忙しい毎日、温かい湯船につかる時間がもったいなくて、シャワーだけで済ませてしまっている人は少なくないのではないでしょうか。ただし、冷えから起きる血行不良や肩こりに悩まされることが多くなるこの時期、あなたを健康にしてくれるのは、やっぱりお風呂なんです! お風呂が体にもたらしてくれるさまざまな効果、そして体のお悩みに合わせた効果的な入浴法など、お風呂やサウナを楽しむときに覚えておきたいとっておきの知恵を、温泉療法専門医の早坂信哉先生に教えていただきました。
「温かいお湯につかると体全体が温まって血行が良くなる」とは、みなさんもご存じのお風呂の良さ。しかし、お風呂が体にもたらしてくれる効果はそれだけではありません。たとえば、お風呂に入ると血の巡りがよくなり、老廃物等が体外に排出されて新陳代謝が活発になります。また、筋肉がゆるんで関節の緊張がやわらぐことで、肩こりや腰痛、筋肉痛も緩和されるんです。さらに、体に水圧がかかるため、重力で足にたまった血液や体液が心臓に押し戻され、足のむくみ解消にもつながります。
ちなみに、サウナや岩盤浴でも体を温める効果がありますから、新陳代謝が活発になり、腰痛や筋肉痛の緩和にもつながります。最近の調査では、サウナに定期的に通っている男性は頻繁にサウナへ行かない男性に比べて長生きし、突然の心臓発作で死亡する確率も低いという結果もあるのです。
お風呂は、シャワーやかけ湯をしてから入ること。その前に、しっかりと水分補給をすることも大切です。水でもお茶でも構いませんが、おすすめはイオン飲料。ビールはNGです!
①かけ湯…手桶で10杯ほど手や足の先から体の中心部、足へとかけます。シャワーでも可。
②半身浴→全身浴湯…みぞおちのあたりまで30秒程度つかります。長くなくてOK。その後、汗が体ににじむくらいまで全身つかります。長く入ってもダイエット効果はありません。
③洗い場で髪や体を洗う湯…お風呂自体に清浄作用があるので、泡立てた石けんで軽く肌をなでるくらいでOK。最後にもう一度全身浴でリラックス。
④水分を摂る湯…お風呂から出たら湯冷めしないように十分水分をふき取り、400~500ミリリットルくらい水分を摂りましょう。温かい格好で30分以上休息して温熱効果を持続させることもポイントです。
「長く半身浴をすると痩せられる!」「半身浴をするときれいになれる!」とされ、特に女性の間で半身浴が流行しました。しかし、実は半身浴よりも全身浴のほうが消費カロリーは多くなります。肩こりや頭痛、むくみ体質の症状の改善についても、全身浴に軍配が。これは、全身浴のほうが体を温める力も血行を良くする力も強いためです。ただし、心臓や肺に疾患がある人や長時間入浴したい人にとっては、心臓に負担の少ない半身浴がおすすめです。
よく80~90℃くらいの高温のサウナに入り、いきなり冷水に入る人がいますが、よほど慣れている人でない限り、不整脈や狭心症を起こす危険もあります。特に中高年の男性は、高い温度のお湯やサウナを好む傾向にあります。これは、強い温度刺激による一時的な快感がやみつきになっているため。高温サウナ→冷水は心臓の負担が大きいと心得、避けるようにしましょう。
水分が体についているとその分温度が下がるというのは間違い。乾式サウナの場合、体が濡れたまま入ってしまうと、湿度が高くなってしまい、体への負担が増大。息苦しくなって、逆効果です。乾式サウナは体を拭いて入ってこそ、本当の効果が得られます。ただしミストサウナやスチームサウナなどの湿式サウナであれば、濡れたままでもOKです。
37℃前後の微熱ならば、入浴しても問題ありません。湯上がり時の湯ざめには気をつけるようにしましょう。ただし、高熱のときや疲れすぎているとき、体力が落ちているときは病気を悪化させる危険があるので、安静にしていましょう。
今年は12月22日が冬至です。昔から冬至の日にゆず湯に入ると、風邪をひかないとされています。これは、柑橘類の皮に含まれている油が肌を守り、湯ざめを防ぐという古来の生活の知恵。冬至以外の日でも、季節ごとに次のような植物をお湯に入れると、それぞれの時期特有の悩みを解消する効果があります。ぜひ、試してみてください。


監修:早坂 信哉 先生
東京都市大学教授(医学博士)、温泉療法専門医/1968年、宮城県生まれ。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。浜松医科大学、大東文化大学などを経て、現職。入浴を医学的に研究している。著書に『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』などがある。
https://hayasakashi.wix.com/bath
「たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法」著者:早坂信哉 出版社:KADOKAWA 定価:1,200円+消費税 |
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