トップページ > 特集 vol.66 色あせないジーンズの世界

色あせないジーンズの世界

フランス南部のニーム地方で生産された”Serge de Nimes”(ニーム産のサージ織)を語源とするデニム生地を使ったジーンズは、労働者のための質実剛健なパンツとして誕生し、今や誰もが持っているファッションアイテムです。時にはワークウェア、時には反抗のシンボル、そして時にはハイファッションのキーアイテムとして、めまぐるしく進化してきたジーンズの魅力に迫ります。

誕生は「婦人のひと言」がきっかけでした

 ジーンズといえば、デニム生地を使い、ウォッチポケットも含めた5つのポケット(ファイブ・ポケット)が施されたデザインが典型ですが、ほかのパンツとの一番の違いは、ポケット口などに補強を目的とした金属製の鋲=リベットが配されているところでしょう。
 ジーンズならではのアイデアを発案したのは、19世紀後半にアメリカ・ネバダ州のリーノという街で仕立屋を営んでいたジェイコブ・デイビスです。デイビスは1870年の年の瀬、近所に住む婦人から「木こりの夫のために丈夫なワークパンツをつくってほしい」と依頼を受け、頑丈な幌布製のパンツを仕上げます。ここまでならよくあるワークパンツで終わってしまうところ、「ポケットの辺りが破れやすい」という婦人の悩みに応えようとしたデイビスは、作業台にあった馬具用のリベットをポケット口に打ち込めばより頑丈になるだろうと考え、従来にないワークパンツを完成させるのです。これが街で評判となり、デイビスのもとには注文が殺到。帆布のほか、9オンスのデニムも使ってリベットを打ち込んだワークパンツをつくり始めます。

世界一のジーンズブランドの始まり

 ワークパンツの売れ行きを見て「これは商売になる!」と考えたデイビスは、生地の仕入先だったサンフランシスコのリーバイ・ストラウス社へ「自分の代わりに特許を取ってほしい」と手紙を送ります。同社は当時、輸入品の生地や雑貨の卸売業、そしてゴールドラッシュで沸くカリフォルニアの鉱山で働く労働者向けのワークパンツやシャツの販売で上り調子の会社。手紙を受け取った創業者のリーバイ・ストラウスはただちに申請書を作成し、リベットを打つことについてはすでに先例があったものの、「ポケット開口部への鋲打ち」に限定することで1873年5月、晴れて特許を取得しました。
 デイビスは特許取得が決まる前から同社の社員として招かれ、リーバイ・ストラウス社は同年6月から1年間で2万本以上のリベット打ちワークパンツを生産します。これが、世界一のジーンズブランドとなるリーバイ・ストラウス社の躍進の始まりなんです。
 ワークパンツは改良が重ねられ、ヒップポケットのアーキュエイト・ステッチ(アーチ状のステッチ)や、2頭の馬がジーンズを左右から引っ張っても破れない様を描いたヒップ上のレザーパッチ(ツーホースマーク)といったおなじみの意匠も登場。ひと目で「あのパンツはリーバイス!」とわかるブランド・アイデンティティをいち早く確立したという意味でも、リーバイ・ストラウス社はパイオニアだったのです。

デイビスの遺伝子は他ブランドにも

 ジェイコブ・デイビスは73歳でリーバイ・ストラウス社の工場長を引退しますが、その息子、サイモンも父親の跡を継いで同社に貢献したのち、1932年には自らの子どもの名前を付けたブランドを立ち上げます。これが、ゴリラのアイコンで知られるワークウェアブランドのベン・デイビス。頑丈なワークパンツをつくるという遺伝子は、リーバイス、そしてベン・デイビスにも引き継がれているんです。

「ジーンズは蛇除けになる」はウソ!?

「ジーンズを穿いていれば蛇除け、虫除けになる!」という話をみなさんは聞いたことはありますか? これは、鉱山夫や森林労働者が働く環境に潜んでいる蛇や害虫には、天然染料のインディゴに含まれる「ピレスロイド」という成分が効果的というもの。しかし、実際には染料に含まれているピレスロイドは極微量のため、あくまでウワサにしか過ぎないのだとか。
 なぜ労働者の間でジーンズが熱い支持を得たのかといえば、それまでのワークパンツになかった頑丈さはもちろん、インディゴで染められたデニムは汚れが目立ちにくいというのも大きな理由のようです。ジーンズを穿いているからといって、蛇や害虫のいそうなところを闊歩するのは厳禁ですね……。

ジーンズ界のビッグ3とは?

 1890年にリーバイ・ストラウス社のリベットの特許権が切れると、さまざまなブランドがジーンズをつくるようになります。同社と並んで「ジーンズ界のビッグ3」といわれるのが、H.D.リー・マーカンタイル・カンパニー(以下、リー)とラングラーです。

あの俳優が穿いて売上急増!

