魅惑の腕時計

19世紀初頭、女性用の装身具として生まれた腕時計は、二度の大戦を経て高機能化が加速し、今でも進化を続けています。今月の「Trace」は身近な腕時計の変遷について追ってみました。

戦争が“量産”の始まりに?

人々が時計を持ち歩くようになったのは、技術の進化で時計の小型化が進んだ17世紀頃といわれています。はじめは懐中時計、そして19世紀に入ると腕に装着する腕時計が登場するものの、当時はまだ王族、貴族など一部の特権階級の持ち物で、腕時計の普及には戦争が大きく影響したそうです。
19世紀後半は通信技術の発達などにより、決められた時刻に合わせて作戦を実行する“近代戦”に戦争が様変わりしました。そのため、懐中時計のようにポケットからいちいち取り出す必要がなく、両手をふさぐ心配もない、瞬時に時刻を確認できる腕時計が戦場で重宝されたのです。1880年、ドイツ皇帝、ヴィルヘルム1世が海軍将校用にと2000個の腕時計をジラール・ペルゴーに製作させたのが、“腕時計量産”の始まりとされています。

ジュエリー、それとも腕時計?

19世紀初頭には、宝飾品のような腕時計も存在しました。現存する中で最古とされているのが、1806年にナポレオン皇帝が皇妃ジョゼフィーヌのために、パリの時計宝飾師二トーにつくらせたもの。ブレスレットに小型の時計を付けた特注品でしたが、時刻を確認するには少々小さく精度もいまいちだったせいか、腕時計普及の契機にはならなかったようです。

自動巻きの登場で使い勝手も精度も向上

第一次世界大戦をきっかけに、精度や耐久性に優れた軍用腕時計が開発された20世紀前半。腕時計の普及に拍車をかけたのが、腕に付けていれば自動でゼンマイが巻かれる自動巻き腕時計の誕生です。
最低でも1日に1度はゼンマイを巻く必要があった手巻き式と比べて、使い勝手や精度に優れた自動巻きの機構は、懐中時計が多く使われていた18世紀にスイスのアブラアン・ルイ・ペルレが初めて考案したとされています。その後、“時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチ”と謳われた天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲが精度を高めた機構を開発するものの、懐中時計全盛の時代にはあまり注目されなかったそう。
1926年、自動巻きの腕時計をスイスのフォルティスが初めて発売すると、各時計メーカーもさまざまな方式の自動巻き機構を開発。1930年頃には腕時計の単価も下がって庶民にも手が届くようになり、懐中時計の生産数を上回ります。女性向けのコンパクトなサイズのものから斬新なデザインのものまで、実用的、そしてファッションアイテムとしても楽しめる腕時計が広まっていくのです。

世界が震撼した“クオーツショック”

自動巻き腕時計の登場から約40年後、腕時計の世界に再び大きな変化を与えたのがクオーツ腕時計です。それまでの機械式腕時計は誤差が生じるのは当たり前でしたが、電圧をかけると一定の振動を繰り返す水晶を使ったクオーツ腕時計は、1日にわずか0.2秒しか誤差が生じず、電池式腕時計の課題だった電池の寿命も1年以上と改善されました。
世界初のクオーツ腕時計を開発したのは日本のセイコー。1969年12月25日、アストロンと名付けられた腕時計が東京とニューヨークで発売されると「時計の革命がスイスではなく日本で起きた」と報じられたほどで、18金製で45万円と当時の国産乗用車に匹敵する価格でしたが、その最新機能は世界を席巻しました。また、セイコーは腕時計の開発で考案したさまざまな特許を公開し、世界規模での開発競争に拍車をかけたことで、スイスなどの高級機械式腕時計メーカーは壊滅的な打撃を受け、当時全盛を誇っていたアメリカの時計メーカーに至ってはほぼ全滅という事態になったそう。

10年でタンスが手のひらサイズに

水晶に電圧をかけると高い振動数で震えるという現象は、キュリー夫人の夫ピエールとその兄ジャックによって1880年に発見されていました。1927年には、アメリカのウォーレン・マリソンが水晶時計の試作品を製作したものの、ひと部屋分ものスペースと特殊な設備が必要だったそう……。また、1959年にはセイコー(当時は精工舎)が国内の放送局へ商業用水晶時計を納入しましたが、こちらもタンスほどの大きさがあったといいます。それからわずか約10年で技術的な壁を破り、腕に収まるサイズに進化したのです。

腕をかざせばテレビも見られる!?

クオーツ腕時計が市場を席巻した1970年代には、LED(発光ダイオード)やLCD(液晶ディスプレイ)を使ったデジタルウオッチも登場しました。物珍しさから高値でも即日完売するモデルがあるほどの人気でしたが、LEDは消費電力の大きさや故障の多さなどからやがて下火になり、一方のLCDを使ったデジタルウオッチは各メーカーで開発競争が繰り広げられ、価格も手ごろなものになっていきました。
瞬時に時刻を読み取れるデジタル表示は、忙しい毎日を送る現代社会の人々から多くの支持を得たものの、極端な低価格化やデザインの簡素化が影響してか、1980年代に入ると人気は下降。ただし、クロノグラフやアラーム、カレンダー、世界時計などの多機能化で新たな顧客を開拓し、1982年にセイコーが発売した、LCDにテレビの映像を映し出せるテレビウオッチは「世界最小のテレビ」としてギネスブックに登録され、10万円という価格ながら爆発的に売れたといいます。

精密機器はショックに…強い!!

電子化によって、気温、気圧、水圧、脈拍、心拍、方位などさまざまなデータを計測できるようになった腕時計。20世紀も後半になると、シチズンに代表される太陽光や室内の光を電気に換えて時計を動かす光発電腕時計や、人間の体温で発電する熱発電腕時計なども登場し、ハードとしても進化していきました。
負担がかかりやすく故障しやすかった腕時計の“耐衝撃性能”も向上。特にカシオが1983年に発売したG-SHOCKは、衝撃を段階的に吸収する構造と心臓部の機械体をケースの中に宙吊りにする機構の採用で「精密機器はショックに弱い」という常識を打ち破りました。その優れた耐衝撃性能をアピールするため、発売当初オンエアされたアメリカのTVCMでアイスホッケーの“パック”として腕時計を使ったほどなんです。


天文台などの標準時を運用する機関やGPS衛星、時計メーカーでも使われている原子時計。その精度は数千万年に1秒の誤差、最先端の光格子時計となると300億年に1秒ともいわれています。近年はこの正確無比な時計を腕に収めてしまおうという開発も進められているとか。進化の止まらない腕時計の世界、次ページでは各時計メーカーのトリビアもご紹介します。

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