさまざまなジーンズを発信していますが、ユニークな取り組みで最近注目を集めているのが、広島県尾道市で2013年にスタートした「尾道デニムプロジェクト」です。これは、ビンテージジーンズをモチーフに日本のジーンズ界を牽引してきたブランド・Denime(ドゥニーム)の創業者で現在はRESOLUTE(リゾルト)を手がける林芳亨が監修し、備後地域でつくられる自社のジーンズを使って尾道の魅力発信を目的に始まったプロジェクト。同地で暮らす漁師、大工、お寺の住職、保育士、農家、メガネ職人、シェフなど、さまざまな職業の人が日々の生活や仕事の中で穿き込んだジーンズを、一点モノとして販売しているんです。ジーンズは職業履歴のタグを付けて販売され、穿いた人のストーリーを想像したり、加工では表現できない各職業ならではの味が出ると人気なのだそう。世界初の取り組みとして海外の観光客にも好評で、リピーターも少なくないといいます。


岡山のアパレル業界を中心に、2013年からはジーンズの幅広い知識の習熟度をはかる“ジーンズソムリエ”の資格試験も始まっています。労働者の作業着から、芸術品のように1本1本の個性を楽しむまでに発展したジーンズ。その魅力は今後も色あせることはないでしょう。

参考文献(順不同)
出石尚三『完本ブルー・ジーンズ』(新潮社)/同『ブルー・ジーンズの文化史』(NTT出版)/杉山慎策『日本ジーンズ物語』(吉備人出版)/グラハム マーシュ、ジューン・マーシュ、ポール・トリンカ『デニム・バイブル』(ブルース・インターアクションズ)/今井今朝春、河村喜代子『ザ・ジーンズ(ワールド・ムック889)』(ワールドフォトプレス)/今井今朝春、上岡康子『ザ・デニム(ワールド・ムック890)』(同)/『Pen 2018年6/15号』(CCCメディアハウス) 等

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