誰もがホッとひと息つける場所 癒やしの喫茶店

外出先でのひと休み、友だちとの語らい、そしてひとりで読書や考え事をする場所として、いつの時代も喫茶店は私たちの癒やしの場です。昭和後期から続いた“冬の時代”を経て、いま、再び喫茶店に新しい風が吹いているといいます。喫茶店はどんなふうに人々に受け入れられてきたのか。その移り変わりをたどっていきます。

喫茶店はトルコで生まれた

喫茶店の誕生は、16世紀半ばまでさかのぼります。その頃、コンスタンティノープル(現在のトルコ・イスタンブール)で、喫茶店の原型である「カーヴェハーネ(kahvehane)」(トルコ語で「コーヒーの家」)が建てられ、コーヒーを飲む場所、そして社交場として、たくさんの人で賑わったそうです。コーヒーがヨーロッパへ伝わるのに伴い、ヨーロッパ各国でも同様の場所がつくられていきますが、特にイギリスでは、17世紀半ばから18世紀にかけて「コーヒー・ハウス」が一大ブームに。政治家から貿易商、船乗り、ジャーナリスト、文学者まで、さまざまな職業の人が集って政治談義や情報交換を活発に行い、近代の政治や社会、文化の発展に大きな役割を果たしたといわれています。

日本で初めての喫茶店については諸説ありますが、1888年に東京・上野でオープンした「可否茶館(かひさかん)」は、現在の喫茶店につながるスタイルを打ち出した先駆者といわれています。創業者の鄭永慶(てい えいけい)は、外務省官吏や英語教師を務めた実業家。一般市民の社交場が珍しかった時代に、「市民が自由に情報交換できるイギリスのコーヒー・ハウス」を理想として、知識と文化を学び、伝える場をめざして同店を開いたのだそう。2階建ての豪華な洋館の中には、トランプ、碁、将棋、国内外の新聞、書籍などを用意し、ビリヤード台やシャワー室も設けていました。そんな文化の香り高いお店に集まったのは、鄭の理念に共感した東京帝国大学の学生や、尾崎紅葉らが創設した硯友社(けんゆうしゃ)の文士たち。彼らは連日お店に集い、コーヒーを楽しみながら歓談していたといいます。現在の喫茶店と変わらない時間が、そこには流れていたのでしょう。

「カフェ」と「喫茶店」の違いとは?

一部の知識層や富裕層のものだった喫茶文化が庶民に広がり始めたのは、明治末期のこと。当時を代表するお店のひとつ、1911年開業の銀座「カフェー・プランタン」は、文学・芸術活動の拠点として文化人に親しまれていましたが、庶民にとっては少々入りづらい雰囲気だった様子。しかし、コーヒーを手頃な値段で提供する「カフェー・パウリスタ」や20歳前後の女給によるサービスを売りにした「カフェー・ライオン」が相次いで登場し、喫茶文化を徐々に大衆化していきます。
関東大震災後、カフェーは女給のサービスを売りにした、現在のバーやクラブのような風俗営業店へと変わっていきました。これらの「特殊喫茶」に対して、コーヒーを主に提供する本来の喫茶店は、「純喫茶」と呼び分けられることになります。現在では、カフェも喫茶店も「コーヒー1杯分の憩いを提供する場所」として親しまれ、この両者に本質的な違いはないといえます。

スタバを先取り!? 昭和初期の喫茶店

1920年代には喫茶店ブームが訪れます。都市部に人口が増え、住宅環境が手狭になっていく中で、喫茶店は自宅にはない応接間や書斎に代わる場所として、また仕事の打ち合わせの場や休憩の場として活用され始めました。明治・大正期には東京で50〜70軒ほどだった喫茶店が、1929年には1000軒、1933年には2500軒を超えていたといわれています。
1990年代に米国・シアトルから日本に上陸した「スターバックス」は、「家でも職場でもない、もうひとつの自分の居場所=サード・プレイス」という概念を私たちに提示しましたが、歴史をたどれば、昭和の初めから、喫茶店は都市で暮らす人々にとって「必要不可欠な第三の場所」だったのです。

