豆苗をはじめとした再生野菜が注目を集め、家のなかで野菜を育てる“イエナカ菜園”が話題になっています。「ベランダ菜園に失敗したから……」と躊躇する方もいるかもしれませんが、実は、キッチンや窓辺でできるイエナカ菜園はベランダ菜園よりも簡単にできるのだとか! 今回はファームマエストロの鈴木あさみさんに、イエナカ菜園のコツを教えてもらいました。
庭や畑がない家庭にとって、ベランダ菜園は野菜を育てる選択肢のひとつとして一般的ですが、手軽そうに思えるベランダ菜園は台風や雨の影響を受けやすく、冬は植物が育ちにくくなるというマイナス面もあります。そもそもマンション住まいの人はベランダ=共用部分ですから、防災上、ものを置くことはおすすめできないのです。
その点、家の中で野菜を育てれば、一定の温度が保たれているため野菜の栽培時期を選ぶこともありません。野菜やハーブをキッチンで摘んで、そのまま料理に加えることもできるため、食卓をゆたかにする点でも家のなかに菜園エリアを設けてみることをおすすめします。
イエナカ菜園とはいっても、「所詮家のなかだから……」と、育てられる野菜が限られていると思っていませんか? 比較的短期間で簡単に収穫できるイエナカ菜園でも、実にさまざまな野菜を育てることが可能です。

買ってきた野菜を食べたあと、食べられる部分が再び伸びて育つものを再生野菜といいます。これはもちろん家のなかで育てることが可能。水だけでも再生できますが、土に入れると再生がより早くなります。なかでも、ネギや豆苗は日当たりがなくても育ちます。
豆苗、ネギ、パクチー、バジル、三つ葉、大根・ニンジン・ビーツ・カブの葉など

肉料理や魚料理の臭みをとり、風味をつけてくれるハーブ。栽培時期を問わないハーブもイエナカ菜園で育てることができ、苗から土で育てるのに適しています。再生野菜で紹介したとおり、パクチーやバジルは再生も可能です。
ミント、ローズマリー、オレガノ、タイム、レモングラス、ディルなど

スーパーでパックになって売られているベビーリーフやレタスなどの葉物野菜も、簡単に育てることができます。イエナカ菜園ではレタスを“丸く巻いて”育てることはできませんが、フリル状になって元気よく育つはず。ベビーリーフや葉物野菜は種から土で育てます。
ベビールッコラ、ミニセロリ、ミニチンゲン菜、サラダほうれんそう、サンチュ、レタスなど

発芽パワーによって栄養価の高さが期待できるスプラウトも、手軽にキッチンで収穫することができます。種と水で育て、約10日で収穫が可能。ピンクかいわれやレッドキャベツは茎の色が鮮やかなので、育つ過程を見るのが楽しみになるでしょう。
ブロッコリースプラウト、かいわれ、大豆もやし、アルファルファ、レッドキャベツ

実のなる果物や野菜は育てるのが難しそうですが、実は季節や日当たりを気にすれば、イエナカ菜園で栽培が可能なんです。日当たりが必要なので、窓辺で育てるのがおすすめ。自信がない人は、すでに小さな実をつけているものから始めるのもよいでしょう。
ミニトマト、いちご、パプリカ、ししとう
家のなかで育てられる野菜を紹介したところで、早速育て方をチェックしていきましょう。ここでは、レベル別に育て方をご紹介します。

再生野菜とは、種や苗を使わずに買って食べ残した部分を再生させた野菜のこと。水で再生できるものもありますが、土に植えることでより早く収穫できます。

根っこの部分をとっておいて、容器に根っこがかくれるくらいの量の水をはります。そのなかに根っこを下にして水につけます。根がまっすぐ伸びるよう、容器は深めのタイプを選びましょう。
1日に1回、水を替え、根が育つのを待ちます。

根が育ったら、土に植え替えます。ネギの場合は鉢底石を入れて、水はけをよくします。土が乾いたら表面が軽く湿るくらいに水をやりましょう。
*大根の葉や株の葉は、根元を2cmくらい残して、根元の切り口がつかる量の水につければ、1週間くらいで収穫できます。

種を水で発芽させ、10日程度で収穫できるスプラウト野菜。種をうまく発芽させることがポイントです。

スプラウト専用の種を一昼夜水につけ、水分を吸い込ませます。

容器の口にキッチンペーパーなどをかぶせて輪ゴムでとめて、種がこぼれないように水を流します。

水を切った種を広口の容器に入れ、アルミホイルなどをかぶせて暗くし、2〜3日置きます。

毎日2〜3回水でゆすり洗いして、ヌメリを防止します。1週間〜10日ほど経ち、5cm以上伸びたら収穫OK。種の殻を洗い流してからいただきます。
*レッドキャベツは容器の底に湿らせたコットンを敷いて、種を重ならないように入れて手順3へ。その後、霧吹きで湿らせる程度に水をかけ、7cmほどに伸びたら窓辺に移し、赤く色づいたら収穫します。

種を発芽させる必要のない分、失敗が少ない苗からの栽培。特にハーブの場合、すぐに収穫できるのが魅力です。
深めの容器と鉢底石を敷き、培養土を入れて、肥料を加えてならします。

左手の人さし指と中指で苗の株元を挟んでひっくり返し、右手でポットを押して苗を抜きます。もし根が巻いていたらやさしくほぐします。

株元が土に埋まらないように浅く植えたあと、苗と培養土を密着させて株を安定させます。
ハーブの場合は1日から収穫ができます。実のなる野菜は実が色づき、大きくなるまでじっくり育てましょう。
*トマトやいちごの場合は、受粉が必要になります。

種からの栽培も発芽のコツさえわかれば、難しくありません。発芽したあとは間引きしながら育てます。
カップやタッパーを用意し、容器の3/4まで培養土を入れて土をならします。
霧吹きで土を濡らし、「ばらまき」または「すじまき」で種をまき、表面に軽く土をかぶせます。

容器を覆ってアルミホイルで保湿します。(1〜2日)

芽が出てきたら、ピンセットなどで重なっているところを間引きし、本葉が出てきたあとも重なっているところを間引きします。
水やりは根元に向かって霧吹きで行い、適宜肥料も与えます。
それぞれの成長のタイミングで収穫します。

豆腐の空き容器などを使ってイエナカ菜園を行うと、キッチンや窓辺に生活感が出てしまいます。おしゃれなグリーンとしても育てるためには、容器にこだわるのがポイント。とはいっても、家にあるもので構いません。お気に入りのココットやマグカップ、グラタン皿を利用すると、好みどおりの仕上がりに。また、ペットボトルを横にして上の部分を切り抜き、カットしたフチにマスキングテープを貼ってみてもよいでしょう(海外製の空き缶を利用するのも◎)。ほかにも、アフタヌーンティーのラックに載せたり、木製のネームタグを付けたりして飾りつけるのもおすすめです。キッチンや窓辺がさわやかでおしゃれになります。

鈴木あさみさん
ファームマエストロ、料理研究家/日本初の農業が学べる資格が取得できる「ファームマエストロ」協会を立ち上げ、商品開発プロデュースを手掛けている。自宅のイエナカで40種類の野菜を育てるなど、気軽にはじめられる家庭菜園として「イエナカ菜園」を提唱。身体の中から、健康にキレイになれるビューティーレシピ・野菜を専門にする料理研究家としてテレビ・雑誌などで活動中。『イエナカ菜園』など著書多数。
https://ameblo.jp/asami-recipe/

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