海外、特に欧米系の高級ホテルやレストランを利用する際には、日本とは異なるマナーを求められることもあります。そこで今回は、観光ジャーナリストの千葉千枝子さんに、海外でスマートに過ごすために、覚えておきたいマナーについて伺いました。
海外のホテルの中でも、デラックスホテルやラグジュアリーホテルと呼ばれる高級ホテルでは、スタンダードなホテルとは異なるマナーを求められることがあります。
おさらいも兼ねて、まずは基本のチェックインから。ホテルに到着したら、レセプションでチェックインを行います。受付のスタッフに“Check in, please”と告げて、予約確認書を提示してください。
旅行会社を利用している場合は、旅行会社から渡される書類。ネット予約の場合は、予約した際に自分でプリントアウトすることをお忘れなく!
チェックイン時には、デポジット(保証金)の代わりにクレジットカード、そしてパスポートの提示も求められるのが一般的です。エグゼクティブフロアを予約した場合には、専用ラウンジでチェックインを行うこともあります。
また、チェックアウトの場合には、ミニバーを利用していたら部屋に備え付けの利用票を必ず渡しましょう。支払いの前には、勘定書に必ず目を通し、間違いがないかを確認してください。なお、客室内の固定電話などを利用した場合は、通話記録もチェック。金額が了承できたらサインをして、カードか現金で支払います。
チップの習慣は国・地域によって異なります。チップの習慣があるのは主に欧米で、アジアのほとんどの地域では不要とされているのです。ただし、上海やバンコクなどの大都市にある一部のホテルでは、チップを払ったほうがスマートなケースもあります。
例えば、ポーターにはカバン1個に対して、1米ドルまたは1ユーロを、部屋に届けてくれたときに渡します。また、部屋を離れて外出するときは、ピロー(枕)チップ、クリーン(清掃)チップとして、1人1米ドルまたは1ユーロを、ベッドの上のわかるところに置いてください。
高級ホテルでは、ホテル内での身なりも重要視されます。チェックイン時やレストラン利用時の服装はドアマンがチェックしていて、ジーンズやビーチサンダル、短パン等では、入館を断られることも。館内の施設を利用するときに、スリッパで歩き回るのもNGです。

