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おとなの補習時間 子どもを守るルールを学ぶ

事故、犯罪、災害、病気、いじめなど、子どもの身の回りには常に危険が潜んでいるもの。子どもの身を守ることは親や周りの大人の役割ですが、安全に楽しく生活するためには正しいルールづくりが必要です。今回は子どもの危険回避研究所の所長を務める横矢真理さんに、子どもを守るために気をつけておきたいルールについて伺いました。

子どもを守るための大前提

Step1 子どもを取り巻く危険を知り、具体策を考える

子どもを取り巻く危険は、「事故」「犯罪」「災害」「環境問題」「病気」「いじめ虐待」の6つに大きく分けられます。子どもが自分自身で対処できないうちは、保護者が見守ることが基本ですが、小学校に通い始めると、通学や習い事など一人で行動することも増えるもの。こうした場合には、事前に子どもと一緒に目的地まで歩いてみて、注意したい場所の写真を撮影・プリントし、写真に注意点を書き込みます。「はまってしまいそうな用水路がある」「路上駐車が多いエリアで、ドアの巻き込みや誘拐の危険もある」というふうに、写真を見せながら危険を教えるとともに、その危険を避けるために「反対側の道を歩く」といった具体策も伝えることが大切です。模造紙などに地図を描いて貼り込めるようにするといいですね。
危険要因は、子どもの成長段階や性格、地域の環境によって異なるため、それに合わせたルールづくりが必要になります。また、曜日ごと・時間帯ごとに子どもがどこにいるかを把握しておくことも大切です。さらに、子どもを取り巻く状況は、成長によっても環境によっても変わりやすいものなので、半年に一度は具体策を見直しましょう。

Step2 「ハード・ソフト・ハート」で子どもを守る

Step1で書いたように、危険に巻き込まれにくい環境(ハード)を親が整えた上で、具体策を子どもと共有し、危険回避能力を向上させること(ソフト)も重要です。また、こうしたハード・ソフトと合わせて忘れてはならないのが、守りたいという気持ちを伝え続けることです。子どもは自分が大切にされることで、投げやりになることなく健やかに成長するもの。心の面でも支えていくのが保護者の役目です。

シチュエーション別  危険回避のポイント

通学・習い事 事故や犯罪に巻き込まれないための具体策を

上級生や友達など一緒に行動する相手を探し、最も安全な経路を教えておくことが基本です。Step1のとおり、目的地までの道順を一緒に見て歩き、事故や犯罪に巻き込まれないための具体策を教えます。チェックポイントの一例は次のとおりですが、地域によって環境は異なるため、さまざまな視点で確認しましょう。

チェックポイントの一例

  • 用水路など、転落したりはまったりする場所はないか
  • 交通量の激しい場所はどこか
  • 信号や踏切はあるか
  • 困ったときに逃げ込める場所はどこか
事故原因で一番多いのは飛び出し

警察庁の統計によると、小学生の法令違反による事故の原因で一番多いのは「道路への飛び出し」で、事故全体の約半数を占めるといいます。また、学校への登校時よりも下校時のほうが事故の発生確率が高く、午後2〜4時の時間帯がもっとも危険とも。具体策をつくる際には、こうした特徴も踏まえておきましょう。

留守番 家のなかでもルールづくりは必要

家で留守番させておけば安全と考えてしまいがちですが、家のなかにもさまざまな危険が潜んでいます。Step1と同様に、子どもの視点で考えながら危険な要素がないかを写真で確認し、ベランダや出窓から転落しないように窓を子どもの届かない高さで二重ロックにする、出窓の近くに踏み台となるものを置かないなど、具体策も実践していきます。また、普段は台所に立たない子どもでも、親がいない間にナイフで果物をむいたり、レンジでお湯を沸かしたりすることがあるもの。こうした場合、どこまでやっていいのかのルールを作り、刃物や電子レンジの安全な使い方を教えておきましょう。

チェックポイントの一例

  • 誤飲すると危険なボタン電池や消毒剤などが手の届く高さにないか
  • ミニトマト、白玉だんご、スーパーボールは飲み込むと窒息の恐れあり
  • 転落の恐れのあるベランダや出窓は二重ロックされているか
  • 困ったときのために連絡先は教えてあるか
  • 困ったことが起きたときに近所に助けてもらう人はいるか

公園・公道 子どもは好奇心のかたまりであることを念頭に

常にどこで遊んでいるかを把握し、危険なポイントがないかを確認します。同時に公園や公道でのルールを説明し、地域の公園や公道で禁止されている遊びがあれば、それも教えておきましょう。キックボードやペダルのないストライダーで坂道を下る……など、子どもは好奇心のかたまり。いろいろな方法で遊ぼうとすることを念頭に、保護者が目を離さないようにしましょう。

チェックポイントの一例

  • 公園の使い方を確認し、それを伝えているか
  • 信号や乗り物などの交通ルールを教えているか
  • 事故が起きそうな遊具の危険は教えているか
  • 飛び出しや自転車の曲乗りなどの行為は危険と教えているか
  • キックボードやストライダーなどのルールを教えているか
事故が一番多い遊具は滑り台

消費者庁によると、公園やレジャー施設に設置されている遊具による子どもの事故は、3月から5月頃の春に多くなる傾向があり、年齢が特定できている事故のなかでも、6歳以下の幼児の事故が約7割を占めているといいます。大人が見守ることで避けられる事故も多いことから、安全に遊ぶための以下の点に気をつけることが肝心です。