 リーはもともと高級食材を扱う会社として成長し、ワークウェアの卸売や製造に着手するようになりました。リーの名を知らしめたのが、創業者のヘンリー・デイビッド・リーが「袖のあたりまでカバーしてくれる作業着があれば……」という専業運転手のひと言をヒントに発案したオーバーオール「リー・ユニオンオールズ」で、第一次世界大戦で軍のユニフォームに採用されるほど評価を得ました。
 1924年にはカウボーイ向けに、細身のシルエットで馬の鞍を傷つけないように金属製のリベットを廃止した「リー・カウボーイ」(のちのリー・ライダース)を発売。1926年には世界で初めてパンツの前開き部分にボタンではなくジッパーを採用し、注目を集めます。革新的なアイデアを積極的に取り入れたリーのジーンズは、1950年代になると伝説の俳優、ジェームス・ディーンが映画「理由なき反抗」や「ジャイアンツ」で着用したことから売上が急増し、ジーンズを単なるワークウェアから洗練された都会のファッションアイテムに進化させました。


デザイナージーンズのパイオニア

 ラングラーは、世界最大のワークウェアブランドだったブルー・ベル社が1947年に立ち上げたブランド。カウボーイやロデオ乗りのための本格的なジーンズを目指し、ハリウッドの西部劇で衣装デザイナーとして活躍していたロデオ・ベンことベンジャミン・リヒテンシュタインの協力を仰ぎ、最初のモデル「11MW」を完成させます。
 11MWでは乗馬など激しい動きに耐えられるようにヒップポケットが二重になり、ポケットの中身が飛び出さないようにウォッチポケットを高い位置につける、馬の鞍の革とくっついてしまわないようにヒップ上のパッチの位置をポケットに移して素材には紙を使うなど、既存のブランドとの差別化が図られました。ラングラーはその後も、ロデオチャンピオンなどのアドバイスを取り入れたアイテムを発表し、デザイナーズジーンズのパイオニアともいわれているんです。

ジーンズを穿いていたら教室追放!!

 ワークウェアだったジーンズは、1950年代に入ると、前述のジェームス・ディーンやマーロン・ブランド、マリリン・モンローなど映画スターの影響もあり、若者のファッションアイテムとして認知されるようになります。この広がりには、ジーンズのデザインが細身になってカジュアルウェアとして取り入れやすくなった、アメリカ西海岸以外でもジーンズが手に入りやすくなったなどさまざまな要因がありましたが、一方で、ジーンズを穿いていた学生が大学の教室から追い出さる、ホテルでドレスコードに引っかかってしまうといった事件もあったようです。

反体制のシンボル、そして大衆のためのアイテムに

 ジーンズがワークウェアから老若男女を問わないファッションアイテムになるまでの過渡期、ジーンズは文学やアート、音楽の世界と強く結びつきました。例えば、1950年代にアメリカで起こり、のちの若者文化に大きな影響を与えたビート・ジェネレーションの中心人物であるジャック・ケルアックは、著書『路上』のおかげで「100万本のジーンズが売れた」と作家仲間のウィリアム・バロウズに言われたほど。
 イギリスでも1960年代のモッズムーブメントをはじめ、ビートルズ、ローリング・ストーンズたちがジーンズを愛用し、1960年代後半にはヒッピーの登場で、ジーンズは反体制を象徴するアイテムにもなりました。その影響は、ジーンズを貧困や奴隷時代のネガティブな象徴としていたアフリカン・アメリカンの間にも広がり、マービン・ゲイやマイルス・デイビスといったミュージシャンらがジーンズを着用するまでになるのです。
 今でこそアメリカ大統領がジーンズを穿いているところを見ることは珍しくありませんが、大統領のジーンズ姿が一般的に見られるようになったのは1980年代以降のこと。1981年に大統領に就任したロナルド・レーガンは自身がハリウッドの西部劇のスターだったこともあり、ジーンズ姿で乗馬にいそしむ姿を披露し、ジーンズの普及にもひと役買ったとか。

ジーンズとはエロティシズムである?

 1977年、カルバン・クラインによるジーンズが発表されたことで、ファッション界におけるジーンズのあり方も決定的に変わりました。ハイファッションブランドがデニム生地を使ったコレクションを発表することはそれまでもあったものの、野暮ったいワークウェアや反体制のシンボルといった従来のイメージから逸脱し、ジーンズをクールでセクシーなアイテムに魅せる試みは、ここから始まったといっても過言ではないでしょう。
 女性の身体にぴったりとフィットするカルバン・クラインのジーンズは、1980年代に入ると、写真家リチャード・アベドンとブルック・シールズを起用し、「私とカルバン・クラインのジーンズの間には何もない」という挑発的なコピーの広告の効果もあって爆発的な人気を得ます。それ以降、数々のデザイナーがジーンズを手がけるようになりますが、ハイファッションブランドを好む上流階級の女性の間でも、ジーンズを自分たちのワードローブのひとつとして取り入れられる大きなきっかけとなったのです。


ワークウェアとして生まれたジーンズは、Appleの故スティーブ・ジョブズやFacebookの創業者マーク・ザッカーバーグをはじめ、企業のトップにも愛されるアイテムとなりました。最近ではスーツのようにオーダーメイドのジーンズをつくれるサービスも登場し、生地の厚みやウォッシュド加工の有無など、自分だけのプレミアムジーンズを仕立てることができるそう。時代とともに移り変わるジーンズの世界。次ページでは日本とジーンズの関係性にも迫ってみます。

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