口臭予防は、おとなの大切なエチケット。とはいえ、虫歯や歯周病を防ぐためのオーラルケアはしていても、口臭を防ぐオーラルケアをしている人は少ないのではないでしょうか。今回は、息を爽やかにする実践型オーラルケアを、口臭治療専門医である福田久美子先生に教えてもらいました。


にんにくを食べた後、牛乳やヨーグルトを口にしても、臭気は減りません。むしろ、逆効果になる場合もあります。りんごが効果的というウワサも耳にしますが、牛乳などの飲み物に限らず、食べ物の臭いを食べ物で消すという方法に医学的根拠はありません。
にんにくを食べると臭うのは、アリシンという成分が硫黄ガスを発生させているから。ニラやねぎにもこの成分が含まれています。一方、牛乳やヨーグルトにも硫黄ガスを発生させる成分が含まれており、これが舌に残っていると口臭の原因に……。臭う食べ物を食べた後は、根本的な口臭対策をするのが正解です。


口臭を防ぐためにうがいをするのは正しいのですが、重曹や乳酸菌タブレットを溶かしてもあまり意味はないでしょう。確かに口の中には口臭を起こす菌とそうではない菌が混在しています。悪玉菌よりも善玉菌を優位にするというアプローチは正しいものの、一度それをやったからといって焼け石に水。それよりも、水で構わないので、朝起きた後や食後に習慣的にうがいをするほうがおすすめです。


一般によく売られているマウスウォッシュは、アルコールが主成分です。アルコールが入っている分、すっきりとしたような感覚は得られるかもしれませんが、アルコールは口の中を乾燥させる脱水作用があるため、唾液が出にくくなってしまいます。口の中は唾液によって潤った環境を保つことで、臭いを抑えることができるのです。つまり、脱水作用のあるアルコール製材であるマウスウォッシュは口臭防止にはおすすめできません。マウスウォッシュを使用する場合は、「プロフレッシュ オーラルリンス」(輸入販売元:プロフレッシュインターナショナル)のように、ノンアルコールタイプであれば口臭予防になります。

ストレスが溜まると、自律神経のうちの交感神経が優位になり、唾液が出にくくなります。唾液は、口臭の原因菌を抑える役割を果たしているので、結果として口臭がひどくなります。よく誤解されているのは、ストレスによって胃が荒れて口臭がする、というメカニズム。食道には弁があって、胃からの臭いはゲップや嘔吐でもない限り臭ってきません。なお、ストレス以外に、疲れや空腹でも口臭はきつくなります。


肉をメインに食べていると体臭が強くなるという話がありますが、口臭もひどくなりがち。なぜなら、肉は硫黄が多い食品で、硫黄ガスが発生しやすいからです。肉と同様に牛乳や乳製品、卵黄も硫黄の多い食品。特に牛乳は、粘性があって舌に残りやすいので、口臭が発生しやすくなります。


口臭を防ぐために、歯を磨くのはもちろん正しいのですが、普通の歯ブラシでは取り除けない食べかすやプラークが口臭の原因になっています。そのため歯ブラシだけでなくフロスや歯間ブラシで、歯のすき間の食べカスやプラークを取り除くことが大切です。このほか、舌や喉にも臭気成分の原因が潜んでいます。うがい(特にガラガラうがい)をしっかりやって歯の表面だけでなく、口全体のオーラルケアによって、口臭をストップさせましょう。
口臭の原因は、口の中にあるバクテリアです。バクテリアは、歯のすき間や舌、喉などに残った食べカスなどのタンパク質を分解して硫黄ガスを発生させます。それが吐く息に混ざって口臭になっているのです。バクテリアは、嫌気性菌といって酸素が少ない状態だと活発に働き、酸素が多い状態だと活動しません。唾液中には、酸素が含まれているので、唾液が多いと酸素も多くなって嫌気性菌は活動できず、口臭が抑えられるのです。カンタンにいえば、口臭のオーラルケア対策とは、唾液が出る環境をつくることといえます。
唾液の分泌が少ないと、口臭の原因菌が増えてしまいます。
日常に潜む口臭注意シーンをピックアップしてみました。

