天気予報の世界

洗濯物を干せるかどうか考えたり、週末の予定を立てたりするときになくてはならないのが天気予報。天気によって体調や気分も変わりますし、その行方を知ることができないとしたら、私たちの生活がどうなるかは想像がつかないほど……。身近すぎる天気予報の変遷を今月の「Trace」では探ってみました。

人々の経験則から始まりました”に

天気の行方が気になるのは、現代に生きる私たちも古代の人々も同じこと。ただし、古代ギリシアの哲学者アリストテレスが紀元前350年頃に『気象論』の本を書いてから、現在のように科学的な方法による天気の予想が始まるまで、天気といえば人々の経験則で予測するものでした。
たとえば「山に笠がかかると雨が降る」ということわざ。山の山頂だけが雲に覆われていると雨になるという、平地が少ない日本の各地に伝わる生活の知恵は、雲や風、空の色や生き物の様子から天気が変わる兆しを見つけ出す天気俚諺(りげん)、観天望気のひとつです。
現代のような天気の予想に近付くのは、気圧計や温度計が発明された1600年代以降。物理的な気象観測が始まり、19世紀中頃には天気図や電信を利用した定時観測が取り入れられ、ヨーロッパを中心に天気予報が始まります。

初の予報はわずか1文

日本で天気予報が本格的に始まったのは明治時代のこと。1872年に北海道の函館気候測量所(現在の函館地方気象台)で気象観測が始まり、1875年には気象庁の前身となる東京気象台が東京・赤坂に開設。欧米から招いた“お雇い外国人”の技術者が中心となって、予報に向けた1日3回の定常的な観測がスタートします。現在の赤坂はオフィスや大型商業施設が建ち並ぶ大都会ですが、当時は草むらが広がり、タヌキやムジナが生息するのどかな土地だったそう。
1883年には全国22カ所の測候所の観測結果を電信で集めて天気図が作成されるようになり、翌年6月1日に日本初の天気予報が発表されました。この予報は「全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ但シ雨天勝チ」と全国の予報を1文で表現したもので、東京の交番などに掲示されました。
そして、1888年4月には24時間先まで予報がされるようになったことで新聞にも天気予報が掲載され、1925年には新たに開局したラジオによる天気予報もスタートするのです。

あの日本語は天気予報から?

天気予報の登場は“新しい言葉”を生みました。たとえば「所により雨」というフレーズ。ところどころで雨が降っているという意味の英語”Local rain”を訳したもので、天気予報の黎明期は外国人の技術者が英語でまとめた予報を和訳していたため、地域を特定しない「所により」という表現が生み出されたといわれています。
時代をもっと遡ると、天気とは関係ないような言葉が、実は天気との関わりから生まれたケースも。たとえば聖なる人を意味する「聖(ひじり)」。昔の人は自然現象を見て天気や季節の移り変わりを読み取っていたため、その能力が優れている人は「よく日を知る人」という意味で「日知り(ひじり)」と呼ばれて尊敬されたそう。そこから、学識や人格が優れている人を意味する「聖」という漢字を「ひじり」と訓読みするようになったようです。

約4年の空白期間……

新聞、ラジオの発展とともに身近になった天気予報ですが、人々の前から存在を消していた時期がありました。1941年12月8日、真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争によって気象管制が布告されると、天気図や観測データは軍事機密となり、一般への天気予報の公開は禁止されたのです……。
防災上の観点から暴風警報は特例で発表することになっていたものの、いざ発表するには制約が多く、ほとんど機能しなかったそう。1942年8月27日、長崎県に上陸した台風の際は、当局が情報こそ把握していたものの、新聞やラジオで発表されることはなかったため、住民の避難行動に結びつかず、山口県を中心に発生した高潮の影響で1,158名が亡くなりました。終戦間際、立て続けに発生して1,000名を超える死者・行方不明者を出した鳥取大震災(1943年9月10日)、東南海地震(1944年12月7日)、三河地震(1945年1月13日)についてもほとんど報じられることがなかったといいます。
気象管制が解除されたのは終戦から6日後の1945年8月21日。翌日からNHKラジオで東京地方の天気予報が放送され、23日からは新聞紙面にも天気予報が戻りました。天気予報に接することができるのは、平和な時代の証しでもあるんです。

使っていますか?あのサービス

戦後は週間天気予報やテレビによる天気予報の放送がスタートし、天気を知りたいときにいち早く確認できる便利なサービスも整備されました。「177」をダイヤルすれば、「気象庁予報部(もしくは○○地方気象台)発表の○月○日午前(午後)○時現在の気象情報をお知らせします」というアナウンスとともに、天気予報や注意報・警報、降水確率、予想気温などを教えてくれる、日本電信電話公社(電電公社、当時)の「天気予報サービス」です。
1954年9月の試行サービス開始を経て、翌年1月1日から東京を皮切りに、名古屋、大阪、京都、神戸で始まり、順次全国に拡大されたこのサービス。スタートのきっかけは、1946年に中央気象台(現在の気象庁)が開設した「お天気相談所」による電話の問い合わせが利用者の増加でパンクしてしまい、新たなサービスの必要性が高まったことにありました。
天気予報サービスも試行開始当初は台風シーズンで問い合わせが殺到し、電話の交換機のヒューズが飛び、扇風機を投入して機械を冷やすほどの騒ぎだったとか……。天気のアナウンスは全国各地のスタッフが録音装置に肉声を吹き込んでいましたが、1997年には音声合成化装置で自動化され、インターネットの普及で利用率は減っているものの、現在も1日11回更新でサービスは継続しています。


経験則から始まり、科学の力による予測に変わっていった天気予報。次ページでは現代の予報にまつわるトリビアを中心にご紹介します。

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