癒やしの温泉文化

縄文時代から人々が温泉に浸かっていたことを想像させる遺跡があるほど、日本人となじみのある温泉。現在、全国の温泉地の数は3000以上、源泉の数は2万7000を超え、日本人1人当たり毎年温泉地で1泊はしているというデータがあるほどです。今回の「Trace」はそんな温泉と日本人との関わり合いをたどってみます!

温湯、出湯、薬湯、どれも「温泉」

『日本書紀』『古事記』『万葉集』『風土記』など、古くからさまざまな文献に日本人と温泉との関わりは記され、こうした文献に登場する伊予の湯(愛媛県道後温泉)、有間の湯(兵庫県有馬温泉)、牟婁(むろ)の湯(和歌山県白浜温泉)は「日本三古湯」ともいわれています。「温泉」という言葉が初めて使われたのは『風土記』(『出雲国風土記』)で、温泉のほかに「温湯」「出湯」「薬湯」などの表現も使われていました。
温泉に含まれるさまざまな成分や、温熱・浮力・水圧などの物理的効果のおかげで、傷や病気が良くなることから、当時から温泉は「病気を治してくれる神聖なもの」として崇められる対象でした。例えば、和歌山県の湯の峰温泉には熊野詣でに向かう人々が立ち寄り、参拝の前に温泉に浸かるだけでなく、温泉水で炊いたお粥を食べ、体の内外から身を清めていたといいます。ちなみに、胃腸の病に効果があるといわれる温泉粥は、今でも湯治場の定番料理です。

温泉の宅配便があった!?

温泉は仏教とも強く結びついていました。特に、全国各地の開湯伝説によく登場するのが、奈良時代の僧で東大寺の造営に尽力した行基と、平安初期の僧で真言宗の開祖である空海です。彼らは社会事業に携わって広く人々に慕われていたこと、また山林修行者として各地を巡り、鉱物や湧泉、地下水など地学の知識も豊富に持っていたことが開湯伝説につながったと考えられています。その影響は大きく、彼らが訪れていないはずの土地でも「行基が発見した」「空海が開湯した」という言い伝えが残っているほどです。
平安・鎌倉時代の貴族の間でも温泉は療養のために欠かせないものでした。「湯治」という言葉が使われるようになった平安後期以降は、温泉地で療養するのに飽き足らず、温泉を汲んで自邸や別邸に運び、温泉地に行かなくても湯治気分を味わう「宅配温泉」まで行われていたとか! 戦国時代には多くの温泉地で傷を負った武士が治療したという記録が残っていて、戦国武将が戦いの疲れを癒やして英気を養った「隠し湯」も甲信越地方を中心に数多く存在します。

裸で温泉に入るのは非常識!?

江戸時代に入ると将軍や大名、武士だけでなく、庶民にも本格的に温泉文化が広まります。18世紀には漢方医の香川修徳が日本初の温泉医学書『一本堂薬選』で温泉の効能を述べ、幅広い層で湯治が盛んになり、旅のガイドブックに温泉地一覧が掲載されたり、相撲の番付表に倣った温泉番付が作成されたりするなど温泉ブームが到来したんです。
この時代には、「温泉に裸で入る」という“伝統”も生まれました。それまでの人々はなぜ裸で入浴していなかったのか。理由は、奈良時代に唐に渡った僧や渡来僧が持ち込んだ『仏説温室洗浴衆僧経』にあるようです。これは入浴による心身の癒やしや清浄の功徳を説いた経典で、7つの物を用いてお湯に浸かれば、7つの病を除き、7つの福を得ることができると説かれていました。その7つの物のなかには「内衣」(浴衣)が含まれていて、内衣を着ない入浴が戒められていたんです。今ではTV番組で、タオルを巻いて温泉に浸かるシーンに「許可を得てタオルを着用しています」という注釈が入るほどですが、意外と新しい文化といえるかも?

湯治から保養目的に変化

明治に入ると、西洋、特にドイツの温泉医学が日本に伝えられ、それに則った温泉医学や温泉地づくりが進められました。温泉の新規掘削が各地で行われ、浴場と宿泊施設が別の場所にある、いわゆる「外湯」ではなく、宿泊施設内に温泉を引く「内湯」を備える温泉旅館も増えていきます。
昭和の時代に交通機関が整備されると温泉地へのアクセスが容易になり、多くの人々が湯治目的だけでなく、保養目的として温泉地を訪れました。第二次世界大戦以降は高度経済成長の波に乗り、宿泊施設が大型化。大型の観光バスを使った慰安旅行の団体客が訪れるようになり、温泉地は宴会や遊興の場に変貌します。
昭和60年代に訪れた温泉ブームやふるさと創生事業による温泉開発で、日帰りの温泉施設が各地で増加。不況に入ると団体旅行の数こそ減少しますが、家族連れやグループ客が温泉地を訪れるようになります。貸し切り風呂や足湯の整備をはじめ、最近では人里離れた秘境の露天風呂や外湯も見直され、温泉は幅広い世代、そして日本を訪れる外国人観光客にも親しまれています。

もやしからワニまで

入浴以外にも、温泉はさまざまな形で活用されているもの。例えば、青森県大鰐温泉では、温泉熱を利用して野菜や米を促成栽培する御菜園を古くから設け、今でも温泉豆もやしが名物です。関東近郊では静岡県熱川温泉のバナナワニ園も有名。こちらでは温泉熱を利用してバナナやスイレンなど約5000種の熱帯植物の栽培や、熱帯地域に生息するアマゾンマナティーやワニなどを飼育しています。ほかにも、温泉熱で海水を加温してあわびを養殖したり、温暖なアフリカ原産の外来魚、ティラピアの養殖場を設けている温泉地もあったりするんです!


病気の療養にはじまり、観光から野菜栽培や動物の飼育にまで広がる温泉文化。次ページでは温泉にまつわる国内外のトリビアもご紹介します。

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