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日本の超高層ビル半世紀
vol.119

高さ400メートルも現実に!
日本の超高層ビル半世紀

地震大国の日本で100メートル以上の超高層ビルは実現不可能——そんな常識を覆して、1968年に誕生したのが高さ147メートルの霞が関ビルディングでした。それから半世紀以上、新たな時代を迎えつつある日本の超高層ビルの軌跡をたどります。

かつては日本一だった! 日本政治の中心地

 霞が関ビルディングの誕生で日本の超高層ビルの歴史が幕を開ける以前、長らく日本一の高層建築物の座に君臨していたのが、日本政治の中心地である国会議事堂です。
 1936年に完成した国会議事堂は、建築物が100尺(31メートル)の高さ制限を受けていた時代に、特例で最高部の高さは65.45メートル! 1964年に高さ72メートルのホテルニューオータニが完成するまでの約30年間、日本一を誇っていました。

明治時代、もう一つの名物建築

 国会議事堂の完成よりさらに前、文明開化の流れで天守などの城郭が解体され、建物の西洋化が進んだ明治時代には、高いところからの眺望を楽しめる望楼建築ブームが大阪から起こりました。
 「雲を凌ぐほど」の高さで望楼建築の代表格になったのが、1890年、東京・浅草に登場した浅草凌雲閣。高さは約52メートル。12階建てのため「浅草十二階」と呼ばれ、その姿は大ヒットアニメ『鬼滅の刃』でも描かれています。
 50メートルを超える建築物が珍しかった時代に、富士山から箱根まで一望できる眺めは評判を呼び、多くの見物客が訪れましたが、徐々に人気は下火に。関東大震災では上層階が崩落し、最後には爆破処理されてしまいました。

東京駅がきっかけ? 日本初の超高層ビル誕生

 地震大国の日本で100メートル超の超高層ビルを建設するためには、優れた耐震技術が欠かせません。その技術確立のきっかけとなったのが、高度成長期の日本に浮上した東京駅丸の内駅舎の建て替え計画でした。
 1958年、まだ31メートルの高さ制限が存在していた時代に、国鉄総裁でのちに「新幹線の父」と称される十河信二から、赤レンガ造りの駅舎を24階建ての高層ビルに建て替える計画案が示されました。そこで、建築構造学者で耐震設計の第一人者・武藤清東京大学教授を中心とする研究委員会が組織され、前代未聞のプロジェクトの検討が始まったのです。
 結果的に建て替え計画そのものはたち消えになってしまいますが、研究のおかげで高層建築技術の見通しが立ったことで、大正時代から続いていた高さ制限が見直され、霞が関ビルディング建設の足がかりとなりました。
 当時、武藤らが着目したのが五重塔。地震が多い日本で倒壊した記録が残っていない高層木造建築物の構造をヒントに、あえて建物を揺らすことで地震の揺れを逃がす「柔構造」なら超高層化が実現できると明らかにしたといいます。

高さは2倍に! 超高層ビル早見表

 1970年代以降は数多くの超高層ビルが誕生し、100メートル超えの超高層ビルはいまや1000棟以上に上るそう。主なビルの変遷を振り返ってみましょう。

1960〜70年代

  • 霞が関ビルディング

    [東京・霞が関/1968年竣工/高さ147m/
    地上36階]


    超高層ビルの先駆け。日本で初めて100メートルを超えました。

  • 神戸商工貿易センタービル

    [神戸・浜辺通/1969年竣工/高さ107m/地上26階]


    神戸港開港100年の記念事業で誕生。西日本初の超高層ビルです。

  • 新宿住友ビルディング

    [東京・西新宿/1974年竣工/高さ210m/地上52階]


    日本初の200メートル超。西新宿の超高層ビル街の草分け的存在。

  • サンシャイン60

    [東京・池袋/1978年竣工/高さ240m/地上60階]


    巣鴨プリズン跡地に誕生。“東洋一”の展望台には連日大行列ができました。


1980〜90年代

  • 工学院大学新宿キャンパス

    [東京・西新宿/1988年竣工/高さ133m/地上28階]


    高層ビルをキャンパス化した高層ビル校舎の先駆者です。

  • 東京都庁第一本庁舎

    [東京・西新宿/1990年竣工/高さ243m/地上48階]


    旧都庁舎からの引っ越しは、規模の大きさから“平成のミニ遷都”と称されたほど。

  • 横浜ランドマークタワー

    [横浜・みなとみらい/1993年竣工/高さ296m/
    地上70階]


    横浜のランドマーク。あべのハルカス登場まで日本一の高さでした。

  • 群馬県庁舎

    [群馬・前橋/1999年竣工/高さ153m/地上33階]


    都道府県の庁舎として都庁に次いで2番目。県庁としては日本一です。


2000年代〜

  • モード学園コクーンタワー

    [東京・西新宿/2008年竣工/高さ203m/
    地上50階]


    繭のような斬新なフォルム。3つの専門学校が入る日本一の高層ビル校舎です。

  • クロスタワー大阪ベイ

    [大阪・弁天/2006年竣工/高さ200m/地上54階]


