おとなの補習時間

冬季(11月〜2月)は星空観賞に持ってこいの季節。12月には毎年注目を集める「ふたご座流星群」もやってきます。そこで、今回は「星のソムリエ」泉水朋寛さんに、今すぐできる「楽しい星空観賞のススメ」を教えてもらいました。これを読めば、いつも見ている星空をより一層楽しめるはず。ぜひみんなで夜空を見上げてみましょう。

Q なぜ冬季(11月〜2月)が星空鑑賞に最適なの?

冬季は一年でもっとも明るい星が多い季節です。全天に輝く一等星は21個ですが、そのうち7個が冬季に見えるものなんです。太平洋側に関しては空気が澄んでいるので、特にキレイに見えます。オリオン座や冬の大三角形など有名な星が多いのも冬の特徴です。

12月14日頃はふたご座流星群のピーク

12月14日頃には、ふたご座流星群がピークを迎えます。夜空のあちらこちらに、たくさんの流れ星が見えるはずです。晴れていれば、ほぼ一晩中見ることができるので、暖かい服装で、空を広く見渡すようにして楽しんでもらいたいですね。

Q 鑑賞に必要な道具は?

星空観賞をはじめるには、組み立て式望遠鏡と双眼鏡をオススメしています。ともに最初は3000円前後のもので十分です。望遠鏡は一つの天体をじっくり見るのに最適。双眼鏡はより広い範囲で見たい時に持ってこいですね。空には何もないように見えても、たくさんの星があることが分かります。あと、最近だとスマートフォンアプリも充実していますね。例えば、「Google Sky Map」は、星空に画面をかざすだけで、その星座がわかります。これで楽しむのもいいですね。

Q 星空鑑賞って、どうやって楽しめばいいの?

まずは目に見える星をつないで星座を体験してみましょう。図鑑や授業でならったものが、空に実際にあることを認識できます。そして、一つひとつの星の名前を覚えてみること。星は明るさに応じて一等星、二等星と分かれていますので、明るい星から覚えていくといいでしょう。その上で、なぜ、その名前なのか? その裏にはどんなエピソードがあるのか? と掘り下げていくとどんどん興味の幅が広がっていくと思います。

■星を見るポイント

・明るさ/大きさ…明るい・大きい=距離が近い、暗い・小さい=距離が遠い(例外もあり)
・色…青白(高温)、赤(低温)と、温度によって異なる

■明るい星(一等星)を知ろう

一等星は星空を見るための目印にもなるので、しっかり覚えておきましょう。冬季はたくさんの一等星が見られます。全星の中でもっとも明るいシリウスも東の空に確認できます。

12月15日 夜9時の、東京の夜空です。南東を向いたときの様子を表しています。
※年によっては、月や惑星が見えることもあります。

星図は株式会社アストロアーツのステラナビゲータで作成。

冬にみられる一等星
■シリウス

地球からの距離・・・約10光年
特徴・・・すべての星の中で、もっとも明るい星。冬の大三角形の一角。
語源・・・光り輝くもの、焼き焦がすもの(セイリオス)というギリシア語から。

■ベテルギウス

地球からの距離・・・約640光年
特徴・・・オリオン座の一角。冬の大三角形の一つで、赤色を放つ。いずれ超新星爆発を起こすとみられている。
語源・・・諸説あるがアラビア語の「巨人の脇の下」という言葉から来ているという説が知られている。

■リゲル

地球からの距離・・・約850光年
特徴・・・オリオン座の一角。大きさは太陽の約70倍で、明るさは10万倍。
語源・・・アラビア語で「足」を意味するリヂルから。

■アルデバラン

地球からの距離・・・65光年
特徴・・・おうし座で最も明るい星。オリオン座の三連星を東から西に結ぶと最初に突き当たる星。
語源・・・プレアデス星団(すばる)の後に昇ってくることから命名。「後に続くもの」という意味を持つ。

