残暑が厳しくも秋の訪れを感じる季節。本格的な行楽シーズンを控えた今月の「Trace」では、近年、外国人観光客からも大注目の、日本のリゾートの秘密に迫っていきたいと思います。日本初のリゾートホテルは「外国人専用」だった時代がある……ってなぜ!?

日本初の本格的なリゾートホテルは、古くから温泉保養地だった箱根・宮ノ下で1878(明治11)年7月に創業した「富士屋ホテル」といわれています。ヘレン・ケラーやチャーリー・チャップリンなど数々の著名人も宿泊し、日本を代表する老舗ホテルとしていまも変わらず愛される富士屋ホテル。実は1893(明治26)年からしばらくの間、「外国人客専用のホテル」として営業していたのだそう。
その背景にあったのは、同じく宮ノ下で営業していた老舗旅館「奈良屋旅館」との顧客争奪戦でした。宮ノ下が外国人にも人気の滞在先となり、二大温泉旅館だった両者間はライバル関係に! やがて、富士屋ホテルは外国人専用、奈良屋旅館は日本人客専用とする協定を結び、1912(大正元)年まで棲み分けを行っていたんです。
世界で初めてのリゾートがどこであるかは諸説ありますが、最古のリゾートのひとつがイタリアのカンパニア州にあったバイアエ(現バイア)です。ナポリの西方にある港町で、古代ローマの時代から保養地として繁栄。カエサルや皇帝ネロらの別荘も存在したといいます。

国内有数の避暑地として知られる軽井沢。リゾートとしてのスタートは、箱根に富士屋ホテルが誕生してしばらく経った1886(明治19)年に始まるといわれています。江戸時代は宿場町として栄えた同地を訪れたカナダ人宣教師が、その自然と気候に魅了され、家族や友人を招き始めたことがきっかけなのだそう。やがて、外国人や日本人が所有する別荘や、避暑客相手の貸別荘やホテル、商店などが建ち並ぶようになり、昭和初期にはゴルフ場やテニスコート、乗馬等のスポーツも楽しめる一大リゾートに成長するのです。
避暑地として注目されたことをきっかけに、軽井沢では名産品も生まれました。高冷地のため、軽井沢の農家ではアワやヒエなどの雑穀が主な生産物でしたが、避暑で訪ねてきた外国人宣教師が、高原の気候・風土に適したキャベツや白菜といった高原野菜の栽培方法をレクチャー。これが、独特の風味と品質の高さが評価される軽井沢産高原野菜の誕生につながるのです。
1914(大正3)年に軽井沢で温泉旅館として開業し、いまや国内外でさまざまな高級旅館やリゾートを手がける星野リゾート。同社が2005年に軽井沢で開業した「星のや軽井沢」は、従来の旅館の宿泊スタイルを大きく変えたリゾートでもあります。というのも、星のや軽井沢では宿泊料金に食事代を含めない「泊食分離」を実施。2泊以上の滞在なども推奨し、「1泊2食」が当たり前の日本の旅館、リゾート業界に大きなセンセーションを与えたのです。
戦後の日本ではホテルブームが度々起こり、レジャーランドの開発や温泉地の高級リゾート化などが進められました。1987(昭和62)年には日本人の余暇活動の充実や地域振興、内需拡大などを目的としたリゾート法(総合保養地域整備法)が施行され、全国各地でリゾート開発が計画されましたが、バブル崩壊などの影響でそのほとんどが撤退や縮小に……。
一方で、1990年代に入ると、リゾートは多様化の時代を迎えます。90年代初頭は外資系ラグジュアリーホテルが進出し、数カ月間予約が取れないほどの人気を集めたり、「動くリゾートホテル」といえる豪華客船の「飛鳥」や「にっぽん丸(3代目)」がデビュー。90年代も後半になると、格安航空券の浸透で海外渡航者が増加。それまで一部の層に限られていた海外リゾート、特にタイやインドネシアなどアジアのアイランドリゾートで贅沢な休暇を過ごすライフスタイルに注目が集まっていくのです。

ビーチリゾートでおなじみのものといえば、ヴィラタイプの客室や開放的なテラス、アジアンテイストのインテリアなどが挙げられますが、かなたに広がる水平線や緑と一体化したような錯覚を覚える「インフィニティプール」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 実はこのプール、ルーツはスリランカにあるんです。
インフィニティプールが誕生したのは1981年のこと。スリランカ中央部の高地に広がるジャングルの中に建てられた「トライトンホテル(現 ヘリタンス・アフンガッラ)」で、最初のプールがつくられました。考案したのはスリランカ人建築家のジェフリー・バワ。バワはスリランカの国会議事堂や数々のホテルを手がけた建築家で、世界的なリゾートホテルチェーンであるアマングループをはじめ、多くのアジアンリゾートの設計に大きな影響を与えた人物です。いまでは都市型ラグジュアリーホテルの屋上プールや、温泉旅館の露天風呂にもインフィニティプールのアイデアが取り入れられていますが、バワなくしてこうした空間は誕生しなかったんですね。

良質なパウダースノーに広大なスキーリゾート、点在する温泉……北海道の倶知安町とニセコ町にまたがるニセコスキー場(ニセコユナイテッド)は、世界のスキー観光産業界で最も名誉ある賞といわれる「ワールド・スキー・アワード」で3年連続「日本のベスト・スキー・リゾート」に選出されるほど、世界的に評価の高いスキーリゾートです。
オーストラリアやニュージーランド人の長期滞在者が多いことで知られていますが、2000年代後半から急増しているのが中国、シンガポール、マレーシアやタイなどアジア圏からの観光客。香港やマレーシアなどの海外資本も参入し、外国人による別荘地の需要もさかんとなったことから、今年3月に発表された「平成28年地価公示」では、ニセコにある別荘地倶知安の地価が前年比で19.7%上昇と、全国の住宅地で1番の上昇率となったのだとか!
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