マラソンの歩み

観戦するスポーツとしても、アスリートだけでなく一般層が実践するスポーツとしても人気の高いマラソン。19世紀末に初めて競技化され、世界中で親しまれているこのスポーツの変遷を今回の「Trace」では探ってみました。

言い伝えから発想されました

五輪では最終日に行われ、数ある陸上競技の中でも注目度が高いマラソン。そもそも「マラソン」とは紀元前5世紀、ギリシアのマラトン平原に上陸したペルシア軍をアテナイ軍が討ち破り、その勝利を伝えるべく、若い兵士がマラトンの戦場からアテナイまでの約40キロを走り、伝令の後に絶命したという言い伝えが起源とされています。1890年代、アテネで開催する第1回近代五輪を企画する中で、この兵士の偉業と悲劇的な死を記念する競走として編み出され、1896年のアテネ五輪で初めて行われたのです。

丸裸に裸足でトラックを疾走!?

紀元前9世紀から紀元4世紀の間、4年に1度開催されていた古代五輪にマラソンはなく、5キロを競うドリコスという競技がもっとも長いレースでした。当時の選手は丸裸で競技を行っていましたから、もちろん運動靴も履いていません。足にかかる衝撃はトラックに砂を撒いて緩和していたとか……。ちなみに、長距離レース自体は近代五輪以前から行われていたもの。ヨーロッパやアメリカではプロのランナーから富豪の使用人、ブルーカラーの労働者までもが高額の賞金を狙って競い合い、6日間、昼夜をかけて行われた室内レースでは3万人もの観客を集めたといいます。

42.195キロ、実は長かった……?

マラソンの距離といえば42.195キロ(26マイル385ヤード)。これは1908年のロンドン五輪がきっかけで定められたというエピソードを耳にしたことがある人は多いと思います。それまでのマラソンは約40キロ(25マイル前後)で争われていましたが、ロンドン五輪では英国王室から「ウィンザー城からスタートし、ホワイトシティ競技場の貴賓席の真下で終わるように」と要望があったため、調整の結果、走行距離が42.195キロとなったのです。ただしこのエピソードには続きがあり、実は、そのロンドン五輪の最初の“1マイル”が174ヤード短かったのだとか。もし正しく測られていれば、現在のマラソンは42.036キロ(26マイル211ヤード)で競われていたかも?

ワイヤー、あるいは自転車で

マラソンコースの距離、現在はどのように測られているかをご存じでしょうか。日本陸上競技連盟(日本陸連)では50メートルの鋼鉄製ワイヤーを使い、路肩から30センチ離れた車道の距離を測っていくのだそう。気温が上がるとワイヤーも膨張してしまうため、計測時の気温も測って膨張率を計算、ワイヤーの張力のテンションも一定にするなどとても厳密に計測されているんです。また、AIMS(国際マラソン・ディスタンスレース協会)が定める国際規格では、特殊なメーターを付けた自転車の車輪の回転数から正確な距離を算出。こちらもタイヤの空気圧など厳格な規定があるといいます。

日本初の大会は賞金1000万円以上!!

日本で初めて「マラソン」という言葉が使われたのは、1909年3月21日に開催された「マラソン大競走」だといわれています。体格試験や予選で絞られた20人の出場選手が神戸の湊川埋め立て地から大阪の西成大橋東端までの約32キロを競ったこの大会、優勝者には現在の金額に換算すると500万円とも1000万円ともされる多額の賞金をはじめ、金時計や食器、双眼鏡、屏風など、100社近いスポンサーから豪華賞品が贈られたようです。

