年齢を重ねるにつれ、「体が硬くなってきた……」とのお悩みを持つ人は多いはず。人間は年をとるほど体が硬くなり、特に冬場は寒さで体がこわばりがちです。そこで今回は、体がほぐれて代謝アップも期待できるストレッチの方法を、ヨガインストラクターの相楽のりこさんに教えてもらいました。
ストレッチを行うと、どんなメリットがあるのでしょう?

赤ちゃんの頃は誰でも体が柔軟ですが、大人になるにつれ、緊張したり驚いたりする経験が重なり、体がこわばり、硬くなっていきます。しかし、深い呼吸を意識しながらストレッチを行うと、体がリラックスして筋肉も柔軟になってきます。肩甲骨を開くポーズなどを実践することで姿勢も良くなり、いっそう呼吸が深くなる好循環ができあがるのです。
筋肉の種類は、白い筋肉(速筋)と赤い筋肉(遅筋)の2つに分けられます。速筋は呼吸を止めた無酸素の状態でトレーニングするとつく筋肉。ボディビルダーのようなムキムキした太い筋肉がこれにあたります。一方、遅筋はゆったりとした呼吸をしながら行う有酸素運動時につく、細くしなやかな筋肉です。脂肪をエネルギーに変え、代謝を高めてくれるのはこの遅筋。ストレッチを行うと遅筋が鍛えられるため、自然と太りにくい体質を手に入れることができます。
重要なプレゼンテーションなど、大きな仕事に臨む時は、本来の力を十分に発揮したいもの。しかし、そんな時ほど緊張して体がこわばり、呼吸も浅くなってしまいがちです。人間の心と体は一体ですから、呼吸を整えれば自然と心も体もリラックスします。ストレッチを習慣にすれば、深い呼吸を日常的に行えるようになり、気持ちをコントロールできるようになるのです。
体がほぐれて代謝アップも期待できるストレッチの方法をご紹介します!
ストレッチを行うにあたって重要なのが「呼吸」です。お腹と胸の両方で呼吸をするイメージで、お腹から息を吸い、だんだんと胸に向かって吸い上げていくと十分な呼吸ができます。呼吸のコツは「細く長く」すること。前に体を倒したり、体を丸める時には息を吐き、胸を開く時には息を吸うと覚えましょう。例えば、前屈して戻る場合は、体を倒した時に息を吐いて、戻る時に息を吸います。
- 背筋を伸ばして床の上に座り、右足の膝を立ててクロスさせます。
- ①の体勢から左足の膝を曲げ、両足の裏を天井に向けます。次に、足の裏を両手でつかんで腰を起こし、両膝が上下で重なり合った状態で再び腰を下ろします。坐骨に均等に体重が乗るように意識しましょう。
- 両足をクロスする②の姿勢ができない人は、左足を伸ばしたまま、右足のかかとを左側の腰に引き寄せます。
- ②の姿勢から、肩の力を抜いて胸を張ります。次に、左手を天井に一度伸ばしてから肘を曲げ、背中につけます。右手で左肘を引き、体を伸ばしましょう。後頭部は左手に乗せるイメージで、顔は真っすぐ正面を向くようにすることもポイントです。
- 息を吐きながら右手を下げ、背中側で左手をつかみます。右手で左手をつかめない場合は、タオルなどを利用してもOKです。この姿勢のまま背筋を伸ばして顔を上げ、息を吐きながら両手を引っ張るようにして5~7回呼吸を繰り返します。反対側も同様に行いましょう。
- 四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸めます。両側の肩甲骨を天井に近づけるイメージで、肩甲骨を伸ばしたり縮めたりします。
- お尻を上げたまま、息を吸って胸を開き、顎を上げて喉を伸ばします。鎖骨を押し出すようにしながら、5~7回呼吸を繰り返しましょう。
- 四つん這いの状態からつま先を立てます。そのままお尻をかかとに近づけます。
- ①の姿勢からお尻を天井に突き出して、膝の裏を伸ばします。息を吐きながら、かかとが床にベタッとくっつくようにしましょう(つらかったら軽く膝を曲げてもOKです)。体の重心はかかとに乗せ、手の平で床を押すようなイメージで行うと、お腹・背中・足がよく伸びます。そのままの姿勢で5~7回呼吸を繰り返します。
- ②の体勢に移る時、手がつっぱり、腰が引けてしまう人がいます。こうなると、足にも手にも余計な力が入ってしまい、全身のストレッチになりません。
- 正座の姿勢から、後ろに手をつきます。
- ①の姿勢から膝を立てていき、5~7回呼吸を繰り返します。
- 足を大きく開き、左足のつま先を体と平行にします。右足のつま先は体と90度の角度になるようにして、骨盤を正面に向けます。
- 両手を肩の位置まで水平に上げ、股関節を固定させます。次に、左手を誰かに引っ張られているようなイメージで伸ばし、上半身をスライドさせます。
- ②の姿勢から上半身を倒し、左手を床か足の甲に置きます。顔を天井に向け、5~7回呼吸を繰り返します(反対側も同様に)。
- 正座の姿勢から上半身を前に倒して手を床につけます。次に、でんぐり返しをするイメージで頭頂部を床に当てます。この時、首や肩に力が入らないように気をつけましょう。
- ①の姿勢から背中の後ろで両手を組み、天井に向かって伸ばします。そのままの姿勢で5~7回呼吸を繰り返しましょう。
- 両手を床に下ろして、上半身を前に倒した姿勢に戻ります。
- 床に仰向けに寝た状態で両手を背中の下に入れ、肩甲骨を寄せるイメージで脇を締めます。この姿勢のまま、1回息を吐きます。
- 肘で床を押して胸を高く上げ、頭頂部を床につけます。息を吸いながら顎を天井に突き出し、5~7回呼吸を繰り返します。
- 仰向けの姿勢に戻り、両膝を手で抱えて体を左右に揺らします。背中をマッサージするようなイメージで、体を伸ばした時間と同じ長さでクールダウンしましょう。

監修 相楽 のりこ さん
ヨガインストラクター/1980年東京都生まれ。幼少時代から器械体操の選手として活躍。ほかにも水泳やスキーなどさまざまなスポーツをした経験から、ストレッチの重要性と心身の変化を実感し、タレント・女優を経て、ヨガのインストラクターに。現在、代々木ビレッジ「body kurkku」や代官山 スタジオ「avity」でレッスンを行っている。
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