お寺や神社を訪れると、つい「おみくじ」を引きたくなりませんか? おみくじは吉か凶かの“運だめし”と捉えられがちですが、深く読み解いていけば、今の自分の道しるべにできるもの。そこで今回は、おみくじコレクターの鏑木麻矢さんに、毎日を楽しくしてくれるおみくじの世界をガイドしてもらいました。

自分の運勢を占いたいときなら、いつでも引いてかまいません。初詣や旅行先で寺社を訪れたとき、なんとなく吉凶だけをみて引く人が多いと思いますが、おみくじには、金運や恋愛、失せ者、健康などの項目もあるように、そのときの生活全般に関わる指針を与えてくれるもの。悩み事や迷い事があるとき、また、誰かに背中を押してほしいときや喝を与えてほしいときなど、様々なシチュエーションで引いてみると良いですね。
お寺のおみくじも神社のおみくじも、仏様や神様からのメッセージが書かれているというところは共通。ですが、前者は漢詩を使ったもの、後者は和歌の書かれたものがほとんど、という違いがあります。その他の特徴はこちら。

比叡山延暦寺の良源大僧正が授かったとされる「元三大師百籤(がんさんだいしひゃくせん)」を使ったものが多いです。入谷鬼子母神など日蓮宗のお寺では、法華経の一節を挙げるものも見られます。

湯島天神なら菅原道真、明治神宮なら明治天皇といった、祭神による和歌を選んでおみくじをつくる神社も。ほか、古事記のエピソードをもとにしている神社、易占いの六十四卦を使っている神社など色々あります。

それぞれのお寺や神社のおみくじによって割合は異なりますが、先に紹介した「元三大師百籤」を使っている所ならば、大吉の割合は約18%、凶の割合は約30%が一般的。このほか、観光地では凶を入れていなかったり、初詣シーズンにだけ凶を抜く寺社もあります。
信じるかどうかは、占いと同じで自分次第ですから、生活にうまく役立てることをおススメします。ただし、ネットのおみくじはお寺や神社に参拝して行うものと違い、やや味気なさがあるのも事実……。やはり、リアルな場の雰囲気を味わったほうが、豊かな楽しさがあるかもしれませんね。
「大吉の次は中吉」とつい思ってしまいがちですが、下図のように、大吉の次が吉、次に中吉という順番のほうが一般的です。

末吉は「末に(あとで)吉になる」という意味が含まれているという考え方もあるほか、「平(たいら)」「半吉」「中凶」「小凶」など、さらに細かい分類を設けている寺社もあります。なかでも、吉凶の分類が細かいことで知られるのは、京都の伏見稲荷。「大大吉」「向(むこう)大吉」「末大吉」など、17種類にも分かれています。
吉凶の順番に目が行きがちですが、よく読んでほしいのは、漢詩や和歌の部分です。これらの内容に、自分の悩み事・迷い事を照らし合わせて、神様・仏様がどういうメッセージを自分に与えてくれているのか解釈してみましょう。おのずと進むべき道がわかるはずです。
かつては寺社にある木に結ぶと、その木の生命力にあやかれるといわれていましたが、木を傷めてしまうため、今ではマナー違反です。おみくじを結びたいときは、寺社が指定する場所に。ちなみに、「凶だと結ぶ」「凶を結ぶときは左手で」という話がありますが、これは「難しいことを成し遂げる=一種の苦行としてご利益を生む」という考えが基にあるようです。吉のおみくじでも所定の場所に結ぶことで、寺社とご縁を結ぶという意味にもなります。

おみくじの保管場所は、粗末にならないのならどこでもOK。日付と引いた場所を入れてファイリングし、その時々のことを思い出してみるのもよいでしょう。凶のおみくじを持ち帰って、心を引き締めるという使い方も開運法のひとつです。ただし、必要なくなったと感じても、ゴミ箱に捨てるのはNG。感謝とともに寺社の古札納所に納めましょう。
「神様、仏様に何度もお伺いを立てるのは失礼」という考え方から、「3回までならOK」という俗説までさまざまですが、旅先で色々引いて回るのも楽しいもの。基本的には本人の自由です。とはいえ、凶を引くときは、何度引いても凶が出てきてしまうなんて「あるある」も人生の妙。つまり、おみくじに書かれていることがいまのあなたの状況だと受け止める潔さも必要です。また、凶は「それ以上悪くならない」という意味もありますので、「不幸になる……」と早とちりしないように。
おみくじは、「いま」のあなたの迷い事や生活全般に関わることに対してのメッセージですから、それらの状況が変化する、一段落するときまでが有効期限と考えるのが良いでしょう。
海外式のおみくじや、「凶」を引きたくなるおみくじなど、全国のユニークなおみくじをご紹介!
中国式のおみくじを体験
関帝廟(神奈川県)横浜・中華街にある関帝廟では、中国式の神筈式(しんばえしき)おみくじが体験できます。竹筒に入った棒くじと、神筈という三日月型をした木製の神具を使って占います。
狐型のおみくじが愛らしい!
浅草神社(東京都)境内にある「被官稲荷神社」の「狐みくじ」は、黄色くてかわいい狐型の紙に運勢が書いてあります。浅草神社には「夫婦狛犬おみくじ」もあり、カップルで楽しむのにおススメです。
凶を引きたくなる!?
師岡熊野神社(神奈川県)この神社では、おみくじで凶を引いてしまった場合、災難除御守りを渡してくれます。御守りほしさに、凶を引きたくなってしまうかも?
おみくじを飛ばして納める!
飛行神社(京都府)飛行原理を発見した二宮忠八翁が、飛行機事故殉難者の御霊を祀るために創設した神社。ここでは、読み終わったら“飛ばして”納める、“紙”ならぬ「神飛行機おみくじ」が有名です。
富士山好きなら……
富士山本宮浅間大社(静岡県)ご祭神である木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)をかたどった、かわいい女神の折り紙ヤッコさんおみくじ。開くと、富士山型のちりめん根付御守りが出てきます。

監修 鏑木 麻矢 さん
神社仏閣・仏像巡りを趣味とするうちに、絵馬・おみくじ・御朱印・縁起物コレクターに。神仏や縁起モノの知識にもとづく、独自の視点とユーモラスな文章で人気。(株)H.I.Sのサイト内で連載された「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」は自身のブログ「古今東西繪馬民藝愛好會々報」に全て再録されている。https://emadoujou.blog.fc2.com/

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四畳半みくじ
著者:齋藤 芽生 (著) 出版社名:芸術新聞社
運勢=尽凶、本気で男を愛した日から女神の座を逐われる……。そんな奇妙な男と女にまつわる100の運勢を収録した本邦初の〝おみくじ本〟。思い立ったら引くことができるくじ付き、これで日々の運勢を占うもよし。ユーモアと笑いに満ちた、男女の物語として読むも楽し。人気の現代アート作家が展覧会で激賞を受けた「おみくじインスタレーション」をパッケージ。新書サイズのコンパクトさが評判です。
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