奥深き、入浴剤の世界

入浴剤の知られざる話

ここでは入浴剤の種類やどのように作られているのかを探っていきます。何となく選んでしまいがちな入浴剤ですが、それぞれの特性を理解し、開発の現場を知れば一層思い入れも強くなりそう。明日、誰かに話したくなる目から鱗のエピソードがいっぱいです。


買い揃えるのがオススメ入浴剤は大きく6種類

色や香りの好みなどで選ぶことの多い入浴剤。実は種類によって効果・効能が大きく異なります。ここでは、正しい入浴剤・浴用化粧品選びの基準をご紹介します。

基本はこの6種類となり、いくつかの成分が交わった複合タイプも出ています。多くの人がひとつの入浴剤を最後まで使い、また次の入浴剤へ…という買い方をしているそうですが、石川さんによると、「色んな種類を買いそろえて、体調や疲労具合に応じて適切なものを使うのがいい」のだそう。購入時には、商品の成分を確認して、どの種類かを見極める習慣を付けましょう。

温泉系入浴剤知られざる開発秘話

「登別」、「箱根」など、温泉地の名前を冠した入浴剤は非常に人気の高い商品です。しかし、その裏には人知れぬ苦労があると言います。バスクリンの「日本の名湯シリーズ」の場合、開発者と調香師が現地に出向き、実際に入浴して商品化できるかどうかを体当たり(!)で、試しているそうです。多い時には、2泊3日で30以上の源泉に入ることもあるとか。そもそも、日本には約3000の温泉地と、約2万8000もの源泉があります。そこから最適な源泉を選ぶのですから、苦労のほどが窺えます。選定の際は、まず風呂窯をダメにしてしまう硫黄や塩分が強いもの、酸性のもの、強アルカリ性のものはNG。残った源泉から知名度があり、再現しやすいものを商品化しているそうです。「有馬」や「草津」など、温泉地として有名でも、入浴剤になっていないところがあるのにはこんな理由があったんですね。


無色は売れない!?ヒットしない入浴剤とは

現在、発売されている入浴剤はバスクリンやバブなどのメジャーブランドから、バラエティショップに置かれている遊び心の大きいものまでと、バラエティに富んでいます。長年の歴史の中でも、販売に失敗したのが昭和43年に発売された「バスクリンノンカラーホワイト」だったそうです。その名の通り、見た目は無色透明。まったく入浴剤を入れている感じがせず、大変不評だったとか…。すぐに販売打ち切りとなりました。また、テレビの企画で発案されたチョコレートの入浴剤は、香料の量が多すぎて、残り湯での洗濯が困難になることから生産を断念したそうです。


本物すぎてもダメ?入浴剤の香りの作り方

入浴剤を作る際にも香り作りは大切な行程です。一例を上げると、バスクリンには調香師が在籍し、香りを作っています。精油が取れるバラや柚子であれば、微調整することで、入浴剤に最適な香りに整えることができますが、精油が取れない場合(お茶や桜など)は香りを再現する必要があります。その場合、まず対象物から香りを採取。成分を分析して、入浴剤向けの香りにアレンジしているそうです。しかし、香りを正確に再現することが正解ではないという側面もあるそうで…。以前、「ジャスミン」の入浴剤の香りを本物に近づけた時には、「これはジャスミンの香りではない」というクレームが多数寄せられたというエピソードまであるとか。入浴剤の香りに慣れてしまい、本物の香りを知らない…という人も多そうですね。


入浴剤とうま味成分の深〜い関係

入浴剤には様々な成分が入っていますが、その中でも多くの入浴剤に使われているのがL-グルタミン酸ナトリウムです。これは塩素の働きを抑えてくれる成分であり、各入浴剤の成分表を見るとたいてい含まれていることが分かります。この成分、どこかで聞いたことがある人もいるのでは…。というのもこれは調味料のうま味成分の主原料なのです。もし、入浴剤を入れたお風呂(また、何も入れてない時も)に入ってみて、少しピリピリしたらそれは水の塩素が強い合図。お風呂にうま味成分の入った調味料を一振りするだけでも、お湯がまろやかになり、入りやすくなるそうです。


お風呂博士 石川先生おすすめ!今すぐ買える入浴剤・浴用化粧品!
炭酸ガス系
きき湯ファインヒートグレープフルーツの香り
従来のきき湯に比べて炭酸ガスの量や発泡時間が約3倍となっています。加えて温泉ミネラルとジンジャー末が配合されているため、温浴効果を高めて血行促進し疲労回復や冷え症などを緩和します。翌日をアクティブに過ごすことができます。
スキンケア系
保湿入浴液ウルモア クリーミーローズの香り
赤ちゃんから高齢者の方まで、かさかさ、ムズムズの乾燥肌に悩む方の素肌を包み込み、しっとり、すべすべにします。「コラーゲン」、「セラミド」、「吸着型ヒアルロン酸」など、5つの保湿成分を配合しています。(浴用化粧品)
薬用植物系
ツムラのくすり湯 バスハーブ
100%生薬エキスを有効成分にした薬用入浴液です。温浴効果を高めるほかに疲労を回復し、リウマチ・腰痛・神経痛・肩こりの痛みをやわらげてくれる効果があります。 入り心地も非常にいいので、寒い時期におすすめですね。(医薬部外品)

当たり前のように使っていた入浴剤。その裏には開発者たちの絶え間ない努力と、試行錯誤があったんですね。このように多様な入浴剤があるのは、日本だけだそうで、技術面でも世界一なんだとか。入浴剤は「入浴を楽しもう」という日本人ならではの感覚が生み出した製品だったんですね。寒さも厳しくなるこれからの季節、入浴剤で身体の芯から温まりましょう!

石川 泰弘 さん
石川 泰弘 さん/お風呂博士

日本浴用剤工業会広報担当。株式会社バスクリン広報責任者、温泉入浴指導員、睡眠改善インストラクター。
お風呂博士として各地で講演活動を行う。主な著書として、『お風呂の達人』(草思社)など多数。

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