愛される100均

vol.111

市場規模1兆円目前!!
愛される100均

値段もさることながらそのラインナップの豊富さで、ついついカゴの中身が増えてしまう100円ショップ。スーパーやコンビニと並び、私たちの生活で当たり前になったお店は、どんなふうに始まったのでしょう? “脱100円”の動きや新たな業態の連携も見られる「100均」のルーツを探ってみました。

江戸時代に見られる
均一店の萌芽

均一低価格でモノを売るお店は、江戸時代にすでに登場していました。享保8、9(1723、1724)年の不況期には「十九文見世」が、文化年間(1804年〜)には「三十八文見世」があり、たとえば三十八文見世では、櫛、かんざし、小刀、ハサミ、人形、墨筆、絵草紙の特価本などが38文で売られていたといいます。そばが1杯16文の時代、現代の物価に置き換えると300円ほどの商品が並んでいたと思われます。

百貨店が“100均”を
手がけていた!?

小売史上初の本格的な均一価格店とされる、アメリカのウールワースが5セントと10セントという二つの価格帯の均一価格店を開業するのが1879年。明治末期から昭和初期には、そのウールワースを参考にした均一価格のチェーン店が日本に誕生します。
いち早く実験店舗を開設したのは百貨店の髙島屋です。1926年に店内の一部に「なんでも10銭均一」の売り場を開設すると、1930年に大阪・難波駅の駅構内で一部開業した南海髙島屋に「髙島屋十銭ストア」を開店。菓子、化粧品、洋品類などの生活必需品を10銭(現在の価値で約200円)で購入できるとあって大阪中でセンセーションを巻き起こしたそうです。翌年には東京、京都でも均一店を開店し、1940年の最盛期には10銭、20銭の商品を扱う均一店を全国で106店舗展開していました。

「100円でええ」が
すべての始まり

戦争によって多くの均一店が閉店に追いやられましたが、1960年代になると、駅前やスーパーなど人が集まるところで一定期間店を出し、企業の在庫品などを格安価格で販売する催事屋、露天商から「100円均一」のアイデアが登場します。100円ショップでおなじみのダイソー(大創産業)やキャンドゥ、セリアももともとはそうした催事屋からのスタートでした。
たとえばダイソーが催事屋から100円均一に舵を切ったきっかけは、客へのある“ひと言”でした。同社の前身は、創業者の矢野博丈氏が1972年に創業した矢野商店。2トントラックに商品を積み込み、ベニヤ板に商品を陳列販売するスタイルで、たった一人で商品の補充から会計、仕入れまでを行っていたため、値札をつけるのもひと苦労だったそうです。そんなある時、開店準備の時間がなく、値札のついていない商品を見た客から次々に値段を聞かれたために、矢野氏が「100円でええ」と思わず口にしたことが100均へのターニングポイントになったといいます。
その後は「お客様第一主義」の商品展開に力を入れ、大手スーパーの店頭販売で実績を積んで同業他社と差別化を図り、1991年には香川県高松市に最初の直営店を開業してチェーン展開を本格化。2000年代に入ると台湾を皮切りに、韓国、北米、中東、南米と世界にも進出する100円ショップとなっています。

100円ショップ
繁栄の90年代

バブル崩壊で節約志向が高まった1990年代は100円ショップ繁栄の時代。1992〜93年ごろから常設の100円ショップが各地に登場し、不況期の1990年代後半に売り上げを伸ばしました。ダイソーやキャンドゥなど大手各社がフランチャイズを始めたことで出店のスピードが速まり、店舗も大型化。スーパーやコンビニに続く新たな業態として私たちの生活に欠かせない存在となりました。2000年代以降は生鮮食品も100円前後の低価格で販売する生鮮コンビニが登場。ダイソーやワッツ、キャンドゥなどによる海外展開も加速しています。

