「人は見た目!」といわれることもありますが、なかでも「色」は周囲に与える影響が大きい要素のひとつです。今回はカラーキュレーターの七江亜紀さんに、日常生活における色の活用法を教わりました。

色には、それぞれにイメージがあり、私たちは知らず知らずのうちに影響を受けています。例えば、同じ大きさの段ボールでも黒と白で色が異なると、黒い段ボールより白い段ボールのほうが2倍近く軽く感じる、という研究結果もあるほどです。つまり、引っ越し業者が白い段ボールを採用すれば、スタッフの作業効率がよくなり、引いては時間を短縮して仕事を終わらせることができます。こうしたことはモノだけでなく、人のファッションにも言えること。大柄な体型で表情の険しいビジネスマンが黒ずくめのファッションで登場するのと、オレンジなど明るい色を加えたファッションで登場するのとでは印象が異なることと同じです。もしそれが商談の席だったとしたら、受注にも影響が出てくるかもしれません。つまり、色はイメージだけでなく、その人の仕事の評価にまで関わるものなのです。ビジネスでもプライベートでもぜひ、色の効果を活用してみましょう。
何にも染まらない白は、清潔感があり、まっすぐさと力強さを感じるピュアさの象徴。一方で、無機質な印象も与えますので、緊張感が高まる色でもあります。そのため、会議室を白一色で統一したり、ホワイトボードを使ったりすれば集中力が生まれ、会議を効率的に進めることもできます。
冠婚葬祭の衣装で使われるように、フォーマルで特別感のある色です。重厚感と威厳を与えるため、社長など人の上に立つ立場の人に好まれます。裏を返せば、必要以上に威圧感を与えてしまう恐れもあるので、場面によっては注意が必要です。
赤は「火の色」として知られるように、情熱やパワー、やる気をイメージさせる積極的な色。庶民的な親しみやすさもあるので、商品パッケージやコーポレートカラーにも多く使われます。一方で、情熱的な人が赤を身に着けると過剰になり、威圧感を与える強い色でもあります。
知性を感じさせる青は、賢い印象を与えてくれる色です。一方で、冷静でクールな印象もあり、冷たさや寒々しさにつながることもあります。大人しく人見知りな人は、それが助長されてしまうこともあるので気をつけましょう。
オレンジは、円滑なコミュニケーションへ導く色。人間関係がぎくしゃくしているようなときに使うのがおすすめです。派手な色なので、男性は身に着けるのに勇気がいるかもしれませんが、ネクタイなら使いやすいはず。もし抵抗のある人は、トーンを抑えたオレンジを使うのがおすすめ。オレンジが使われている空間は、活発な雰囲気を演出する効果もあります。
緑は、調和を象徴する色。和やかな人づきあいで周囲と打ち解けたいときに利用できます。トラブルを抑える効果もあるため、人と人との調整役をするときに、積極的に取り入れるとよいでしょう。
ピンクは視床下部を刺激して、内分泌系を活性化させる色といわれています。安らぎや喜びを感じる効果があるので、インテリアのメインカラーやサブカラーに使うと安心感を与えることができるでしょう。

色の効果をご紹介したところで、実際に色を活用するコツを見ていきましょう。色には大きく三つのタイプがあります。一つは、自分に似合う「パーソナルカラー」。これは、自分の肌や髪に映えて、もっともきれいに見える色のことです。二つ目は「好きな色」で、文字通り「何色が好き?」と聞かれて、パッと思い浮かぶ色になります。そして、三つ目が「テーマカラー」。自分の目指すべきゴールへ導いてくれる色と考えられています。この三つをしっかり自覚していくことが、人生を輝かせる秘訣です。

テーマカラーを見つけるときに頭に入れておきたいのが、「自分がどんな姿になりたいのか」と「自分のキャラクターを客観的に判断する」こと。まずは、自分が10年後、20年後にどんな人になって、どんな生き方をしたいかを考え、そこにふさわしい色を、色の特徴をもとに当てはめてみます。
例えば、「情熱的に積極的に走り続ける人になりたい」と思ったら「赤」が最適。ただし、すでに情熱的でパワーが有り余っているようなら、テーマカラーを赤にすると過剰になってしまいますし、大人しくて人見知りなのにそれを補いたいからと赤を選ぶと、本来の自分とかけ離れてしまうことも……。こうした場合は、ピンクやオレンジなど赤の要素が入っている色をセレクトするとよいでしょう。
また、テーマカラーは局面によって変えるという方法もあります。その時々での自分の立場や憧れへの状況を考えて取り入れてみるのもひとつの手段です。

人は1日の間でさまざまな色に接します。それを無意識にやり過ごすのではなく、意識してその色を使ったり、身に着けたり、食べたりすることで、良い1日を送ることができるのです。まず、朝は1日のスタートとして、行動を活発にすることが大切です。そのためには朝日を浴びたり、赤い色のものを積極的に見たりするようにします。仕事中にストレスを感じるようなことがあれば、青いものを見てクールダウン。ランチタイムは、空腹を満たすとともに午後への活力を与える時間ですから、トマトやパプリカなど、赤い野菜や果物を取り入れた料理を食べたりすると効果的です。逆に落ち着きたいと思ったら、目に優しい色彩の和食やおそばを食べて自分をリラックスさせるという方法もあります。アフターファイブや就寝前も同じように色を考えて行動してみてください。1日の過ごし方、引いては人生が変わってくるはずです。
ファッションの世界には「トレンドカラー」が存在します。国際組織・インターカラー(国際流行色委員会)に加盟する20カ国近くが毎年提案色を持ち寄り、 生活者の志向などを踏まえた協議によって、実シーズン(小売店舗に商品が並ぶ段階)の2年前にグローバルなカラートレンドを選定。それを踏まえた商品企画を国内業界が展開することで、ファッションビジネスが成り立ってきました。しかし、最近では流行色を打ち出しても時代の空気が瞬時に変わり、それを成立させることが難しくなりました。トレンドカラーに左右されるよりも、自分のカラーを軸に時代の空気を感じ取り、自分なりの流行色を見つけることをおすすめします。個性を大切にして、パーソナルカラーやテーマカラーを軸に持つことが求められている時代といえるかもしれません。色を意識して生活していれば、どんな色が自分にとってふさわしいかわかってくるでしょう。

監修:七江亜紀さん
色のひと®、カラーキュレーター®/色のもつ力を暮らしやビジネスに利用し、新たな価値を提案するトータルカラーコンサルタント。企業、ビジネスパーソンの両方にファッション、食、インテリアにまつわるカラーコンサルティング、ブランディングを行う。『色はビジネスの武器になる』(祥伝社)など著書多数。
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