■その他

カペラ/ポルックス/プロキオン

冬の代表的な星座
■オリオン座

特徴・・・全星座の中でも、もっとも有名な星座。一等星のべテルギウスとリゲルに三連の二等星。もっとも認識しやすいので、これを基準にして他の星を見るとわかりやすい。

■おうし座・すばる

特徴・・・オリオン座の北側に位置する星座。赤色の一等星アルデバランが目になっている。肩のあたりには、数百個の星が「熊手」のような形に集まったすばる(プレアデス星団)という天体がある。すばるは肉眼でも確認することができる。

■ふたご座

特徴・・・一等星ポルックスと二等星カストルが仲良く並んだ星座。日本ではその色から「金星・銀星」とも呼ばれた。

■おおいぬ座

特徴・・・シリウスを有する星。星をつなぐと見事に犬が立っているように見える。

■こいぬ座

特徴・・・たった2つの星からなる。どう見ても小犬には見えないが、狩人でもあったオリオン座の下にあるため、猟犬として認識された。

■カシオペヤ座

特徴・・・北西の空に見えるW型(実際の空ではM型)の星座。ただし、2等星以下の星の集まりなので、少し見つけにくい。

Q 星を見るのに最適な場所は?

とにかく暗いところが鉄則です。河川敷やビルの屋上がいいですね。ポイントとしては暗闇に目を慣らすことです。15分ぐらい暗闇を見ていると自然に目が慣れてきて、星が見えるようになります。この時、一瞬でもスマホなどの光を見ると暗闇に慣れた目が、元に戻ってしまうので気を付けてください。

思わず誰かに話したくなる「星にまつわるエピソード」

星の楽しみの一つがその裏にあるストーリーです。ギリシャ神話にまつわるものが多く、観賞時に披露すれば人気者になること請け合いです(笑)。ここに挙げたもの以外にも多数あるので、ぜひ覚えておきましょう。

★あの名門家の家紋はオリオン座発祥

戦国時代に活躍した毛利家の家紋は、一文字に三つ星が入っています。これが実はオリオン座の三つの星を表していると言われています。

★さそりから逃げ続ける巨人オリオン

ギリシャ神話では、オリオン(巨人オリオン)は、さそりの毒で殺されて星になったと言われています。オリオン座は冬の間、高い所で威張っていますが、東の空からさそり座が現れると西の空に沈んでしまいます。現在でも、さそりから逃げ回っている様が見て取れます。

★残酷! カシオペヤの悲劇

カシオペヤ座は、地平線より下にさがることがない星。これにはこんな逸話が残されています。カシオペヤはエチオピアのケフェウス王の妃でした。彼女は娘の王女アンドロメダが、海の妖精たちより美しいと自慢したため、海神ポセイドンの怒りを買い、神罰がくだることとなりました。カシオペヤは、それが原因で死後天に上げられ星座にされてしまいます。星座になった後も、ポセイドンは彼女が海の下におりて休息すること(地平線の下におりること)を許さず、カシオペヤは常に天を巡り続けているそうです。

★日本古来より親しまれてきた「すばる」

正式にはプレアデス星団のこと。日本では「すばる(昴)」のほか、「六連星(むつらぼし)」や「羽子板星」とも呼ばれています。すばるにまつわる、日本最古の記録は平安時代に作られた百科事典「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」というもの。また、清少納言が歌ったことでも有名です。車や歌の名前など、私たちの生活にも度々登場する名称ですが、こんなに昔から親しまれていたとは驚きです。

※すべて神話や伝説です。

イメージ
星空案内人「星のソムリエ」 泉水 朋寛 さん

1975年岡山県岡山市生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了。株式会社アストロアーツにてウェブコンテンツ制作やソフトウェア開発などを担当。2005年より1年間ニュージーランドにて星空ガイド等を務める。2008年に「星のソムリエ®みたか」に認定される。

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