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世界に影響を与え続ける大都市ニューヨーク
vol.127

“うをのぞき”からアイデアものまで
日本の水族館の世界

海や川の生き物を飼育し、一般に広く公開する水族館。大小さまざまな水族館が100以上あるといわれる日本は、世界的に見ても水族館大国! デートや家族のレジャースポットとして根強い人気を誇り、技術の進歩から新設も相次ぐ日本の水族館のトリビアをご紹介します。

上野のお山で「うおのぞき」

 日本初の水族館とされているのが上野動物園の付属水族館です。明治維新後、日本初の公園のひとつとなった上野の山には、明治15(1882)年3月に文部省系の教育博物館(現在の国立科学博物館)が建てられ、付属施設として動物園(現在の上野動物園)が併設されました。
 それから半年後にオープンしたのが、「観魚室」と書いて「うおのぞき」と読ませる水族館。どんな施設だったかというと、長方形の建物の片側の壁に10個の水槽が並んでいて、観覧通路は暗く、屋外から水槽に差し込む自然光が照明の役割を兼ねていたそうです。
 飼育されていたのは金魚、フナ、コイ、サンショウウオといった淡水生物で、飼育用水は江戸の主要な上水道のひとつ、千川上水を利用していました。また、マハタ、ボラ、ヤドカリ、イソギンチャクなど海の生き物の飼育にも挑戦し、その際は満潮時の隅田川から汲んできた海水を使っていたといいます。
 動物園にはその後も海水魚を飼育する海水水族館や水族爬虫類館が併設されましたが、平成元(1989)年10月、葛西臨海公園内で東京都葛西臨海水族園が開園したのに合わせてその役割を終えました。

造船業の技術が生んだ水族館

 今年(2023年)5月、神戸市立須磨海浜水族園がリニューアルのため閉館しました。前身の須磨水族館と合わせて、水槽や生き物の数だけにとらわれず、海洋生物の行動生態など“自然の生き様”を見せるというコンセプトや社会教育活動にも力を入れる姿勢は、今日の水族館の発展に大きく影響したといいます。
 同館のルーツを辿っていくと、日本の水族館黎明期に誕生した和田岬水族館に行き当たります。和田岬水族館は、第2回水産博覧会附属水族館として明治30(1897)年に開館しました。神戸の先進的な造船技術を用いて飼育設備に濾過槽を導入し、濾過槽、貯水槽、展示水槽を結ぶ濾過循環系を日本で初めて確立。展示計画や生き物の採集・運搬・飼育など、和田岬水族館で形成されたノウハウはのちの水族館の基本にもなったそうです。
 博覧会の会期終了後は、神戸市の湊川神社境内に移転。その流れを継いだ湊川水族館が戦火により焼失しますが、戦後は神戸市立須磨水族館として生まれ変わり、昭和62(1987)年に須磨海浜水族園としてリニューアルオープンしました。現在、同館は民設民営の水族館として再整備が進行中。新しくシャチの展示が予定されていて、実現すれば鴨川シーワールド(千葉県)、名古屋港水族館(名古屋市)に次いで3番目、西日本で唯一シャチを見ることができる水族館になります。

ショー的水族館の先駆けは?

 イルカやラッコのパフォーマンスといえば、かつては水族館の集客の目玉でしたが、ラッコは近年、国際的な保護の機運が高まり、国内での繁殖が難しいことも背景に、国内で飼育されているのは、福岡県のマリンワールド海の中道の1頭と、三重県の鳥羽水族館の2頭のみ。イルカのようなクジラ類も保護の観点から世界的にはショーで集客するという考えに厳しい目が向けられていて、都内で初めてイルカショーを導入した品川区のしながわ水族館が30年以上続けてきたイルカショーの廃止を総合的な理由から決めたと発表しています。
 転機を迎えているイルカショーは、もともと1930年代ごろからアメリカの水族館で興行的に行われていたもの。それを日本で初めて取り入れ、日本人とイルカとの距離感を一気に縮めたのが昭和32(1957)年5月にオープンした江ノ島マリンランドです。
 江ノ島水族館(昭和29〈1954〉年7月開館)の2号館として誕生した同館以前にも、国内の水族館でバンドウイルカやゴンドウクジラの飼育例はありましたが、クジラ類専用の水族館として開館した江ノ島マリンランドは大規模なプールを整備し、彼らのパフォーマンスを本格的に見せることに成功した先駆け。ちなみに、最初に飼育したのはバンドウイルカよりひと回り小さなカマイルカだったそうです。