朝、起きたては、口の中は乾いています。そのため、口臭がするのは自然なこと。歯磨きやうがいをして口内のバクテリアを取り除き、水を飲み、朝食をとって唾液を出すように心がけましょう。

食事の回数が減ると、唾液の量は当然ながら減ります。1日3食と1日1食のときでは、唾液の量が違うのは明らか。ダイエットで食事制限をするときも、食事自体は抜かないほうが、口臭予防のためにおすすめです。
ストレスがたまったり、緊張状態が続くと、自律神経の交感神経が優位になります。交感神経が優位の状態では、唾液が出にくくなるので、口臭の原因となってしまうのです。普段、なるべくストレスや緊張状態を緩和させ、リラックスすることが口臭予防の観点からも大切です。

コーヒーや紅茶に含まれるカフェインや緑茶に含まれるカテキンは、口臭が起きやすくなります。そのため、コーヒーをノンカフェインに変えたり、紅茶や緑茶を麦茶やそば茶などの健康茶に変えるとよいでしょう。
上記のように、普段の生活で、唾液の分泌が抑えられてしまうシーンがいくつかあります。これらをよく覚えておき、それぞれ対策をしてみましょう。朝、目覚めた後には水を飲み、1日3食を心がけ、リラックスして生活し、飲み物を健康茶やノンカフェインに変更。さらに、硬い食べ物は唾液の分泌も促進するので、おすすめです。こうした習慣を見直すだけでも、かなり口臭が抑えられます。
口臭を防ぐためには、歯の表面を歯ブラシで磨くだけでなく、歯間や舌の汚れまで取り除くことが大切です。歯間や舌の正しいオーラルケアを実践してみましょう。
アルコール入りの歯磨き粉は唾液の分泌を抑制します。また、泡立ちを良くする界面活性剤は、粘膜を痛めます。そのため、これらの成分が入っていないものがおすすすめ。アルコール不使用と表示されたものや、発泡剤やエタノールの表示がないものを選びましょう。
歯間汚れは、フロスや歯間ブラシを使うときれいにとれます。しかし、糸をひっぱりだすフロスは使いこなすのがむずかしいもの。よく売られているワックスタイプのものは、大きな食べかすは取れてもプラーク(歯垢)は残りにくくなっています。また、歯ぐきが健康で歯のすき間が詰まった人だと、歯間ブラシは入らないでしょう。そこでおすすめなのがY字ホルダータイプ。奥歯へもラクにアプローチできます。
舌の汚れを取り除くため、ブラシタイプの舌クリーナーも売られていますが、こちらはおすすめできません。なぜなら、舌の表面というのは、実は絨毯状になっているため、ブラシでこすると、舌の表面の細かい食べかすや舌苔を、凹みに押し込んでしまうからです。
舌の汚れを取り除くには、水をふくんでから、舌を口の天井でこすって、食べかすや舌苔を浮き上がらせる方法がおすすめ。粘膜同士がこすれて、自然に汚れが落ちます。次に紹介するうがいのステップに入れて、実践してみましょう。
歯周病菌と口臭を引き起こす菌は違いますが、どちらも同じ嫌気性菌です。そのため、口臭対策をすることが歯周病対策にもつながります。歯周病は、いつのまにか歯を失ってしまう恐れのある怖い病気。成人の8割が歯周病やその予備軍だといわれています。歯周病対策にもなる口臭対策をぜひ、チェックしてみてください。

監修:福田久美子先生
女性専用の口臭治療サロン「Fukuda MKM」院長。口臭学会認定医取得/歯周病科医としての臨床経験から、口臭に悩む人が多いことを実感。「ほんだ式口臭治療」の本田俊一氏に師事し、専門的口臭治療をスタート。口臭に悩む多くの女性達から、駆け込み寺として圧倒的な支持を得ている。 https://fukudamkm.com/

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