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おとなの補習時間

日本人の「平均寿命」は男性で約80歳、女性で約87歳と、世界トップクラスであるものの、日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる「健康寿命」は、男性で約70歳、女性で約73歳と言われています。もし、家族に介護が必要となったとき、私たちはどうすればよいのでしょうか。そこで今回は、介護ジャーナリストの小山朝子さんに、いざというときに慌てないための“介護のキホン”を教えてもらいました。

基礎編

「超高齢社会」と言われる日本。まずはその現状と介護保険制度について学びましょう。


“超高齢社会”日本の現状は?

高齢化の指標はWHO(世界保健機関)によって明確に分けられています。これによると、総人口の中で65歳以上の人の割合が7%超で「高齢化社会」、14%超で「高齢社会」、21%超で「超高齢社会」とされています。日本は高齢化社会から高齢社会になるまでのスピードが極めて速く、先進国でもっとも速かったドイツの42年間に比べて、24年間しかかかっていません。2007年には超高齢社会に突入し、類を見ない速さで高齢化は進行しています。そのため日本は、世界から超高齢社会のモデルケースとして注目されているのです。

日本の「介護保険」ってどんな制度?

核家族化や女性の社会進出により、家庭だけで介護負担が担えなくなったことなどを受け、介護が必要な人が状態に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要なサービスの給付を行う「介護保険制度」が2000年4月からスタートしました。40歳以上のすべての国民が加入します。介護保険を受給できるのは、65歳以上で支援や介護が必要な人か40歳以上で末期がんや関節リウマチ等の加齢に起因する疾病にかかった人。現金支給ではなく介護サービスによって提供されます。

介護サービスを利用するための流れとは?

7段階に分かれる要介護度とは?

上の表内の「要介護認定」の結果、支援や介護が必要と判断された人は、それぞれの健康状態に合わせて7段階の要介護度に分けられます。要介護度により、サービス内容や介護保険の支給限度額も変わってきます。

※保険者(市区町村)により限度額が異なる場合があります。(金額は2014年10月末現在のもの)

介護サービスを受けるために必要な「ケアプラン」とは?

要介護認定で要介護と認められて自宅介護する場合、居宅介護支援事業所に在籍するケアマネジャーが介護計画(=ケアプラン)を作成。このケアプランによって、週にどれくらい訪問介護や訪問入浴を行うかなどの介護方針が決められるため、ケアマネジャーは利用者の心身状態をしっかりと把握し、家族からも信頼される存在であることが求められます。言い換えれば、利用者や家族にとって、居宅介護支援事業所選びはとても重要になります。そのために、介護サービス情報公表システムや福祉サービス第三者評価制度(※)を利用して信頼できる事業所を選びましょう。

[ 介護サービス情報公開システム]www.kaigokensaku.jp
※福祉サービス第三者評価制度
中立的な第三者である評価機関が、事業者と契約を締結し、サービスの内容、組織のマネジメント力等の評価を行い、その結果を公表する仕組みです。

 

実践編

実際に身近な人に介護が必要になったとき、どんなサービスが受けられ、どれだけお金がかかるのでしょうか。


自宅介護と施設介護の違いは?

自宅介護

居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーが作成したケアプランに基づき、住み慣れた自宅で生活しながら介護サービスを受けることができます。サービスは主に、自宅で受けられるサービス、利用者が通って受けられるサービス、福祉用具のレンタルなどがあります。

施設介護

施設のケアマネジャーが作成したケアプランに基づき、生活の場を施設に移して介護サービスを受けるものです。施設内では24時間介護サービスを受けられますが、施設によって入居条件等が異なります。

※月額利用料は目安で、実際とは異なる場合があります。
※月額料出典:『週刊ダイヤモンド臨時増刊 介護&老後大事典』

介護にはどれくらいのお金がかかるの?

「家計経済研究所」によると、自宅介護の支出の内訳は、訪問ヘルパーやデイサービスの利用など介護保険による介護サービスの費用と、医療費やおむつ代などの費用が主です。介護サービスの支出は月額平均3万7000円。一方、介護サービス以外の支出は、月額平均3万2000円。両者をあわせた費用の合計は、月額平均6万9000円となっています。施設介護の支出は上の表が目安。有料老人ホームなどの場合、入所一時金が必要なところが多いです。

「2025年問題」と介護失業の実態とは?

団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、国民の4人に1人が高齢者となる「2025年問題」が懸念されています。一人っ子や非婚者の増加で、子どもが1人で両親を介護することも珍しくなくなり、会社で管理職にあたる世代が働きながら介護できるかが問題視されているのです。総務省の「就業構造基本調査」(2007年)によると、介護離職者は2002年10月からの5年間で56万8000人。離職後、働いていない人は40万4000人にもなります。今後、社会の中心となって働く人が、介護によって離職することを避けるためには、どんな対策が講じられているのでしょうか。
一部の進んだ企業では、時差通勤やフレックス通勤、介護資格取得制度などの整備が進められています。国でも「育児・介護休業法」が施行され、要介護状態にある家族1人につき通算93日間、仕事を休めるようになっています。しかし、実際に休暇をとっている人の割合は1%程度だという調査結果も。高齢化がさらに進んでいく中で、介護離職を避けるためにも、こうした制度をスムーズに利用できる社会づくりを進めていく必要があります。

 

身近な人に介護が必要になったとき、まずどうすればいい?

実際に親や配偶者に介護が必要になったとき、しておきたいことが頭の中の「整理」です。今後、どう関わっていくのか、自分と向き合う時間を持ちましょう。そのうえで、経済的・環境的な現状を書き出し、自宅介護できるのか、施設介護にするのかを決めます。兄弟や子どもがいる場合、誰がどんな役割を担うのかも話し合いましょう。こうすることで、大切な人の介護をするときに、自分にとって正しい選択ができるはずです。

監修 小山 朝子 さん

介護ジャーナリスト、介護福祉士。東京都生まれ。20代から9年8カ月、洋画家の祖母を介護した経験をもとに、当事者・ジャーナリスト・介護職の視点から各地で講演。執筆活動のほか、テレビや雑誌等で解説・コメントも多い。最新刊「ワーク介護バランス」(全3巻)は来年2月に発売予定。

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