数字で見る100円ショップ

1兆円

2021年度の100円ショップの市場規模は前年から約500億円増加の9,500億円に達する見込み(帝国データバンク調べ)。2010年の約6,000億円と比べると1.6倍近い伸びで、根強い節約志向やコストパフォーマンスの高いアイテムへの支持を背景に、早ければ2022年度には市場規模が1兆円を突破する可能性があるとも。近年急速に拡大するサブスクリプションサービス市場も、2022年度以降は1兆円を超えると予測されていますが、100円ショップもまだまだ勢いは衰えていません。

8,000店以上

積極的な店舗展開が進められている100円ショップ業界。ダイソー、セリア、キャンドゥ、ワッツの大手4社の店舗数は全国で8,000店以上、このまま新規出店が続けば2025年度には1万店を突破するという試算もあるほどです。


業界最大手の大創産業はダイソーを3,620店舗展開しています(2021年2月末時点)。2018年には300円ショップ「THREEPY」、2021年にはナチュラルテイストのインテリア雑貨を取り揃えた「Natural Coordinate」や、サステナビリティ、環境問題を意識した「Standard Products」なども出店。個人向けのネット販売もオープンし、業界を牽引する存在です。

業界2位のセリアは全国に1,787店舗を展開(2021年3月末現在)。2004年、他社に先駆けてPOS(販売時点管理)システムを導入、2006年にはPOSを活用した発注システムを構築し、快適な顧客体験と効率的な店舗運営に力を入れています。「Color the days 日常を彩る。」をコンセプトに、従来の100円ショップにはなかったかわいらしさ、おしゃれ、ナチュラルさを押し出した商品展開も特徴です。

1970年代から催事場などに出店し、1993年以降は常設の100円ショップを手がけているキャンドゥ。2022年3月末時点で1,209店舗を出店しています。2022年には流通大手のイオンの連結子会社となったことで、グループ店舗への出店やキャンドゥの商品をグループ店舗に展開することも期待されています。

大手の中では1995年創業と最後発のワッツ。100円ショップが拡大する時代に登場し、ローコスト出退店などで規模を拡大し、2022年2月末現在、1,579店舗を出店しています。実生活に役立つ定番商品や季節商品を豊富に揃え、「心地よい生活」をテーマにリーズナブルな生活雑貨を扱う「Buona Vita」も展開しています。


1.99ドル

日本発の100円ショップは海外にも進出しています。たとえばアメリカのダイソーは1.99ドル(約260円)での商品展開が多いそう。中国では10元ショップが主流で、こちらも日本円に換算すると200円ほど。そのほか、タイでは60バーツ(約230円)、ブラジルでは7.99レアル(約210円)と、国によって価格設定はさまざまなようです。
※レートは2022年5月現在

100円ショップの
これからは?

「来店客を呼び込める」と、ショッピングセンターやスーパー、ホームセンターのテナントに誘致されることも多い100円ショップ。近年はセリアのように100円均一の姿勢を貫く店舗がある一方で、ニーズの変化や製造コスト上昇などの影響から300円、500円など100円以外の価格帯の商品を展開する店舗も見られるようになりました。単なる「値上がり」ではなく、最新のトレンドを反映し、クオリティやデザイン性を向上させた高価格帯の商品を展開する“脱100円”の動きは、近年の100円ショップの大きな流れのひとつといわれています。
また、コンビニエンスストアで100均を購入できる動きも。ファミリーマートは自社のPB(プライベートブランド)商品で、キッチン周りの日用品を中心に100円均一の販売をスタート。セブン-イレブンは売り場の一角にダイソーの売れ筋商品を並べた店舗を拡大中です。

単なる安さではなく、お値打ち感のある商品で価格以上の満足度をもたらしてくれる100円ショップ。ネット通販の全国展開も各社で進められ、ますます便利になる「100均」にこれからも注目していきたいですね!

参考文献(順不同)
大下英治『百円の男 ダイソー矢野博丈』(さくら舎)/石原武政、矢作敏行編『日本の流通100年』(有斐閣)/アジア太平洋資料センター編『徹底解剖100円ショップ 日常化するグローバリゼーション』(コモンズ)/田中政治『小売商のルーツを求めて 江戸・明治篇』(日本コンサルタントグループ) /100円ショップ各社ホームページ  等

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