高級ホテルに比べてドレスコードはユルいものの、館内を水着姿で歩くのはNGなホテルがほとんど。なお、ディナーの際には、男性は綿や麻のジャケット、女性は品のよいワンピースを着ていると対応も良くなります。
レセプションまわりやレストランの装飾などは撮影しても問題ありません。自分たちを撮ってもらう場合には、ホテルのスタッフにシャッターを切ってもらいましょう。ただし、他の宿泊者、特に水着姿などを撮るのは厳禁。レストランでの食事の際にも、食事を楽しまずに撮影ばかりしているのはマナー違反です。ひと言、“Can I take a picture?”とことわるのがスマートです。
専用ダイヤルや部屋にある注文票で頼みます。食事やドリンクが運ばれてきたら、チップを渡すことをお忘れなく。食事が済んだら、専用ダイヤルに電話すれば片付けに来てくれますが、外廊下に汚れた食器を出すのはマナー違反です。ゆっくり休みたいときは、客室内の端のスペースに置いておきましょう。
使用したタオルはベッドや家具の上に置かないこと。バスタブがある客室ならバスタブにかけておけば、「交換してください」という意思を表すことができます。パウダールームの中にランドリーボックスが設置されている場合は、そこに入れると交換してくれます。なお、バスローブは連泊のときでも交換しないホテルが珍しくありません。どこかに脱ぎ捨てておいても、フックや衣紋掛けにかけてくれます。
ホテルのレセプション、もしくは客室クリーンナップ専用ラインに電話をして、清掃に来てもらいましょう。このとき、チップは多めに渡すこと。コーヒーをこぼしたり、経血でベッドを汚したり、カーテンやじゅうたんの過度な汚れは賠償を求められることも……。うっかりであっても、正直に謝ることが大切です。
高級ホテル内のレストランでも、マナーに気を配りたいもの。冷ややかな視線を浴びないように気をつけましょう。
海外ホテルのレストランを利用する際は、事前に電話予約をしたほうがよいでしょう。時間と人数、名前を伝え、席のリクエストがあれば併せてお願いしてみましょう。
レストランに着いて予約の名前を告げれば、シートコントローラーが配席をしてくれます。どうしても窓側が良いといった希望がある場合には、配席の権限を持つシートコントローラーにチップを渡すと多少の便宜をはかってもらえることも。ただし、高級レストランでは上客のための専用シートがあり、観光客と区別される場合もあります。
レストランが高級であればあるほど、ドレスコードは厳格です。少なくとも男性はジャケット着用、女性もエレガントな服装が好まれます。靴やバッグ、アクセサリーにも気をつかうようにしてください。入店時の服装で通される席が異なる場合があるほか、予約済みであっても利用そのものを断られるケースがあるからです。あらかじめホームページやガイドブックを確認しておきましょう。
朝食のブッフェは、一度に取り過ぎないのがマナー。食べることができる分だけを取るようにします。まず、席に通されたら、食事を取りに行く前にウエイターがコーヒーを注ぎにくるのが一般的。それが席を利用している印にもなるからです。
前菜、肉・魚、パン・ごはん、デザートの順で“少しずつ取る”のがおススメ。席を立つときは、ナプキンは椅子に置いておきましょう。テーブルの上にナプキンを置くのは「食事が終わった」という合図になってしまうからです。日本人はモーニング感覚で食事を早めに切り上げがちですが、ゆっくりと1~2時間楽しんでも問題ありません。
酔って大声で騒ぐなどの行為が厳禁なのは言うまでもありません。アルコール類は、食事よりも先に、メニューで選びます。シャンパンやビールといった発泡性のある飲み物を先に選び、ワインは肉料理には赤、魚料理には白をオーダーしましょう。
ワイン選びに迷ったとき、ソムリエにおススメを聞くと、英語やフランス語での詳しい説明になって余計に困ることも……。語学が得意でない方は、値段と赤・白のタイプをある程度絞り、“Which one?”と相談すれば、料理に合わせて選んでくれますし、ソムリエの顔を立てることもできます。
アラカルトでも、一般的には、前菜に始まり、珍味、肉・魚料理、ライス・ヌードルの順に食べるのがルールです。気さくな雰囲気のカジュアルレストランでは気にすることはありませんが、オーダーの順番を頭に入れておくと、相手をエスコートするときにも安心。フランス料理のお店では、どんどん料理を勧められることがありますが、そこまでたくさん食べられないときは“Enough”などと伝えてください。
カトラリーを落としてしまったときは、自分で拾わないように。ウエイターを静かに呼んで、片付けてもらうように指示しましょう。目で合図をすれば、会食する相手にもわからないように交換してくれることもあります。クロスや床を汚してしまった場合には、会計時にチップをはずむようにしましょう。
会計はテーブルチェックが基本。“Check, please.”と伝えて、会計書を持ってきてもらい、会計が完全に済んでから席を立つようにしましょう。

レシートを入れた紙ばさみに、総額の10%程度のチップをはさみます。アメリカなどではクレジットカード払いのときに、チップの金額を書き込む欄があるので、ランチ15%・ディナー20%程度を目安として書き込んで決済してもらいます。
総額とチップで切りのよい額になるようにしましょう。サービスがよければチップをはずんであげるのもスマートです。

千葉 千枝子 さん
観光ジャーナリスト。中央大学客員講師・横浜商科大学兼任講師。大学卒業後、富士銀行に入行。シティバンクを経て、JTBに入社。1996年有限会社千葉千枝子事務所設立。運輸・観光全般に関する執筆、講演活動を行い、テレビ・ラジオにも多数出演。NPO法人交流・暮らしネット理事長。日本観光研究学会、日本旅行業女性の会等に所属。著書に「JTB 旅をみがく現場力」(東洋経済新報社)、「観光ビジネスの新潮流」(学芸出版社)等がある。

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