稲作を中心にして独自の文化を育んできた日本人にとって、お米はなくてはならないもの。しかし、お米を自由に売買できるようになったのは、実は、最近のことなんです。今回の「Trace」では、いまや当たり前のように食卓に上る「ブランド米」登場の背景や、現代のお米事情について探ってみました!
いま、私たちは自分が食べたいお米を、お米屋さんやスーパーマーケット、インターネットなどを通じて購入することができますが、消費者がお米を自由に選べるようになったのは、実は最近の話。記憶にある人も少なくないでしょうが、太平洋戦争終戦後しばらくは、お米の生産量や流通が国によって管理されていたんです。
明治から大正まで、お米は自由に売買されていましたが、1918年に起きた米騒動や、1930年代後半に凶作が重なったことで、お米の統制を国が強めるようになります。1942年には、お米を安定的に供給するための「食糧管理法」が制定され、原則としてすべてのお米が国の管理下に置かれました。
そんなお米の流通が変わったのは1950年代のこと。戦後の食糧難が改善され、お米の生産量が増えてくると、お米を買い上げていた国の負担が大きくなり、消費者もよりおいしいお米を求めるようになります。そこで、政府を経由せずに民間がお米を流通させる「自主流通米」が生まれ、お米を選ぶ選択肢が増えたのです。
おいしいお米を求める消費者の嗜好に合わせ、1950年にハツシモ(岐阜県)、1956年にコシヒカリ(新潟県)、1963年にはササニシキ(宮城県)や日本晴(愛知県)と、ブランド米の黎明期を支えるお米が各地から登場。国が管理して供給するものだったお米が、産地や品種の好みで消費者が自由に選べるようになりました。その後もお米の生産量が増え続けたことで、1971年にはお米の作付けを制限する「生産調整(減反政策)」がスタートします。これ以降、お米の販売価格の自由化や、配給制度の廃止といった“お米の規制緩和”が進み、1995年に制定された「食糧法」によって、農家が直接小売店や消費者にお米を販売できるように。コンビニエンスストアやインターネットで簡単にお米が手に入る流通の形が作られていきました。
「ブレンド米」というと、みなさんはどんなイメージを持ちますか? “値段の安い混ぜ物”という印象を持つ人もいるかもしれませんが、実は、ブレンド米は天候に恵まれず力不足のお米の味を引き出したり、一年中同じおいしさのお米を味わうための“善の技術”なんです。
そもそもブレンド米は、国がお米を統制していた時代にはおなじみのもの。当時は、お米屋さんが腕をふるって異なる産地のお米を混ぜ合わせたブレンド米を食べるのが一般的で、消費者は「あのお米屋さんがおいしい!」と、味比べを楽しんでいたといいます。その後、先に紹介したブランド米の台頭やお米の規制緩和によって、ブレンド米を選ぶ消費者は少なくなったものの、最近では「カレーに合うブレンド米」や「おにぎりに合うブレンド米」といった切り口で、料理に合わせたリーズナブルなブレンド米を提供するお米屋さんも増えているのだそう。お店ごとに味が異なるブレンドコーヒーを楽しむような感覚で、ブレンド米を楽しむ文化が生まれつつあるんです!
みなさんおなじみの「新潟魚沼産コシヒカリ」は、日本のお米界の頂点に君臨する一大ブランド米。その躍進の背景には、おいしさもさることながら、メディアの存在も大きかったといわれています。時はバブルの頃。それまでは「新潟“魚沼産”コシヒカリ」や「宮城“登米産”ササニシキ」などと、お米の産地を細かく表記することは規制の対象とされていて、消費者に情報が入ってくることは少なかったそう。しかし、美食をコンセプトにした料理雑誌やテレビ番組の登場で、魚沼産コシヒカリを筆頭にしたブランド米ブームが加速。地域や農協名で差別化を図る流通の仕組みが生まれたのです。
ちなみに、魚沼産コシヒカリは味わいがしっかりしているため、洋食や濃い味付けのおかずに合うといわれるお米です。そもそもお米は同じ品種や産地であっても、その年の作付け条件や気候が異なれば味わいも変わってくるもの。ですから、お米はブランドだけで選ぶのではなく、自分の食生活や好みに合わせて柔軟にセレクトすることが大切なんです。
現在、お米の品種は600種類弱、実際に作付けされている品種だけでも300種近くあります。食糧法によって農家が直接お米を出荷できるようになったことから、ひとつひとつの農家が“ブランド”を名乗るようになり、ブランド米の数はいまや数万に上るとも……。そんなお米を取り巻く状況は、農村の高齢化やお米の価格競争、TPP(環太平洋経済連携協定)の問題などにより、けっして明るいとはいえません。
しかし最近では、お米の食べ方や選び方を見直そうという動きも盛んになっています。例えば、ブランド米が乱立する市場で差別化を図るため、従来にない個性的な味わいのお米を開発したり、生産者のストーリーをアピールして、地域活性化につなげる農家や農協が増えているのだそう。また、お米をただの主食ではなく、ワインや日本酒と同じ“嗜好品”として楽しむ食生活も提案されており、お米に関する専門知識を持った「お米マイスター」(日本米穀小売商業組合連合会)、「お米アドバイザー」(日本穀物検定協会)、「米・食味鑑定士」(米・食味鑑定士協会)といったスペシャリストの養成も進められています。
さらに、全国からおいしいお米を選出する「米の食味ランキング」(日本穀物検定協会主催)の開催で、東北や新潟、北陸といったおなじみの産地だけでなく、北海道や九州産のおいしいお米にも脚光が当たっているのだとか。「おいしいお米を食べたい」という消費者の思いが、お米の新時代を切り開きつつあるんです!
おいしいごはんを食べたいという思いに応えるため、いまもなお改良が重ねられているお米。お米が進化しているのなら、お米との付き合い方にも変化が……? 次のページでは、いまの時代のお米の新常識をご紹介!
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