魅惑のカレー

カレーの“華麗”なるへぇ〜をお届け! カレートリビア

外食に家食にと、カレーは日本人の生活の一部。そんなカレーの歴史に潜むユニークなトリビアをご紹介。あの歴史的有名人のカレーエピソードなど、カレーを食べながら話したくなるネタが満載です。


気持ち悪い? おいしい? 日本人カレーはじめて物語

日本にカレーという言葉を紹介したのは福沢諭吉です。彼が万延元年(1860年)に出版した英語の辞書「増訂華英通語」の中に、「Curry(コルリ)」が紹介されています。ただ、食べたという記録はなく、次に確認できる文献は文久3年(1863年)です。英国への使節団である三宅秀が、船中でインド人がカレーを食べている様子を記録しています。「飯の上に唐辛子細味に致し、芋のどろどろのような物をかけ、これを手にて掻きまわして手づかみで食す。至って汚き人物の物なり」という記述で、どう見てもカレーのことを指しています。そして、日本ではじめてカレーを食べたのは会津藩白虎隊の一員である山川楗次郎です。明治4年に渡米した際、船の中でカレーを食べた記録があります。ただ「食う気になれず」と書かれており、口に合わなかったようです。このように江戸末期から明治初期にかけて、同時多発的に日本人がカレーに出会っていたことがわかります。

高級だった外食カレーを身近にした阪急百貨店の戦略!

昭和に入ってもカレー人気は衰えることを知らず、高まっていく一方でした。しかし、庶民にとっては未だ高嶺の花でもありました。そのイメージを逆手にとり、集客に成功したのが大阪の阪急百貨店でした。昭和7年頃は百貨店の食堂が大人気でした。そこに目玉メニューとして「カレーライス」を投入したのです。値段はコーヒー付きで20銭という庶民にも手が届く低価格。当時、1日1万3000食を売ったという記録もあり、凄まじい人気ぶりだったようです。数年前にはレトルトで「阪急百貨店大食堂の名物カレー」が発売されたので、もしかしたら今後また味わえる機会があるかもしれません。

アレンジのしやすさがカレー普及のキモ

なぜ、日本でカレーがここまで普及したのか。理由のひとつにカレーのアレンジのしやすさが挙げられます。各国の料理を日本風にアレンジするのは日本人の得意とするところ。カレーうどんやカレーパン、最近ではカレー鍋なども出ているほど、様々なアレンジができるのがカレーの特長。カレー粉を使っていればカレーと言える縛りのゆるさも日本人向きだったのかもしれません。とにかく、味はもちろん、応用性の高さが日本にカレーが根付いた理由だったのです。

国民食であるカレーは外食が難しい!?

外食の世界でもカレーは元気です。欧風カレーやファーストフードとしてのカレー以外にも、インドカレーやタイカレーなど、様々なカレーの種類があります。かたや、私たちの舌は三種の神器を主体とした軍のカレーがベースです。本来、インドのカレーと言えばスパイシーなのですが、日本のカレーはスパイス感よりも、むしろまろやかな味が主。急に鮮烈なスパイスを感じるインドカレーなどを食べても、味を理解できないことが多いそうです。また、カレー五大都市(東京・大阪・名古屋・横浜・札幌)においてはコアなカレーも受け入れられますが、ひとたび地方に行くと、日本風のカレー以外は受け入れられにくいという事実も(総体的に見ると、という意味です)。外食でカレーを楽しむのであれば、家のカレーを基準にして考えない方が新たな味を受け入れることができそうです。

井上先生によると「カレーを正しく理解するには正しい食べ方がある」とのこと。家のカレーを出発点として、それに近い欧風カレーを経て、最終的には南インドのスパイスたっぷりのカレーに辿り着くというもの。詳しく知りたい方は、井上先生の「カレー大學」で教えてくれるので、要確認を!

日式カレー=カツカレー 日本が売り出すべきカレーとは?

今、海外では「ジャパニーズカレー」、「日式カレー」と呼ばれる日本式のカレーが人気です。特に中国や韓国で支持を得ており、専門店ができているほど。実はこの日式カレーは日本で言うカツカレーであることが多いのです。海外から見た日本のカレーにはカツが付いているのが当たり前だと思われているようです。事実、カレーとカツは相性抜群でお互いに足りない旨みを補い合っているという説もあるほど。海外の人にとってはボリュームが増える点もうれしいみたいです。2020年の東京オリンピックまでに、このカツカレーを和食のひとつとして展開していこうという動きもあるそうです。


イギリスからきて、独自の進化を遂げた日本のカレー文化。そして、そこから日本のカレーは世界に羽ばたこうとしています。インドのカレーとは異なる文脈で進化してきた日本のカレーが世界を席巻したら、非常に面白いですよね。そう遠くないうちに、そんな日が来るのかもしれませんね。

取材協力

井上 岳久/カレー総合研究所

横濱カレーミュージアム・プロデューサーを経て現職。カレー研究の第一人者で、カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなどカレー全般に精通。商品開発のほか、『カレーの経営学』、『一億人の大好物 カレーの作り方』など著書も多数。6月からはeラーニングでカレーを学べる「カレー大學」も開校した。

PageTop