    総戸数は456戸。タワーマンションとして初めて200メートルを超えました。

  • ミッドランドスクエア

    [名古屋・名駅/2006年竣工/高さ247m/地上47階]


    名古屋駅直結。中部地方で最も高い超高層ビルです。

  • あべのハルカス

    [大阪・阿倍野筋/2014年竣工/高さ300m/地上60階]


    日本で初めて300メートルに達し、2023年2月現在、日本一の高さを誇ります。

そういえばどうなっている? 超高層ビル豆知識

建設の要、クレーンの上げ下ろしテクニック

 超高層ビルの建設に欠かせないタワークレーン。建設途中のビルを眺めているとふと疑問に思うのが、あれほど大きなタワークレーンをどうやって持ち上げて、ビルの完成後は地上に下ろすのか。大手建設会社や管工機材メーカーのホームページによると、クレーンの持ち上げ方法も下ろし方もそれぞれ2種類。持ち上げ方法は、クレーンを支えている台座ごと上がっていく「フロアクライミング方式」と、マストと呼ばれる支柱を自ら上部に継ぎ足して上がっていく「マストクライミング方式」があります。

 反対に、クレーンを下ろす方法は、屋上にある大型クレーンでひと回り小さい中型クレーンを組み立て、その中型クレーンを使って大型クレーンを解体し、続いて中型クレーンでさらに小さな小型クレーンを組み立て、その小型クレーンで中型クレーンを解体、最後には小型クレーンを人力で解体・撤去するという“二人三脚”的な方式と、マストクライミング方式と逆の順序で、マストを1つずつ取り外す作業を繰り返してクレーンを地上近くまで下ろし、仕上げに地上のクレーンで解体・撤去する方法があるといいます。

イライラは過去の話? エレベーターもスマート化

 屋上で解体したクレーンの部材の撤去にも使われるエレベーター。ビルの骨組みができたらすぐに取り付けられ、工期の初めから竣工後に至るまで超高層ビルになくてはならないものですが、近年進められているのがエレベーターのスマート化です。
 例えば、ドアに挟まれる事故を防ぐために取り付けられている安全装置。閉じつつあるドアに人体が接触したり近づいたりすると挟まないように反転するだけでなく、ドアに向かってくる人=エレベーターに乗りたい人と、ドアの前を通過する人=エレベーターに乗らない人を画像解析で判断し、ドアの開け閉めをコントロールする技術も生まれています。
 また、エレベーター渋滞を解消するために、ビルのセキュリティゲートなどから得られる入退室情報をもとに、利用者をスムーズに誘導して待ち時間を減らす技術も実用化されています。

夜空を照らした激励の窓文字

 クリスマス、年越しのようなイベントやプロモーションに使われる窓文字。高層ビルのたくさんの窓と室内照明を利用して、離れたところから見るとメッセージや絵が描かれているように見せる演出ですが、多くの人々の心に寄り添うために活用されることも。
 1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災で自らも被災したホテルオークラ神戸は、震災からひと月後の営業再開を前に「ファイト」の文字をライトアップ。2011年の東日本大震災でも「ファイト」や「日本」の文字を描きました。
 ホテルオークラ神戸と同じ神戸市中央区にある神戸関電ビルディングは、2005年から毎年1月17日に「1.17」とライトアップするかたちで、震災の記憶を語り継いでいます。

超高層ビルはどこまで伸びる

 現在、世界一の高層ビルは高さ800メートル超。サウジアラビアの大都市ジッダで建設が進められているジッダタワーが完成すれば、1000メートルを超える“超々高層ビル”がとうとう実現します。日本の超高層ビルは環境や航空法などの規制から、高さで世界と肩を並べることは難しいものの、この先、どこまで成長していくのでしょう?
 まず、今年2023年にはあべのハルカスを抜いて日本一の高さとなる地上64階、高さ330メートルの超高層ビルが東京・虎ノ門に誕生予定。2027年度には、東京駅前で地上63階、高さ390メートルのトーチタワーの竣工も予定されています。
 日本屈指の超高層ビル街を抱える新宿は200メートル超えの建設ラッシュで、来たる4月には地上48階、高さ225メートルの東急歌舞伎町タワーが開業予定。2022年に営業を終了した小田急百貨店新宿店本館跡地には、2029年の開業を目指し、地上48階、高さ260メートルの超高層ビルの準備が進められています。

木造の超高層ビル誕生も間近

 東京・丸の内では木造の超高層ビルが2028年に竣工予定です。地上20階、高さ100メートルのビルの柱や床には、戦後に植えられ利用期を迎えているという国産の木材がふんだんに使われる予定で、木の使用量も世界最大規模になる見込み。自然環境や地域循環型経済に寄与する新しい時代の超高層ビルの一つとして、注目を集めそうです。

200メートル超えはより身近に、400メートルも射程圏内に入り、環境に配慮したコンセプトの超高層ビルも誕生間近。日本の超高層ビルはさまざまな制限をクリアしながら確実に進歩を続けています。

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