中古住宅を購入して、自分好みの住まいにリフォームして暮らす人が増えています。リフォームのトレンドや必要な準備から、自分でできる簡単リフォームまで、リフォームを考えているなら知っておきたい基本のキホンを、一級建築士の佐川旭さんに伺いました。
漠然と考えるより、何か参考になるものを知ったほうが理想のリフォーム像も固まるはず。まずは、知っておきたいリフォームのトレンドを見ていきましょう。
かつてのキッチンは、料理を作る人がダイニングに背を向ける独立型や壁付け型が主流でした。しかし、ダイニングの開放感が家族のコミュニケーションの鍵となることから、最近は対面型オープンキッチンが主流です。また、キッチンのリフォームと合わせてリビングをコーディネートする例も増えています。
共働き家庭に人気なのが、家事をラクにしてくれる設備を導入するリフォームです。代表的なのが、キッチンに食器洗い乾燥機や自動昇降吊り戸棚をビルトインすること。キッチン以外では、浴室やトイレを自動で洗浄してくれる自動洗浄バス・トイレや、浴室換気暖房乾燥機などの設置がトレンドです。
節水型トイレや太陽熱利用システムの導入、窓や壁の断熱改修で節電につなげるなど、省エネを考えたエコリフォームは、環境意識の高い30代~40代に人気です。また、床を無垢材にしたり、壁を漆喰などの塗り壁にして、ナチュラルな暮らしを演出することも。床を無垢材にすると、頻繁に雑巾がけをする必要があるため、子どものしつけや家族のコミュニケーションの1つとして取り入れる家庭もあるほどです。
費用を抑えた手軽なプチリフォームもさまざまです。
・断熱・防犯につながる二重サッシ、内窓(インナーサッシ)…2~3万円
・節水型や掃除不要なトイレへの交換…6~7万円
・湿気やヒートショックを防ぐ洗面所の暖房乾燥機設置…6~7万円
業者に依頼するまでにも、さまざまなステップが必要なリフォーム。どんなことをするべきなのか。ポイントを見ていきましょう。
「共働きで忙しいから機能的な設備を取り入れたい」「家族がコミュニケーションをとれる環境にしたい」「妻と夫の生活時間帯が違うため、夫婦別室にしたい」など、おおまかな理想の暮らしを思い描いてみます。そこから、「オープンキッチンを導入」「バーベキューができる庭にする」など、具体案に落とし込んでいくことがポイントです。
リフォームを思い立っても、先立つものがなければ難しいもの。子ども達の成長を考えていくらなら使えるか、老後の蓄えのうち捻出できる費用は……など、リフォームに充てられる費用を算出してみましょう。ちなみに、主なリフォームにかかる費用の目安はこちらをご参考に。
※ 金額はインタビューを元に作成しています。
予算オーバーを防止するためにも、リフォームの優先順位をつけることは大切です。プランの詰めが甘いと途中で追加工事が必要になることがあるので、ブレのないように決めておくことがポイント。その上で、リフォーム専門誌やインターネットのリフォーム情報サイトで情報を集めて、リフォーム会社や建築家など、依頼先を決めていきます。
リフォームを依頼するとき、最近はさまざまな業者があって、選ぶのにもひと苦労です。業者を選ぶポイントの1つは金額です。
基本的に100万円以下のプチリフォームであれば、ショールームで設備を選んで設備会社系のリフォーム会社に頼むのが一般的です。また、内装中心であればインテリアショップ系のリフォーム会社に頼んでもよいでしょう。
一方、500万円以上の場合は規模も大きいため、建設会社や工務店、リフォーム専業の会社に頼むほうがよいでしょう。この場合、設計に関わるため、建築家に頼むのも1つの方法です。実際の工事は工務店ですが、建築家が設計し、見積もりや工事のチェックを行います。
設備会社系……水まわりの設備の設置やメンテナンスを行う設備会社によるリフォーム。ショールームで設備を見て決める場合などに工事を請け負う。
インテリアショップ系……インテリアのノウハウをもとに、内装中心のリフォームを提案。インテリアや小物などのアドバイスや、細かな生活提案をしてくれることも。
建設会社・工務店……新築の仕事を手がける大手住宅メーカーや地域密着の工務店など。保障やアフターサービスが◎。
建築家……設計にこだわりたい場合に。実際の工事は、工務店が担当するが、第三者的な立場で見積もり内容を精査してくれるのが安心。
リフォーム専業系……リフォーム専業で実績のある会社。過去のノウハウをもとに、漠然としたニーズにも応えてくれる。
不動産会社系……一部の建設会社とも重複するが、マンションのリフォーム実績が豊富なことが多い。営業や設計施工担当が分かれており、システマチックな対応がポイント。
リフォームは請負代金が500万円未満であれば、建設業の許可なく工事できます。しかし、500万円未満でも間取りを変更するなど、比較的大がかりなリフォームを依頼する場合は、建設業の許可がある会社を選んだほうが安心につながります。
会社の信頼性を見極めるポイントのひとつは、依頼先のパンフレットやホームページの「会社概要」をチェックすること。建築士事務所登録を行っているか、有資格者はどのくらいいるかなどを見てみましょう。有資格者の中でも「建築士」は設計を行ったり施工監理を行うことができる資格。また、「建築施工管理技士」も、施工計画を作成し、現場での指揮を行える大事な資格です。一方で、「インテリアプランナー」「インテリアコーディネーター」「福祉住環境コーディネーター」などは民間団体が与えている資格であり、経験によって担当者の力量にも開きがあると考えたほうがよいでしょう。ただし、リフォームは担当者と話し合いながら進めていくもの。実績や資格だけでなく、担当者の人柄や自分との相性を見極めることも忘れないようにしましょう。
業者に依頼し大規模に改修しなくても、ホームセンターなどで材料を購入し、DIYできるリフォームもあります。素敵な住まいに近づける第一歩として、挑戦してみてはいかがでしょう。

監修:佐川 旭 さん
一級建築士、女子美術大学非常勤講師/1951年福島県生まれ。日本大学工学部建築学科卒業。「伝える」「つなぐ」「動かす」をキーワードに、個人住宅から公共建築まで、幅広い実績を持つ。『最高の住まいをつくる「リフォーム」の教科書』(PHP出版)などリフォームに関するアドバイスも多く、著書、マスコミ出演多数。
https://www.ie-o-tateru.com/
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