街中の水族館を支える人工海水技術

 日本初の都市型水族館・サンシャイン国際水族館(現在のサンシャイン水族館)は昭和53(1978)年10月、池袋副都心再開発構想で誕生した大型複合施設・サンシャインシティの教育文化施設として開館。地上約40メートルの高層ビル屋上に設置されるという世界で類を見ない水族館として話題になり、1980年代にはラッコやウーパールーパーなど珍しい生き物の展示でも人気スポットになりました。
 こうした海から離れた街中の水族館でネックになるのが、海洋生物の飼育に欠かせない海水の確保です。水族館では大量の海水を使うため、多くは海に面したところに建てるもの。サンシャイン水族館では伊豆諸島の八丈島近海の天然海水を船やトラックを使って運搬し、地下の貯水槽に蓄えて使用しているそうですが、天然海水を一切使わない日本初の“人工海水100%”の水族館として注目を集めたのが平成24(2012)年3月開館の京都水族館です。
 京都水族館では塩化ナトリウムやマグネシウムなど自然の海水が持つ要素を凝縮して粉末にした“海水のもと”を水で希釈し、その濃度を調整することで魚や海獣に適した海水を再現しています。天然海水に比べて不純物が少なく、運搬にかかるエネルギーやコストも削減できるのだそう。京都水族館の開業から2カ月後、東京スカイツリーに隣接する商業施設でオープンしたすみだ水族館も人工海水だけを使った水族館のひとつ。人工海水の技術向上で、今後も内陸部の街中に水族館が設置されるケースが増えていきそうです。

水族館が直面する2020年問題って?

 日本初の水族館をルーツに持つ葛西臨海水族園は、世界唯一のマグロの群泳水槽を持ち、世界で初めて陸上水槽でクロマグロの産卵に成功した施設としても知られています。そんな同館をはじめ、現在、国内の多くの水族館が直面しているのが水族館の「2020年問題」です。一般的に水族館の改修目安時期は30年とされていて、1990年代に開館した施設の多くが改修のタイミングを迎えています。ただし、配管や濾過装置、水槽の改修には全面的な建て替えが必要となり、費用が建設費に匹敵してしまうケースもあるほどなのだそう。
 そんな先が見えない時代に、新たなアイデアで集客を成功させている水族館も多くあります。たとえば愛知県蒲郡市の竹島水族館。昭和31(1956)年開館の歴史ある水族館は近年、廃館寸前の客足の少なさだったものの、飼育している生き物に触れられるタッチプール、魚の生態や飼育員しか知らない裏話を紹介する手書きの「魚歴書」「解説カンバン」の設置、来館者が目標数に達しなければスタッフが丸刈りになるという宣言(!)などが話題となり、最近では深海生物のオオグソクムシのお土産も人気を集めています。
 福島県沖で出合う黒潮と親潮の潮目を表現する大水槽やトンネルで知られるアクアマリンふくしまは、敷地内の“釣り場”でアジ釣りを楽しめ、釣った魚はその場で唐揚げにして食べられるユニークな体験プログラムも実施。楽しみながら自然や命の大切さを学ぶことができる施設としても人気を呼んでいます。

CGやAIなどの最新技術も導入する施設の登場など、時代の潮流の変化に合わせて進化を続ける水族館。これからはどんな水族館が登場するのでしょう?

参考文献(順不同)
鈴木克美『ものと人間の文化史 113 水族館』(法政大学出版局)/溝井裕一『水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』(勉誠出版)/中村元『全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド』(講談社) 等

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