世界に誇るママチャリ

世界に誇るママチャリ

ロンドンでは「ママチャリショップ」、ドバイには民族衣装でママチャリにまたがる人々が……と、今、ママチャリが世界でウケているのをご存知でしょうか? 今回は、知っているようで知らない日本発の「ママチャリ文化」にフォーカスを当てます! この呼び名を使うようになったきっかけは? 定義は? など、そのルーツに迫ります。


ママチャリは買い物利用のための自転車

聞き慣れたママチャリという言葉ですが、よくよく考えると、どんな自転車を指しているのか曖昧ですよね。それもそのはず、ママチャリは俗称であり、JISによる自転車の分類には当てはまらないのです。大きく見ると「シティ車」、「コンパクト車」に該当しますが、この種別にはそれ以外の自転車も該当しています。そこで、日本自転車普及協会ではママチャリの定義を下記のように定めています。

ママチャリの定義

女性が乗っても安定走行ができ、かつ主として買い物に利用するための短距離用のダブルループ形やL形・U形の形式の24〜26インチ自転車で、幼児を1人~2人乗せることができる自転車を含む。

女性が自転車に乗ることが許されなかった明治〜昭和初期

自転車が日本に入ってきたのは江戸末期のこと。横浜などの港町に外国人の居留地があり、そこに住む外国人が、自国から持ってきた自転車に乗っていました。その後、国民に自転車が普及したのは明治から昭和初期。自転車は高級品であり、所有者は羨望の眼差しで見られていました。そんな時代ですから、自転車を利用するのは一家の主である男性。一部(大富豪か、助産婦さんなどの急を要する仕事の女性、芸人など)を除き、女性が乗るべきではないという風潮さえあったのです。

ママチャリ誕生のきっかけは自転車業界の苦境

昭和20年代後半、自転車業界は新規需要や輸出台数の減少、エンジン付きバイクの拡大によって、厳しい状況に追い込まれていました。そこで、新たなターゲットになったのが10代後半〜20代の若い女性です。当時の自転車は、荷物運搬にも重宝されていたため、太くて頑強な骨組みで、大きな荷台とスタンドが付いた重量感のあるものでした。自転車メーカーは、重量はもちろん、価格帯やサイズなどを見直し、女性が乗りやすい、女性用軽快車の販売に乗り出したのです。

女性のニーズに注目し、独自の進化を続けるママチャリ。その誕生から現在までを追ってみましょう。

昭和31年 ママチャリの歴史はココから!“女性用自転車”元年

女性をターゲットにした自転車「女性用軽快車」が生まれたのがこの年。山口自転車から発売された「スマートレディー」という車種です。特徴は、自転車の軽量化/車体の重心を下げたこと/小柄な女性やスカートをはいた女性でも跨がれるようなフレームなど。そして、最も大きかったのが先端に取り外しできるカゴを付けたことでした。これによって、女性が買い物に利用するようになりました。価格は、それまで1万円台後半から2万5000円ほどだったのに対し、1万3500円(当時の大卒初任給が約8000円)とこれまでの車種に比べて低価格でした。ネーミングや広告を女性に特化させたことや、月賦制度で月に1000円の支払いでOKという点も手伝って、月5万台が売れる大ヒットとなりました。この1台を皮切りに各メーカーから女性用の自転車が発売されるようになりました。乗りやすさもあって、その後男性や高齢者も「女性用軽快車」を利用するようになったそうです。

昭和42年 小柄な日本人向けミニサイクルの登場

当時、ヨーロッパではタイヤの大きさを18〜20インチにしたミニサイクルが流行していました。それを聞きつけた日本の各メーカーは早速取り入れて売り出しました。その際、日本向けにカゴを標準装備させ、さらに体格の違いに対応するためにサドルのクイックレバーを付けました。体格に合わせてサドルの位置を変えられる点や安定感のある走り心地が評判を呼び、小柄な女性を中心に年間280万台を売る大ヒット商品となりました。

昭和48年 ミニサイクル+女性用軽快車=現在のママチャリの誕生!

オイルショックの影響で、自転車業界も大きなダメージを受けました。急激な生産の低迷に対する解決方法が模索された時代です。そこで行われたのが女性用軽快車とミニサイクルの融合でした。カゴやサドル調整用クイックレバーを装備したミニサイクルに、女性用軽快車のスタンダードであった26インチタイヤを搭載し、機能性と走行性能を兼ね備えた車種が誕生しました。この形状が現在のママチャリのスタンダードとなりました。

昭和62年 これぞカゴ革命!「ふらっかーず」の衝撃

荷物を積むほどに安定を保つことが難しくなる。これこそ自転車の宿命。しかし、ママチャリの需要は荷物や子どもを乗せることに他なりません。そこで登場したのが、現在もシリーズが続いている丸石自転車の「ふらっかーず」です。前カゴをハンドルで挟むようにしたことで、底面の中心が車体とハンドルを取り付ける位置にくるように設置。これによって、荷物や子どもを乗せても安定性を保てるようになりました。この時期から、ママチャリはいかに安定性を高めるかに特化していきます。

平成5年 ミ世界初の電動自転車「YAMAHA PAS」登場

荷物や子どもを乗せても楽に運転することはできないのか? そんな永遠の課題を解決した一台が「電動アシスト自転車」です。人間の踏力をセンサーが感知し、モーターを制御します。モーターはあくまでも補助で、一定の踏力が生じたときだけ作動します。当時は、重量が通常の自転車の約2倍の31kg。充電時間10時間で走行距離が20kmと、今に比べると性能が低いものでした。しかし、それでも高齢者や子どもがいるお母さんを中心に、1年3万台を売る大ヒット商品になりました。

平成10年 幼児乗せ用電動アシスト自転車登場

丸石自転車と電動アシストのナショナル自転車(現パナソニック サイクルテック株式会社)が共同開発して、ハンドル中央部に幼児用座席を取り付けた電動アシスト自転車「陽のあたる坂道マミー(ナショナル)」、「ふらっかーずコモアシスト(丸石自転車)」を発売しました。大手メーカーが新車種開発のために技術提携するのは異例のこと。各所から注目を集めました。

平成20年以降 安定性を極限まで高めた最新ママチャリ

現在でもママチャリの進化は目覚ましく、最新型はイラストのような車輪形を小さく、重心を低く、前後の幅を長くした車種です。女性の願いは一にも二にも安定性や安全。荷物や子どもを乗せても、安定的に走行できる自転車が主流になりつつあります。近年では雑誌とコラボしたモデルや、アシスト機能が付いたファッショナブルな装いのものも増えています。こういった自転車は高齢者にもやさしく、今後さらに幅広い年代に利用されていくと考えられます。

平成24年 自転車生産台数,自転車輸入台数
日本の自転車産業を支えるママチャリ

近年はロードバイクやクロスバイクなどのスポーツ車が流行していますが、自転車協会の発表している数字を見ると、まだまだママチャリを含む軽快車には及ばないことが分かります。平成24年の生産台数は、「軽快車(ママチャリなど)」と「電動アシスト」が桁違いに多くなっています。さらに自転車統計要覧第47版(平成25年6月発行)によると、輸入台数でも「軽快車(ママチャリなど)」が54%を占めトップ。ここまでくると、日本の自転車産業を支えているのは、ママチャリと言っても過言ではないですね。


女性へのマーケティング力と日本の技術力の結晶とも言えるママチャリ。新たな機能を生み出しては、それらを融合し、また新しい車種を作り上げていく。各メーカーが切磋琢磨した結果、世界に誇る安全と安定のママチャリが完成したんですね。

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