遊具で安全に遊ぶためのポイント
  • ●施設や遊具の対象年齢を守る。
  • ●6歳以下の幼児には保護者が付き添う。
  • ●子どもの服装や持ち物に注意する。
  • ●遊具ごとの使い方を守らせる。
  • ●遊具を使う順番待ちでは、ふざけて周りの人を押したり
     突き飛ばしたりしないようにさせる。
  • ●天候に気を付ける。
  • ●遊具の不具合や破損を見付けたら、利用を控え、管理者に連絡する。

遊具の種類別事故発生数

地震・火事 逃げ込む場所は複数用意する

留守番や帰宅中に火事や地震などに遭遇したときには、どうしたらいいかを家族で話しあっておきましょう。あらかじめ、近所に知り合いが住んでいたらそこへ駆け込むようにし、それが難しい場合は、複数の大人が常時いるような出入りの多い場所へ駆け込むのがよいでしょう。コンビニや銀行、クリーニング店などが一例です。これは、不審な大人に追いかけられた場合などにも有効です。身の安全が確保できたら、「親や先生に電話をかけてほしい」など用件を伝えられるようにもしておきましょう。

エスカレーター 片側空けはあくまで慣例

エスカレーターはステップ上に立ち止まって利用することが前提です。片側を空けることはあくまで慣例であり、最近はエスカレーターでの歩行禁止の呼びかけも始まっています。子どもに対してもステップ上に立ち止まり、手すりにつかまるという正しい乗り方を意識させ、子ども一人ではなるべく乗らせないようにしましょう。また、ペデストリアンデッキや複合施設など屋外のエスカレーターは雨に濡れるとすべりやすいので、しっかりと見守りましょう。

ベビーカーを乗せるのも厳禁

ベビーカーのエスカレーターへの乗り入れは、バランスを崩して転倒する危険があるため、絶対にやめましょう。ロングスカートなど丈の長い衣類や七五三などで着物を着ている場合、ビニール樹脂製サンダルを履いているときの巻き込みにも注意が必要です。

<エスカレーターの正しい乗り方や注意点について詳しくは>
日本エレベーター協会ホームページ「ご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/escalator.html

チャイルドシート 成長に合わせて最適なものを

チャイルドシートには、乳児用、幼児用、学童用があり、それぞれに体重や身長の制限がありますので、成長に合わせて使用しましょう。

助手席での使用は、事故時にエアバッグが飛び出すことで子どもに衝撃が加わり大変危険なので、必ず後部座席で使用してください。また、チャイルドシートのリコール情報にも目をとおし、自分たちが使っている商品ではないかチェックしてみましょう。


<チャイルドシートの使い方について詳しくは>
国土交通省ホームページ「チャイルドシートコーナー」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/child/

ベビーカー 寿命があることを忘れずに

おさがり品やリサイクル品のベビーカーを使っている人が多くいますが、ベビーカーにも寿命があることを認識し、自主点検を行いましょう。寿命はメーカーやモデル、使用状況などによって異なるものの、新品での購入時から使用対象月齢期間までが目安とされています。また、鉄道や商業施設内で利用する際は、段差やすきまに注意し、エスカレーターでは子どもを降ろして、折りたたんで運ぶのが安全です。

ハンドル部にフック、実は危険

ベビーカーのハンドル部分に、買い物袋やバッグなどを下げるS字型のフックをつけている人を多く見かけますが、これはメーカー推奨の使い方ではありません。フックに重たいものをぶら下げていると重心が高くなるため、子どもが座った状態でもベビーカーごとひっくり返ってしまうなどの危険があります。

<ベビーカーの使い方について詳しくは>
全国ベビー&シルバー用品協同組合ホームページ「ベビーカーには寿命があります」
https://ikuji-tokyo.or.jp/babycar-life

自転車 子どもを乗せる基準を満たしたモデルを選ぶ

まず、子どもといっても3人以上自転車に乗せるのは道路交通法違反です。おんぶやだっこをした状態での乗車も危険なのでやめましょう。6歳以下の子どもを2人乗せる場合は、「BAAマーク」や「SGマーク」のついた「幼児2人同乗基準適合車」に乗り、さらには使っている自転車が、リコール品でないかも確認しましょう。ヘルメットには寿命があり、衝撃を受けたものは耐久性が弱まっていることもあるため、リサイクル品は購入しないほうがベターです。最近は輸入品の子ども乗せ自転車も販売されていますが、日本とは安全基準が異なるため、日本の基準を満たしているかをチェックしてから購入してください。

「子どもを事故から守る!プロジェクト」を活用しよう

消費者庁では、「子どもを事故から守る!プロジェクト」というWebサイトで、安全チェックリストやアドバイス、体験談などの情報発信やメール配信サービスを行っています。ぜひ活用してみてください。
https://www.caa.go.jp/kodomo/

監修:横矢真理さん

「子どもの危険回避研究所」所長/平成11年より、Webサイト「子どもの 危険回避研究所」を主宰・ 運営し、子どもに関わる事故・犯罪・災害・虐待・環境問題などの情報を発信している。全国各地での講演活動、新聞・雑誌への寄稿をとおして、子どもの安全を守るための活動を続けている。
https://www.kiken-kaihi.org/

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