江戸時代にもマラソンが…

マラソン大競走より半世紀以上前の江戸時代にも、長距離レースが行われた記録が残っています。1855年、安中藩主の板倉勝明が藩士の鍛錬を目的として、安中城(現在の群馬県安中市)の城門から碓氷峠の熊野神社三社権現大鳥居までの7里(約27.5キロ)余りを徒歩競走させた「安政遠足(あんせいとおあし)」です。数え年で50歳以下の家中若侍が2人から12人の組に分かれて参加し、完走者には御神酒や茶、干しだら、力餅などが振る舞われたといいます。
1955年に着順などを記録した資料が発掘されて“日本最古のマラソン”と全国紙で報じられると、ラジオドラマや映画化され、今年(2019年)2月にも小説を原作にした映画が公開されています。また、1975年には120年ぶりにレース自体が復活。「安政遠足 侍マラソン」として、鎧甲冑の武者、編み笠の素浪人、旅芸人などに扮した仮装ランナーで現在も賑わっているんです。

ノーゼッケンに男装も!?

今ではすっかりお馴染みの女子マラソンですが、マラソンは長い間、男性だけで競われてきました。1928年のアムステルダム五輪女子800メートルで倒れる選手が続出したことなどから、20世紀初頭は女性が陸上競技で走ること自体に批判が多かったそう。
1930年代に入ると短距離を中心に女性の陸上競技が盛んになるものの、マラソンに女性が参加するようになるのはウーマンリブ活動が世界中に広まった1960年代のこと。1964年、ニュージーランドで開催されたあるマラソンレースに一人の主婦が唯一の女性選手として参加し、3時間19分33秒を記録。その2年後にはアメリカのボストンマラソンに、ロベルタ・ルイーズ・ギブスという女性ランナーがノーゼッケン(非公式)で出場し、約500人の出場選手中、126番目(3時間21分40秒)でゴールしたのです。
さらに、翌年のボストンマラソンでは、キャサリン・シュウィツアーが「K・シュウィツアー」とファーストネームをイニシャルにしてゼッケンを取得し、レースに参戦。男装で走っているところを見つかり競技役員に何度も中止を勧告されたものの、制止を振り切って完走しました。こうした出来事がきっかけとなり、1972年、世界のメジャーレースとしては初めてボストンマラソンが女性ランナーの参加を容認すると、各地で女性も参加できるマラソンレースが増加したのです。

市民ランナーにジョガーも急増!

1960〜70年代は、マラソンというスポーツそのものがクローズアップされた時代でもあります。少数のアスリートと一部のアマチュアランナーの趣味だったマラソンですが、1968年にランニングや自転車、水泳など有酸素運動を定期的に続けることが健康に良いと論じた『エアロビクス』という書籍が刊行されたことで、長距離を走ることが注目を集めるようになり、1977年には『奇蹟のランニング』が刊行され、健康目的のランニング=ジョギングを楽しむ“ジョガー”も急増しました。
日本でも1964年の東京五輪、円谷幸吉の銅メダル獲得に始まり、1965年には英国で行われたウィンザーマラソンで重松森雄が当時の世界最高記録(2時間12分0秒)を樹立、1968年のメキシコ五輪で君原健二が銀メダルを獲得したことなどからマラソンに惹き付けられる人が増えました。1967年にはマラソンの普及と強化を目的に、市民マラソンの走りとなった青梅マラソンもスタートします。

皇居ランのきっかけはホステス?

市民ランナーに人気の“皇居ラン”も、ルーツはこの時代にあるんです。そもそも皇居ランが生まれたきっかけは、1964年11月1日に開催された「皇居1周マラソン」だといわれています。これは、皇居に近い銀座のクラブやバーの経営者が主催したマラソンレースで、参加者はお店で働くホステスたち。そのため、スタート時間は真夜中というユニークなものだったそう。これに触発された国立国会図書館の職員たちがマラソンクラブを設立し、やがて皇居に多くのランナーが集まるようになったようです。


皇居ランが爆発的なブームとなったのは2007年にスタートした東京マラソンがきっかけですが、それ以前からしっかりと根付いていたとは驚きですね。次ページでは世界のマラソンレースやマラソンを超える過酷なレースのトリビアなどをご紹介します。

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