vol.6 漫才が愛され続ける理由

漫才はいつから愛され続けているのか?

特にお笑い好きではなくても、普段の生活で「ボケ」や「ツッコミ」を意識している時ってありますよね。
もともと漫才由来のこの言葉。一つの芸で使われていた言葉が、これだけ世間に定着してるってスゴイことだと思いませんか? 落語や能、歌舞伎など、いろいろな芸がある中で、「漫才」がココまで愛されているのには、何かしら理由があるはず。今回は漫才のルーツを辿り、その本質を探ります!

農家の兼業から近代漫才の夜明けまで

漫才のルーツは、平安時代にはじまり、今も全国各地に伝わる「萬歳」という伝統芸能です。これは農業に携わる人々の農閑期の仕事として、素襖・風折烏帽子に腰鼓を着けて家々を訪問し、鼓・三味線で祝言を述べ、その報酬を得るという「門付芸」を主としていました。基本スタイルは、太夫(たゆう/興行権を持っている人)と才蔵(さいぞう/太夫が雇う人)の2人1組。当時から役割分担がなされていたようで、太夫がツッコミ、才蔵がボケ。これが、今日のボケツッコミの原型となっています。

昭和初期の頃には、それまで歌や舞のつなぎとしてしか考えられてこなかった「おしゃべり」を全面に打ち出したコンビが誕生しました。これが、横山エンタツ・花菱アチャコのコンビです。この2人は“近代漫才の父”と呼ばれ、現在の漫才スタイルの先駆けと言われています。時を同じくして吉本興業の文芸部長だった橋本氏が、その頃流行していた「漫画」に注目。「萬歳」の略字であった「万才」に漫の字を当て、「漫才」という言葉が生まれたのです。この当時、吉本興業の宣伝部が発行した「吉本演藝通信」で改称が宣言され、全国的に「漫才」という言葉が広まっていきました。

漫才ブームで年収億越え!景気と漫才の深〜い関係

その後の漫才の繁栄は皆さんの知っての通り。1980年頃にはテレビを中心にした漫才ブームが到来。ツービートやB&Bなどの国民的スターが生まれました。この当時の彼らは数億円もの年収を稼いでいたとも言われ、漫才師が若者にとって憧れの職業になっていきました。ギャラ高騰に関しては、テレビの影響が大きく、「バラエティに出てお茶の間に顔が売れる→営業が引く手数多になる→地方営業を行い、さらに人気が出る→テレビのレギュラー獲得」という好循環が生み出した賜物でした。この流れは現在も続いており、人気を獲得する人とそうでない人の顕著な二極化が進んでいます。

また、漫才の歴史を見て行くと、ある法則に気付きます。例えば、1962年〜69年の不景気と演芸ブーム、バブル崩壊後のダウンタウン、とんねるず、ウッチャンナンチャンなどの「お笑い第三世代」の人気。さらに、M-1グランプリがスタートした2001年頃もITバブルの崩壊と、不景気と漫才ブームが連動しているのです。これについて、一つは「お金がかからない遊びを楽しみたい」という消費者側の理由、もう一つは「テレビの制作費を抑えたい」という作り手側の理由が考えられます。不景気になり、世の中の気分が淀んでくると、自然に笑いを求める、という側面もありそうですね。

漫才から“満才”へ インテリ化するお笑いの世界

ロザンの宇治原(京都大学卒)、ますだおかだの増田(関西外国語大学卒)など、ここ最近テレビでは高学歴の芸人が活躍しています。ここに来て学歴が取りざたされている要因の一つが、観客の求めるレベルが上がったこと。漫才の裾野が広がり、お笑いの知識も豊富と来れば、単純な笑いやダジャレでは太刀打ちできません。そういった客層にウケるネタを模索し続けた結果、漫才師にも知性が求められるようになってきたのです。おもしろいという意味で漫画から取られた漫才の“漫”という文字は、今後才能や知性が満ち溢れる、という意味での“満才”に変わっていくとも言われています。

漫才を真似したくなる“なるほど!”な理由

一般人の間でも「晴れてるなー」、「思いっきり雨じゃん!」と、ボケツッコミが行われるのは日常茶飯事。この真似のしやすさが、漫才人気の大きな要因です。しかし、この真似しやすいというのは漫才の習性を考えれば当然のこと。なぜなら、漫才は人間がもともと兼ね備えているボケとツッコミの習慣をデフォルメしたものだからです。例えば、小学校の時、おもしろい子がふざけて、周りがツッコんで笑うという光景がよくありましたし、大阪では「2人集まれば漫才になる」とも言われています。それらの人間本来の習慣を凝縮して、芸に昇華させたのが漫才なのです。真似したくなる、のも当然のことなんですね。

「萬歳」から「漫才」を経て、「満才」へ。人々の生活に根ざした笑いは時代に合わせて進化を続けています。
だからこそ、いつの時代も漫才は愛され続けているのでしょう。そして、私たちが漫才を愛する理由には、その構造自体が「人間の習性」だったことが関係しているんですね。
次のページでは、思わず人に話したくなる、漫才トリビアをご紹介します!

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