高度経済成長期=喫茶店の黄金期

第2次世界大戦中はコーヒーが贅沢品として規制され、喫茶店の数も減少。しかし、終戦後は都市部の繁華街を中心に喫茶店が再び急増し、高度経済成長期には“喫茶店の黄金期”を迎えます。名曲喫茶や歌声喫茶をはじめ、ジャズ、ロカビリー、ロックといった音楽喫茶が続々と誕生。会社員が脱サラをして喫茶店を開業するケースも多く、これらは「デモシカ喫茶」と揶揄されました。「喫茶店“でも”やるか」「喫茶店くらい“しか”できないし」という姿勢がその由来です。
昔ながらにコーヒーを提供する喫茶店をメインストリームとしながらも、時代の流行や風俗を敏感に反映したユニークな店舗が数多く現れ、娯楽・文化に触れる場所、そして待ち合わせや世間話ができる「街の応接間」として、喫茶店は機能していました。

喫茶店 冬の時代にコーヒー文化を牽引したカフェ

インスタントコーヒーや缶コーヒーの普及、安価なコーヒーチェーン店の台頭、地価の高騰、跡継ぎ問題……。黄金期から一転、1980年代に入ると喫茶店の数は減少の一途をたどります。そんな“冬の時代”に東京で誕生した何軒かのカフェが、その後の喫茶文化の新しい潮流をつくることに。そのカフェとは、生活雑貨のお店とカフェスペースを組み合わせた「アフタヌーンティー・ティールーム」。そして、カフェとバーを融合したスタイルで、80年代のカフェバーブームの中心的存在のひとつとなった表参道の「キーウエストクラブ」です。個人経営の喫茶店が姿を消していく中で、両者は人々に「カフェのあるライフスタイル」や「新しい文化と出会う空間」を提案しました。
1990年代後半になると、フランスの伝統的スタイルのカフェが流行。銀座にスターバックスの日本1号店が誕生するのと前後して、「バワリーキッチン」、「ルーム・ルーム」、「オーガニックカフェ」といった2000年代のカフェブームの先駆的存在がオープンします。これらのカフェは、オーナー個人の嗜好や世界観を色濃く反映した新しい飲食空間を生み出しており、その魅力は若者を中心に熱い支持を受けて全国的に広がります。
歴史は繰り返す。かつて黎明期の喫茶店が西欧のコーヒー・ハウスやカフェのスタイルの模倣を経て日本独自の喫茶文化へと進化を遂げていったように、平成時代にも海外のカフェ文化、コーヒー文化の模倣とアレンジ、そして日常生活への定着が行われているのです。

SNSが喫茶店再興の後押しに?

近年は若者を中心に、昔ながらのレトロな喫茶店が再注目されており、閉店してしまった老舗店が若者の手でよみがえるなんて動きもあるようです。生まれた頃にはチェーン店やカフェが街に溢れていた世代にとって、店主がひとりで切り盛りしている喫茶店には、映画や小説の中でしか見られなかった世界に直で触れられる魅力があるのかもしれません。また、FacebookやTwitterの普及で、個人が情報発信することが当たり前になったことも、喫茶店再興の一因に。「こんなレトロな喫茶店に行きました」、「このお店かわいい!」とSNSで報告する機会が増えたことで、新しいネタ探しの感覚でお店に足を運ぶ人も増えているようです。
利用者の高齢化に伴って、シニア世代を意識したお店も登場しています。名古屋で生まれた「コメダ珈琲」のような「ご当地喫茶店」には、お店がシニア世代のコミュニケーションの場となるように、常連客の好みを覚えたり、要望にできる限り対応する接客を心がけているお店が多いのだそう。若者には新鮮な場所として、馴染みのある世代にはさらに落ち着ける空間として、喫茶店はいま、復活のときを迎えているようです。


創成期は客が知識層だけに限られていた喫茶店。誕生から100年以上のときを経て、街の応接間、新しい文化との接点、なによりもホッとひと息つける癒やしの場として、人々の生活になくてはならないものになったんですね。次のページでは、そんな喫茶店にまつわるトリビアをご紹介します!

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